(1)最低賃金157万ウォンだけもらう場合は?
今年の引き上げ分10.9%反映され「174万ウォン」
(2)基本給157万+福利費30万ウォン
福利費17万ウォンを算入範囲に含め
月給は一切上がらず
(3)ボーナスを隔月に与えれば算入できず
基本給157万ウォンに月福利費20万ウォン
隔月でボーナス150万ウォンを受け取るなら
福利費7万ウォンだけ算入され「165万ウォン」
給料9万ウォンを上げなければ法律違反に
2019年の最低賃金(時給)が820ウォン(10.9%)上がり、8350ウォン(約825円)となった。最低賃金レベルを受けとっていた労働者の賃金は必ずしも上がらず、むしろ実質賃金が高い人の引き上げ幅がより大きいケースも生じる。昨年5月、国会の最低賃金法の改正を受け、算入範囲の拡大が最低賃金の引き上げ効果を減らしたからだ。
2018年まで最低賃金は基本給と固定手当だけで計算した。昨年1月から最低賃金が16.4%上がると、経営界は「基本給だけで最低賃金遵守を問いただせば違反事例が続出する」とし、すべての賃金を算入範囲に入れるべきだと主張した。労働界は「最低賃金削減効果」を懸念して反発したが、与野党は「最低賃金の25%を超過する定期ボーナス」と「最低賃金の7%を超過する福利厚生費」を算入範囲に入れることにした。この割合は毎年拡大し、2024年には定期ボーナスと福利厚生費全体が算入される。
もともと「最低賃金の25%と7%」は一種の低賃金労働者の保護装置だった。基本給が最低賃金レベルでありながら年間300%(月25%×12カ月)未満のボーナスと月10万ウォン台の食事代・交通費など福利厚生費を受ける「年所得2500万ウォン(約250万円)未満」の労働者は、算入範囲拡大の影響を受けないようにするという趣旨だった。労働界は「実態調査は一度もなかったし、比率も恣意的」と批判したが、算入範囲を狭めた意味はあった。しかし、複雑な賃金体系をさらに複雑にし、その効果の分析すら難しい状況だ。昨年6月、イ・サンホン国際労働機構(ILO)雇用政策局長は「賃金体系改編で解決すべきことを算入範囲に押しつけたため、方程式が複雑になった。最低賃金法の改正結果はまさにブラックホールだ」と指摘した。見れば見るほど紛らわしい最低賃金の算入範囲の拡大、2019年の給料明細書にはどのような影響を及ぼすだろうか。
まず、期待賃金が下落する低賃金労働者が現れるとみられる。最低賃金を基本給で受け取った場合10.9%上がるが、最低賃金レベルの基本給に定期ボーナス・福利厚生費が少し加わる「最低賃金次上位労働者」は算入範囲改編の直撃弾を受ける。
Aさんは昨年、月最低賃金の157万3770ウォン(約15万5千円)を基本給として受け取り、福利厚生費30万ウォン(約3万円)を受け取った。Aさんは基本給だけ計算すると10.9%ほど上がらなければならないが、算入範囲の拡大で最低賃金引上げの恩恵を受けられない(表参考)。福利厚生費のうち17万7840ウォン(30万ウォン-12万2160ウォン。約1万7500円)が算入範囲に含まれるからだ。結局、Aさんの算入賃金は175万1610ウォン(約17万3千円)で、2019年の月最低賃金より高くなる。事業主にとっては賃金を一切上げなくても最低賃金違反から脱する。低賃金労働者の生活保障の趣旨から最低賃金を2年続けて2桁に上げたが、Aさんの賃金はそのままということになる。
賃金構成によって算入範囲の拡大は千差万別だ。2018年の基本給157万3770ウォンに福利厚生費20万ウォン(約2万円)、毎月のボーナス50万ウォン(約5万円)をもらう労働者のBさんは、2018年の月収額はAさんよりも多いが、最低賃金の影響で今年は月給が2万9827ウォン(約3000円)上がる。しかし、彼の月給にも算入範囲の拡大が損害を与える。福利厚生費のうち7万7840ウォン(20万ウォン-12万2160ウォン。約7700円)とボーナスのうち6万3713ウォン(50万ウォン-43万6287ウォン、約6300円)が算入範囲に含まれ、最低賃金の引き上げ分を蚕食するからだ。
ボーナスを「隔月または四半期」で受ければ引き上げ幅が大きくなる。最低賃金の算入範囲には、毎月支給されるボーナスだけが含まれるためだ。労働者のCさんはBさんよりも2018年の月平均賃金が高い。2人は毎月基本給157万3770ウォン、福利厚生費20万ウォンをもらっていた。Cさんはボーナス150万ウォン(約15万円)を隔月に受け取り、毎月50万ウォンを受け取るBさんよりも年収が多い。CさんはBさんのように福利厚生費7万7840ウォンが最低賃金に算入されるが、ボーナスは隔月なので算入されない。2019年の最低賃金にあわせるためには、Cさんの月給は月9万3540ウォン(約9200円)上がらなければならない。A、B、Cさんの事例を見れば、むしろ昨年の賃金総額が少ないほど最低賃金の引き上げ効果が減るという矛盾が生じる。
ただ、Cさんの事業主がボーナスを隔月から毎月に変え、最低賃金の引き上げ効果を減らす道が開かれた。昨年、国会は最低賃金法を改正し、隔月・四半期別の賞与金を月単位で支給しても「就業規則不利益変更」ではないと明示した。労組のない会社で使用者が一方的に就業規則を変え、最低賃金算入範囲に含まれる賃金を増やすことができるようになったということだ。