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「韓米FTAセーフガード、コメ、牛肉は輸入額が58%増えても作動不可」

登録:2017-11-22 22:14 修正:2017-11-23 08:55
政府-農畜産業界「FTA懇談会」 
「発動基準、過度に高く設定され 
農家がすべて滅びてこそ発動できる」 
「農業分野の交渉が避けられないならば 
不平等条件の削除・改善が必須」
韓米FTA=グラフィック_キム・スンミ//ハンギョレ新聞社

 韓国政府が韓米自由貿易協定(FTA)で「“敏感品目”に分類し保護している」としてきた米国産の牛・豚肉、粉ミルクの輸入が急増していて、協定文に導入した農産物セーフガードと低率関税割当(TRQ)措置が「国内市場保護」の役割をまったく果たせていないことが分かった。農畜産業界は「韓米FTAを廃棄し、改定交渉に入っても『農業追加開放はない』とか『交渉対象から除外する』という態度から一歩踏み出して、韓国が協定文の農畜産物不均衡条項を攻勢的に変えなければならない」と主張した。

韓米FTA改定関連農畜産業界懇談会が11月22日、ソウルの良才洞aTセンターで開かれている=産業部提供//ハンギョレ新聞社

 22日、政府の主催でソウルの良才洞aTセンターで開かれた「韓米FTA改定関連農畜産業界懇談会」で、主題発表者として立った韓国農村経済研究院のハン・ソクホ室長(モデル政策室)によれば、協定発効以後の5年間(2012~2016年)に米国産畜産物の輸入は年平均41万9千トンで、協定発効前の5年間(2007~2011年・35万1千トン)に比べて19.4%(物量基準)増加した。金額基準では同じ期間に年平均13億1千万ドルから20億8千万ドルに57.8%増加した。特に、牛肉は6万6千トンから12万1千トンに82.7%、豚肉は10万8千トンから13万3千トンに23%、粉ミルクは4百トンから6千トンに1300%増加した。

 パネル討論者として参加した全国韓牛協会のキム・ホンギル会長は「昨年の米国産牛肉輸入量(15万3千トン)だけでも韓牛農家が大きな被害を受けていて大騒ぎなのに、米国産牛肉輸入が急増しているにもかかわらず韓米FTA協定文に明示されている農産物セーフガード(輸入が一定物量以上に急増する場合、追加関税を賦課する緊急輸入制限措置)は発動基準が非現実的であるため、米国産による韓国市場かく乱を防ぐ安全装置の役割を全く果たせずにいる」と指摘した。米国産牛肉のセーフガード発動基準は、2012年(27万トン)から毎年6千トンずつ増えて今年は30万トン(関税率30%)であり、発動できる基準物量が過度に高く設定されているため、発動の可能性はほとんどゼロだ。

 協定文は、牛肉・豚肉・タマネギなど30の農水産物品目に対してセーフガードを導入した。しかし、豚肉の場合、セーフガード発動対象は米国産豚肉の輸入量の5%に過ぎない冷蔵肉に限定されており、果物のセーフガード適用品目は植物防疫法上すでに輸入が禁止されているリンゴだけだ。韓牛協会は「農家がすべて滅びる段階になってこそセーフガードを発動できる水準」とし「現行より関税がさらに引き下げられれば、韓牛産業は崩壊するだろう。協定を廃棄して関税率を40%に戻し、再協議が避けられないならば現在の水準(関税率24%)で関税を凍結し、関税撤廃期間も15年から20年に延長し、牛肉セーフガードの発動基準物量を大幅に引き下げ実効性を確保しなければならない」と求めた。

 また別の敏感品目である粉ミルクも、市場保護措置がまともに作動しないのは同じだ。協定文では「現行高率関税(176%)維持」として譲歩したが、その代わりに無関税で輸入できる低率関税割当(TRQ)クォーター(最初の基準年度5千トン)を許容したうえに、その物量も一切の期間制限なしに毎年3%ずつ複利で増やしている状態だ。関税が撤廃されたのとかわらない低率関税割当で、年間5~6千トンの粉ミルクが義務輸入されている。6年前の協定批准当時、政府はセーフガード・現行関税維持・10~15年長期関税撤廃といういわゆる「敏感品目保護」制度の導入を貫徹させたと言ったが、協定発効から5年が過ぎた今、こうした保護措置が無力な状態に置かれ、米国産農産物の輸入が急増しているわけだ。この日懇談会に参加したソウル大のイム・チョンビン教授(農耕制社会学部)も「米国産の輸入急増で畜産農家を中心に被害が加重されているが、セーフガードには実効性がなく、無関税低率関税割当輸入物量が毎年増加するために“現行高率関税率維持”にも格別の意味がなくなっている」として「改定交渉が始まれば、これを現実的な水準に直さなければならない」と話した。

 全国農民会総連盟のパク・ヒョンデ政策委員長はこの日の懇談会で「改定に関連したすべての手続きを直ちに中断し、韓国社会内部で協定“廃棄”の議論を始めなければならない」と主張し、韓国農業経営者中央連合会のハン・ミンス政策室長は「農業分野は改定交渉の対象から完全に除くものの、米国の圧力で交渉対象に含めざるをえないならば、セーフガードの発動基準と無関税クォーター物量の配分など、代表的な農産物不平等条件を韓国が攻勢的に出て削除・改善しなければならない」と話した。この日の懇談会で、ユ・ミョンヒ通商交渉本部局長(通商政策)は「米国側に『韓国では農業は敏感で、すでに開放水準も高く、これ以上追加の開放は難しい』と繰り返し話している」として「新しい利益均衡が導出できなかったり、一方的に不利な要求は決して受け入れないし、改定以外には他の方法がないと交渉に臨んでいるわけではなく“廃棄”は私たちもオプションとして持っている」と話した。

チョ・ゲワン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/820216.html韓国語原文入力:2017-11-22 19:30
訳J.S

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