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韓国、「民主的ファシズム」の凡庸さ【寄稿】

登録:2025-11-04 10:05 修正:2025-11-04 10:28
ハンネス・モスラー (カン・ミノ)|ドイツ・デュースブルク・エッセン大学政治学科教授
10月13日、ソウル瑞草区のソウル中央地裁で開かれたハン・ドクス前首相の内乱首謀幇助容疑などの第2回公判で、12・3非常戒厳当日の大統領室のCCTV映像の一部が公開されている=ソウル中央地裁提供//ハンギョレ新聞社

 昨年12月3日に宣布された不法戒厳令は、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が自由民主主義を空洞化させつつ築いてきた権威主義的統治の頂点であり、予告された帰結だった。陰謀論的な扇動が実際の暴力を伴う実行計画へと具体化し、政権にとってわずらわしいすべての勢力を除去しようという野心が明らかになった。最悪の事態は避けられたが、軍の装甲車の国会進入、軍のヘリの上空援護、武装兵力の国会議事堂内進入など、その夜に起きたことは韓国の自由民主主義が窒息死するような恐怖そのものだった。

 最近公開されたクーデター当日の夜に国務委員が集まった大統領室会議室の防犯カメラ(CCTV)映像は、その恐怖を思い起こさせた。何より衝撃的なのは、12・3の夜とその後街路を埋めた市民の怒りと決意、戒厳令解除のための国会の混乱と、克明に対比される静かな雰囲気だ。カメラには国務委員が一つずつ会議室に入ってくる姿がとらえられているが、彼らの顔には緊張や恐怖の気配が全くない。一人は椅子の背もたれに腕をかけて気楽に立っており、もう一人はズボンのポケットに手を入れてゆったりと歩いて入ってくる。彼らはゆっくりと席について談笑を交わし、笑顔を見せる人もいる。20人以上座れる長いテーブルの前の数席だけ埋まった状態でしばらく続くこののんきな風景は、まるで秋夕(チュソク)の連休を控えた最後の形式的な会議のように見えるほどだった。

 しかし、まさにその平穏なシーンが、彼らが平然と大逆罪を犯した瞬間だったという事実に鳥肌が立つ。彼らの動機は、過度な忠誠心や出世欲だったことだろう。つまり、自分の行動と命令の道徳的責任を認識する独立した思考能力や意志が全くなかったということだ。ハンナ・アーレントが憤慨したアドルフ・アイヒマンの「思考能力の欠如」と変わらない。しかし、この「悪の凡庸さ」は個人の道徳の麻痺(まひ)にとどまらない。それはすでに社会全般に染み込んだ極右の感情と結びついていた。

 腐敗した保守エリートだけでは、韓国社会の極右化を説明できない。減ることのない女性殺害(フェミサイド)、中国人とムスリムに向けられた人種差別デモ、ソウル西部地裁暴動などの一連の事件は、極右色の濃い社会の一部の暴力性がますます高まっていることを示している。尹錫悦政権との断絶をいまだに躊躇する「国民の力」に対する支持率が、下落傾向にありつつも25%前後を維持しているという現実は、その根の深さを物語っている。

 ドイツの社会学者のカロリン・アムリンガーとオリバー・ナヒトバイは、このような現象を「破壊への熱望」と説明する。すなわち、後期近代社会で原子化された個人が、国内外の複合リスクや個人の経済的・社会的な剥奪感により、自由主義が約束した上昇と豊かさを享受できず自由主義に裏切られたと感じ、幸せな人生を妨げる不公正な攻撃と認識するようになるということだ。彼らは立身出世の機会がますます減っていく社会をゼロサムゲームのように考え、他人の小さな利益まで自分の損失と感じる。その怒りと屈辱は、他者を破壊することが自分の解放と報復をもたらすと想像させる。自由民主主義の守護者を自任する極右勢力は、大衆のこのような心理に食い込み、攻撃しやすい対象を設定し、破壊的なアジェンダを提示して扇動する。伝統的なファシズムが露骨に制度を破壊しようとしたのとは異なり、これは選挙や議会のような正常な民主主義の手続きを利用して自由民主主義を侵食する戦略であり、「民主的ファシズム」と呼ばれる。

 解決策は、この脅しと同じくらい挑戦的かつ根本的でなければならない。市民の憂いを公的な熟議として持ち寄り、制度的なかたちと自由主義的な内容を改めて結びつけ、剥奪感の土壌を減らす実質的な政策と民主市民の意識の強化が必要だ。政治的両極化と不平等を緩和する改革なしには、自由民主主義の形骸すら長くは保てないだろう。

ハンネス・モスラー (カン・ミノ)|ドイツ・デュースブルク・エッセン大学政治学科教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
//ハンギョレ新聞社
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1226925.html韓国語原文入力:2025-11-03 11:39
訳C.M

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