韓国の最低賃金が、先進国クラブといわれる経済協力開発機構(OECD)加盟国のうち最高水準だという韓国経済研究院(韓経研)の発表は事実無根であり、OECDの平均水準だと反論する報告書が出た。また、韓国の最近2年間の最低賃金の引き上げ率が、先進国で最高水準という韓経研の発表も誇張されたものであり、文在寅(ムン・ジェイン)政府の所得主導の成長政策を揺さぶろうとする歪曲された資料だという指摘が提起されている。韓経研は全国経済人連合会(全経連)の傘下機関だ。6日、韓国労働社会研究所が発表した報告書「最低賃金の国際比較」によると、韓国の最低賃金は2017年に5.7ドル、2018年に5.9ユーロ、2019年に6.4ユーロと改善されているが、これはOECD加盟国の平均水準であることが分かった。執筆者であるキム・ユソン理事長は「韓国は2017年にはOECD平均の6.2ドルに及ばず、法定最低賃金制度を運用する29カ国のうち中間の14位であり、(文在寅政府時代の)2018年にもOECD平均6.2ユーロに及ばず25カ国のうち13位、2019年にはOECD平均6.4ユーロと同じになったが、順位は25カ国のうち12位だった」と明らかにした。
報告書はまた、韓国の平均賃金に対する最低賃金の割合も2017年は41.4%でOECD平均の41.1%に近く、順位は29カ国のうち15位と明らかにした。キム理事長は「2000年代に入って賃金の不平等が深刻化し、最低賃金に対する各国の関心が高まるにつれ、OECDの平均賃金に対する最低賃金の割合も2000年に39.9%、2016年に39.9%、2017年に41.1%と続けて上がった」と明らかにした。
これは、韓経研が2日に「OECD加盟国を対象とした最低賃金水準比較」で、韓国の2019年の最低賃金8350ウォンは国民総所得(GNI)に比べた割合で最低賃金を施行する27カ国のOECD加盟国のうち7位であり、上位圏だと発表したことに対比される。
両機関の間で差が大きいのは、韓国労働社会研究所が最低賃金を平均賃金と比較した反面、韓経研は国民総所得と比較したからだ。国民総所得の場合、賃金労働者のほかに自営業者の所得が含まれ、韓国のように自営業者の所得が低い場合、国民総所得に比べ最低賃金の割合が高く表れる。キム理事長は「最低賃金を国民総所得と比べると、自営業者の割合と所得水準、労働時間、就業率など様々な要因に影響を受ける」とし、「このためOECDの公式統計は、国家別に時間当たりの最低賃金、平均賃金(中位賃金)を比べた比率だけを示すが、韓経研が公式統計にはない指標で世論を惑わせたもの」と指摘した。
これに対し韓経研は「最低賃金委員会が作成した『最低賃金審議のための主な労働経済指標』のうち、主要国の所得水準別の最低賃金比較資料を参考にして作ったもの」と釈明した。しかし、最低賃金委員会の資料は留意事項で「各国ごとに最低賃金の算入範囲や適用単位が異なり、最低賃金の適用年度と1人当たりの国民総所得の算出年度の間にも差があり、正確な比較には限界がある」と明らかにしている。
報告書はまた、最低賃金の引き上げ率が二桁のOECD加盟国は、2018年の場合、韓国(16.4%)、トルコ(14.2%)、ラトビア(13.2%)、チェコ(10.9%)、スロバキア(10.4%)の5カ国であり、2019年にはリトアニア(38.4%)、トルコ(26%)、スペイン(22.3%)、カナダ(12.6%)、韓国(10.9%)の5カ国だったと明らかにした。リトアニアとトルコの2年間の引き上げ率の合計はそれぞれ46.2%、43.9%で、韓国(29.1%)より高い。これも韓経研が韓国の2年間の引き上げ率の合計が1人当たりの国内総生産が3万ドル以上の15カ国のOECD加盟国のうち、最大規模だと強調したのと対比される。政策企画委員会傘下の所得主導成長特別委員会の関係者は、「文在寅政府発足2周年を迎え、全経連が所得主導成長政策を揺さぶろうと、常識から外れた行動をしている」と話した。