「借金をして自営業を始めたが倒産し、また借金をして自営業をしているんです。就職先があればすぐにでも止めたいが、20~30代が余っているのに誰が私たちを使いますか」。忠清南道でフランチャイズのピザ屋を経営して6年目になるKさん(52)は、30歳の時に下着屋を皮切りに、のり巻き屋、パン屋などほとんどの店を経験した自営業者だ。Kさんは「ピザ屋を始める前にあちこちの会社に願書も出してみたが、どこからも連絡が来なかった」とし、「自営業者の大半が、子どもたちは大きくなり生活はしなければならないので仕方なく商売をしている」と話した。
最近、ピザ屋を廃業したNさん(55)も事情は似ている。2008年のグローバル金融危機以後、会社を辞めて退職金と家の保証金をはたいてピザ屋を開いたが、休みなく働いても1カ月の実収は150万~200万ウォン(約15万~20万円)にしかならなかった。Nさんは最近店を閉め、アルバイトで生計を維持している。Nさんは「いま会社に通っている友達も2~3年以内に退社の予定」と言い、「就業生命が終わったのに、再び会社に入ることができるものか」と話した。
中高年世代の自営業者は、他の年齢層に比べて売上高や所得でより劣悪な状況にありながら、事業を放棄する割合は低いという分析結果が出た。年齢が高いほど賃金労働者に転職することも困難になるからだ。
韓国技術教育大学のクム・ジェホ教授(経済学)が1999~2014年の韓国労働研究院韓国労動パネル資料を分析し最近発表した論文「中高年層の自営業経営成果」によると、中高年層(55~69歳)の自営業者の厳しい現実が如実に表れている。同論文は年代を15~39歳、40~54歳、55~69歳の3区間に分けて分析した。
同分析によると、全体の自営業者の昨年基準の年間実質売上高は1億2295万ウォン(約1200万円)なのに対して、中高年層の自営業者の年間実質売上高は昨年1億1944万ウォン(約1170万円)で平均より低かった。特に、経済危機に見舞われた2008年の場合、中高年層は前年に比べて売上が4568万ウォン(約450万円、39%)下落したが、40~54歳は813万ウォン(約800万円、6.1%)の減少に止まり、中高年層の自営業者が経済危機にはるかに脆弱だという姿を示した。
自営業者がやっていた事業をやめて新たに自営業を開始する「事業転換」をする場合、月平均実質所得は全年齢帯の平均を見ると、変更前は206万6千ウォン(約20万2千円)だが、変更後は237万1千ウォン(約23万2千円)で、平均30万5千ウォン増える。15~39歳は53万8千ウォン(約5万3千円)、40~54歳は45万2千ウォン(約4万4千円)増えた。しかし、中高年層の場合には179万9千ウォン(約17万6千円)から177万4千ウォン(約17万4千円)と、2万5千ウォン減少していることが分かった。中高年層は事業転換をしても成功する確率が低いということになる。
自営業者が事業を放棄した後に再び自営業者になる割合は全体で38.3%だったが、年齢が高いほど自営業者になる割合がより高かった。中高年層は42.6%である反面、40~54歳は40.7%、15~39歳は31.6%が再び自営業を選んだ。賃金労働者に移動するとしても、常用職労働者に転職する割合は中高年層は21.3%に止まったが、40~54歳は30.9%、15~39歳は44%だった。中高年層ほど「良い雇用」への就職が困難な状況を示している。
クム教授は「中高年世代の自営業者の相当数が貧困の危険に直面しているが、事業を放棄する割合は他の年齢層に比べて低く、現在の仕事が袋小路に脱出口のない袋小路になっている危険性を示している」とし、「自営業者を賃金労働者と同様に考え、社会的セーフティーネットを拡充し、賃金労働者への円滑な移行を支援する雇用サービスの強化が必要だ」と提言した。
韓国の自営業者は、昨年基準で就業者全体の25.9%にあたる678万人であり、韓国は経済開発協力機構(OECD)加盟国のうち自営業者が最も多い国の一つである。