7日午後5時頃、ソウル九老区(クログ)九老5洞のSスーパー。近くの農協ハナロマートが買い物客で混みあっているのとは対照的に、53平方メートル(16坪)規模のこの店は、店の主人と挨拶を交わす常連客が時々立ち寄って商品を買っていった。夫と12年にわたりこのスーパーを営んできたイ・ジョンファさんは「商売をしていて景気の良いことはなかったが、昨年は初めて赤字を出した」と話した。5年前、イ氏の店から30メートル離れた建物にハナロマートができた後、売上が減り始め、昨年4月からは店舗の賃借料の支払いにも窮するようになった。イ氏は「前の賃借人に払った権利金8千万ウォンの一部でも、今後店を引き継ぐ賃借人から受け取るためには、最低でも店を続けていなければならず、廃業もできない状態だ」と訴えた。
不況が続いているのに「生計型創業」は増えて、請託禁止法の施行に朴槿恵(パク・クネ)-チェ・スンシルゲートまで重なって、自営業者の憂いが深まっている。売上の下落で賃借料さえ払えなくなり、借金をして延命している自営業者も増えている。
この日午後3時頃に訪れたソウル江南区(カンナムグ)水西洞(スソドン)のある住商複合建物1階にあるCヘアーサロンも、以前なら週末で混雑する時間なのに、カットに来たお客さんが2人だけいた。ヘアーサロンのチェ・ジョンア院長は「20年以上美容業をしてきたが、昨年が最悪だった」として首を左右に振った。チェ氏は「11月からは売上が半減し1千万ウォンを借りたのに、職員の給料と賃借料を払ったら12月には借りた金がきれいになくなった」と話した。院長は「江南(カンナム)で売上のよいヘアーサロンも一斉に30~40%売上が減ったと泣いている」とし「チェ・スンシル事態で、それまで金を使っていた人々も財布を閉ざした」と伝えた。
飲食業界では請託禁止法の影響まで重なって廃業が相次いでいる。8日午後に訪れたソウル麻浦区上水洞(サンスドン)の「ヘガン」和食店の店舗には「賃借人求む」という案内文だけがぽつんと貼られていた。韓国外食業中央会の麻浦区支会ソ・ヨンチョル会長は「『ヘガン』は主人が一度変わっただけで30年余り和食店を営んできたが、売上が急減し昨年11月に廃業した」として残念がった。外食業中央会麻浦区支会の集計によれば、昨年麻浦地域の飲食業の月平均廃業件数は請託禁止法施行前には49件だったが、法施行後に56件に増えた。
中小型不動産仲介法人「リ&チョン・パートナーズ」のイ・ジンス代表は「ソウル江南地域の場合、商店街の2階にある食堂が廃業しても、新たに食堂をしようとする人がいなくて、事務室に改造して賃貸する建物が出ている」と伝えた。
鳥インフルエンザ(AI)は、チキン店には泣き面に蜂だ。最近では昨年南米で発生した洪水のせいで大豆油の原料として使われる大豆価格が急騰し、業者用食用油の価格が上がり、なおさら「死ぬ思い」だ。ソウル広津区(クァンジング)九宜洞(クイドン)でKチキン店を営むミン・サンホンさんは「昨年、月平均売上が前年比で30%以上減って、鳥インフルエンザの影響で11月中旬からは70%以上急減した」としてため息をついた。ミンさんは「政府が養鶏農民の被害は市価で補償しているが、一緒に被害をこうむった自営業者には融資しかせず借金で赤字を埋めるチキン店が増えている」と話した。
昨年末、統計庁と小商工人連合会が発表した資料には、自営業者の暗鬱な現実がそっくりあらわれている。統計庁が2015年基準で税務署に登録された自営業者479万店を売上で区分した結果、1200~4600万ウォン(117~448万円)未満が30.6%(146万4千店)で最も多かった。1200万ウォン未満も21.2%(101万8千店)だ。税務資料上では年間売上4600万ウォンも上げられない自営業者が半数(51.8%)を超える。
景気は回復できずにいるのに、市場に新たに参入する人は増え続け、事情は悪化の一途を辿っている。最近国税庁が出した「2016国税統計年報」によれば、一日平均3千人が自営業に参入し、2千人が事業をたたんだことが分かった。小商工人連合会が昨年10月6日~11月25日に全国の小商工人3千人を対象に「経営実態調査」をした結果、自営業で比重が最も大きい卸売・小売業者(標本数809人)の60.2%が月平均売上が前年より減ったと答えた。宿泊・飲食業(572人)は48.8%、修理・その他個人サービス業(345人)は54.9%、教育サービス業(124人)は48.5%、芸術・スポーツおよび余暇関連サービス業(86人)は61.0%が売上が前年より減少したと明らかにした。