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韓国の未払い賃金は日本の10倍、なぜ?「賃金支払いに対する意識が問題」

登録:2016-12-21 22:51 修正:2016-12-22 07:05
雇用労働部「賃金未払い改善討論会」 
韓国労働社会研究所のキム・ユソン博士 
使用者の間に「ひとまず法を守らないでやってみよう」慣行 
梨花女子大イ・スンウク教授 
「政府が代わりに支給して 
使用者に求償権請求する制度を導入すべき」
雇用労働部の特別勤労監督で賃金未払いが摘発されたイーランドグループのホームページ。イーランドグループは代表的な賃金未払い企業として摘発された外食事業部「アシュリー」をグループのホームページのトップ画面に載せている//ハンギョレ新聞社

 「アシュリー」、「自然別曲」など、イーランドの外食事業部直営店舗360カ所で、労働者4万4360人に83億7200万ウォン(約8億2500万円)の賃金が未払いになっていた事実が雇用労働部の勤労監督を通じて摘発され、イーランドの外食事業のみならずイーランドブランド全体に対する不買運動がネチズンを中心に広がっている。イーランドが2007年に系列会社だった大型マート「ホームエバー」の非正社員労働者を弾圧した履歴まで重なり、イーランドの「労働軽視」風潮に対する批判世論が高まっている。

 事実、韓国では賃金未払いが大企業・中小企業の別なく蔓延している。経済規模では日本が韓国の3倍を超えるが、未払い賃金の規模は韓国が日本の10倍近く大きい(2014年基準、韓国1兆3194億ウォン=約1300億円、日本131億3千万円)。 21日ソウル長橋洞(チャンギョドン)のソウル雇用労働庁で、雇用労働部主催で開かれた「賃金未払い改善のための専門家討論会」で参席者は賃金未払い根絶のためには「他のことはさておき賃金だけは必ず支払わなくてはならない」という使用者の意識改革と政府の積極的役割が重要だと強調した。

 梨花女子大法学専門大学院のイ・スンウク教授は「賃金未払い改善のための賃金未払い行政システム改編方向」という提案で「使用者の遵法意識の欠如と経営悪化時の事業継続のためにまず労働者の賃金から未払いにする労働力軽視の風潮など、社会心理的要因が莫大な賃金未払いの理由の一つ」と分析した。

 イ教授の提案発表文によれば、30人未満の事業場が未払い額の65%、未払い人員の74%を占めており、未払いの理由は「一時的経営悪化」が未払い額基準で2011年の48%から2014年には56%に増加した。2006年に2万4千件だった卸小売・飲食宿泊業の未払い件数は、2014年には4万7千件に2倍に増えた。早期退職にともなう自営業者の増加と経営悪化が原因と見られる。賃金未払い額の半分以上は製造・建設業が占めていた。

 韓国労働社会研究所のキム・ユソン専任研究員は「企業規制緩和という名目で企業に有利に法律を解釈し執行した結果、使用者の間に『ひとまず法を守らないでやってみよう』という慣行が形成された」と指摘した。釜山大法学専門大学院のクォン・ヒョク教授も「賃金は“人間”の労働力に対する代価という点で、単純な個人債権の問題ではなく、社会の安全に関する社会的問題として見なければならない」と明らかにした。

 専門家たちは賃金未払い解消のための国家の主導的な役割を強調した。キム専任研究員は「重要なのは法ではなく法の執行だ。勤労監督官の定員を拡大し、勤労監督庁を設置して、フランチャイズ・下請け業者の賃金未払いの根本原因となる元請けと親企業に対する勤労監督を強化しなければならない」と明らかにした。イ教授は、連邦労働部長官が未払い賃金訴訟を労働者の代わりに遂行し、賃金だけでなく付加賠償金まで支給させる米国の例をあげて、「特別法の立法を通じて政府が“賃金支払い保障機構”を作り、未払い賃金を労働者にまず支払った後に、使用者に対して求償権を請求する制度を用意する必要がある」と提案した。

パク・テウ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/labor/775544.html 韓国語原文入力:2016-12-21 19:25
訳J.S(1584字)

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