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[ルポ]「ひと月に10日働ければ良い方」…日雇い雇用、一年で11万人減少

登録:2018-07-12 09:33 修正:2018-07-12 15:57
働き口から追い出される人々 
 
5カ月連続で就業者増加は10万人前後 
グローバル金融危機以降、最低の水準 
製造業・建設業の臨時・日雇いに大きな打撃 
最大の人材市場である南九老駅一帯では 
仕事を得られなかった日雇い労働者たちがうろつき 
工業団地の派遣会社「働き口の減少が深刻」
5日早朝、ソウル最大の人材市場である南九老駅の三叉路一帯に集まった建設現場の日雇い労働者たちが仕事を得るために待機している=バン・ジュンホ記者//ハンギョレ新聞社

 京畿道安山市の始華(シファ)工団で働いてきたシム・スンジュさん(仮名・26)は、半年近く求職者として暮らしている。電子機器に使われる印刷回路基板(PCB)などを製造する工場で、主に派遣社員として短くて3カ月から長くて6カ月ずつ働いてきたが、今年に入って仕事を探すのが容易でないと話した。ここ数カ月間、面接で6回も落ちたというシムさんは「今すぐ生計費を稼がなければならない状況なので『簡単に探せてすぐ仕事を始められる』派遣職を探しているんですが、今年は仕事自体が顕著に減ったようだ」と話した。

 このような事情はシムさんだけが経験していることではない。安山地域のある派遣会社の代表は「今年は工業団地全体で仕事の減少が厳しくなった状況で、うちの企業にも登録だけして待機している人員が相当いる」とし、「最近景気が悪いので、3次、4次協力会社の中には廃業するところが珍しくない」と話した。すずめの涙ほどの月給から少しでもお金を引かれないために雇用保険に加入していないシムさんのような人々に、失業はまさに「無所得状態」を意味する。彼は「イラストを習ってもっと安定した仕事を探して就職したいけれど、勉強して準備するにはお金も時間も足りず、また急場しのぎで派遣社員の仕事ばかり探している」と話した。

就業者数増減推移 (資料:統計庁)//ハンギョレ新聞社

 11日、統計庁が発表した「6月雇用動向」によると、先月の就業者数は1年前より10万6千人の増加にとどまった。2月以降5カ月連続で就業者数増が10万人台前後と低調なのは、グローバル金融危機直後の2010年2月以降初めてだ。今年1月まででも、就業者増加幅は概ね20万人台から40万人台を維持していた。

 このような雇用寒波の直撃弾は、シムさんのような不安定雇用に携わる人々がそっくり受けている。景気が悪化すると一番先に雇用に打撃を受ける臨時・日雇い労働者の減少が、最近非常に早いスピードで現れているからだ。今年2~6月に臨時職と日雇い労働者はそれぞれ月平均12万1千人と8万7千人減少した。統計庁は「景気による変動性が最も大きいため」と説明した。

 業種別では製造業の雇用不振が目立つ。製造業の就業者数は先月も1年前に比べて12万6千人も減少した。造船、自動車、家電など製造業で構造調整と海外生産比重の拡大で雇用の萎縮が続いた影響だ。半導体や石油化学など一部の産業が輸出を中心に好調を見せているが、これらの産業は通常、国内雇用の誘発効果が大きくない産業に分類される。

 製造業の雇用不振も臨時職や零細下請会社の社員が打撃を先に受けている。ハンギョレが統計庁経済活動人口調査の原資料を分析した結果、今年2~5月の製造業の臨時職は1年前より月平均で7万8千人減少した。昨年だけでも、製造業の臨時職の減少幅は月平均4万8千人ほどだった。景気低迷で大企業が生産物量を減らせば、下請会社などで解雇が容易な臨時・日雇いを先に減らすためと分析される。ビン・ヒョンジュン統計庁雇用統計課長は「製造業の就業者数の減少を事業体の規模別に見ると、300人未満、特に5人未満の零細会社で目立つ」と話した。

2~5月の月平均業種・従事上地位別増減 (資料:統計庁 経済活動人口調査) //ハンギョレ新聞社

 特に、普通は製造業の景気が悪化すると、押し出された労働者が自営業に移る場合が多かったが、最近は、このような移動経路もまた塞がっているという分析が出ている。先月、職員を置かない零細自営業者は1年前より9万人も減少し、このような傾向は相当期間にわたり継続中だ。ビン・ヒョンジュン課長は「かつて造船業の構造調整の時期(2015~2016年)には製造業の就業者が減少した時、自営業が相対的に増え、全体就業者数の増加幅を維持する効果があったが、現在は全般的な景気減速で自営業者も増えていない」と話した。

 建設業を中心とした日雇いの減少も注目すべき部分だ。先月の全体日雇い労働者数は1年前より11万7千人減ったが、建設業の影響が大きい。建設業は昨年下半期以降、建設景気の下降局面が続く中で、製造業と共に雇用不振を負っている代表的な業種だ。5月の降水の影響で4千人にとどまった建設業の就業者増加幅は、雨の影響がなかった6月も1万人に止まった。ファン・イヌン企画財政部政策企画課長は「社会間接資本(SOC)予算減少による土木建設の不振に加え、昨年上半期まで加熱していた住宅建築市場が調整に入ったため」と説明した。

 特に、建設業の日雇いに絞ってみると、4月は1年前より1万2千人減り、減少傾向に転じたと分析された。さらに5月には4万8千人と減少幅がさらに広がった。昨年上半期だけみても、月平均9万人以上ずつ建設現場の日雇いが増加していた点を考慮すると、現場で体感する雇用の減少はさらに顕著になるしかない状況だ。「6月も建設現場の日雇い減少傾向は続いている」というのが統計庁側の説明だ。

 5日早朝、ソウル南九老(ナムグロ)駅に密集した人材紹介事務所数カ所で会った関係者たちは「働く人を探すのが難しかった昨年と違い、最近は働き口そのものが貴重になっている」と口をそろえて言った。25年間人材紹介業をしてきたキム・ファンイルさん(66)は「昨年のこの時期に比べると、仕事が半分以上減ったようだ」とし、「特に、年配者であったり、技術がなかったり、韓国語がよく通じない外国人である場合は、仕事を見つけることができず、うろつく人が毎日数百人ずつ出る」と話した。仕事を探しに出てきたキム・ドンジュさん(仮名・45)は「普通、仕事を得るのが難しい時期は冬だが、今年の冬はもっと大変そうで早くも心配になる」と話した。さらに彼は「工事規模が大きい建設現場でなければ4大保険への加入がちゃんとなされない。失業手当の受給条件を満たすことができず、仕事が途切れればただ指をくわえて待つしかない状況」と付け加えた。

 この日、朝6時30分に人員輸送のためのワゴン車が全部出発した後も、仕事を得られなかった100人あまりはしばらく南九老駅一帯をうろつきながら残念さをあらわにした。家に帰ろうと自転車を押していたクォン・ジョンサムさん(仮名・71)は「出てくることは毎日出てくるが、ひと月に10日も仕事できるかわからない」とし、「子どももろくな仕事がなくて私がお金を稼がなければならないが、年を取っているので大体が追い返される」とため息をついた。

 政府は全般的に雇用が悪化したことに対して懸念を表明しながらも、「臨時・日雇い職の減少は常用職を中心に雇用市場が再編されているためであり否定的にだけ見ることはできない」という態度を見せている。しかし、臨時・日雇いがそのまま常用職へ移動したと断定するのは難しい。ソン・ジェミン韓国労働研究院動向分析室長は「一部は常用職に吸収された可能性もあるが、失業状態に転落したり、製造業の場合、派遣社員から社内下請に地位を移し、下請け会社の常用職になったケースも相当見られる」と話した。

 臨時・日雇いの多くは、失業給付を受けられる雇用セーフティネットから外れているケースが多いという点にも注目する必要がある。イ・ビョンヒ韓国労働研究院先任研究委員は「雇用悪化の中で一番先に労働市場を離脱している臨時・日雇い、零細自営業者に対する特別な対策が必要だ」とし、「より良い職を探して失業期間を持ちこたえられるようにする制度を検討しなければならない時点」だと話した。

バン・ジュンホ、チェ・ハヤン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/852948.html韓国語原文入力:2018-07-12 07:45
訳M.C

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