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韓国政府、経済活性化対策で消費税引き下げ

登録:2015-08-27 02:42 修正:2015-08-27 13:34
マーズ事態で萎縮した消費心理を刺激する短期的対応

 自動車などの特定の品物にかかる税金(個別消費税)を減らすことを骨子とした政府の消費活性化対策は、6月から7月までのマーズ(MERS)拡散で萎縮した消費心理を刺激しようとする短期的の対応策としての性格が強い。しかし、消費低迷が数年間続いている背景には、家計所得不振と所得格差、雇用不安、老後の不安など構造的な問題が横たわっており、短期的対応方針で低迷する消費を復活させるには明らかに限界があると指摘される。

民間消費増加率及び家計平均消費性向の推移。上のグラフ:家計平均消費性向、下のグラフ:民間消費の増加率 //ハンギョレ新聞社

 政府は現在の消費不振の原因を6月から7月にかけ2カ月続いたマーズ事態にあるとしている。チョン・ウンボ企画財政部次官補は26日のブリーフィングで「マーズのために消費全般に否定的な影響が発生し、7月以降も、その衝撃から完全に回復していない」と述べた。政府は、このような診断を裏付けるため、前期に比べて0.3%減った第2四半期(4〜6月)の民間消費指標と、6月に急激に落ち込んだデパートと大型マートの売上高の流れなどの経済統計を提示した。

 政府はなによりも“心理”(の影響)を強調する。消費の源泉である所得状況は好転しているという意味だ。ユン・インデ企画財政部経済分析課長は「低油価の影響で実質所得は増え続けている。心理が改善すれば(マーズで)抑えられていた需要が息を吹き返し、消費も急速に回復する可能性が高い」と強調した。減税と小売業者の同時多発的なセールなど、消費誘因策を中心に消費活性化対策が用意された背景には、これらの政府の認識がある。政府は今回の対策で、今年の第4四半期の成長率(国内総生産の伸び率)が予想より0.1%ポイント(年間0.025%ポイント)上がると予想した。税収は1200〜1300億ウォン(120億8000万~130億9000万円)減ると、政府は推算した。ムン・チャンヨン企画財政部税制室長は「全体的に消費が活性化したら、1200億ウォン水準の税収の減少は、現在の財務状況で十分に吸収できる」と述べた。

 消費不振の原因をマーズに求める
 「心理を改善すれば、すぐに消費回復」
 不安定な雇用・家計負債など
 消費不振の構造への対策はない
 「家計の財布に厚みを持たせる方案を」

 しかし、短期的な消費誘因策だけで低迷した消費を蘇らせるのは難しそうだ。消費不振の原因をマーズの拡散のような一時的な要因だけに求めるには、その根が非常に深いからだ。

 消費萎縮は数カ月で発生した現象ではない。韓国銀行の資料によると、実質民間消費増加率(対前年比)は、2010年に4.4%、2011年には2.9%、2012年と2013年にはそれぞれ1.9%と2014年1.8%で、数年間着実に低下している。

 所得状況も明らかに悪化している。家計(家計及び非営利団体)の所得(被用者報酬基準)は、経済危機の影響が大きかった2008年から2009年までを除いて、2000年代に概ね7〜9%水準で、毎年増加した。しかし、最近の3年(2012〜2014)の間の所得増加率は毎年5%台のレベルに留まっている。増えた所得も消費より貯蓄を増やすのに使われている。クォン・ギュホ韓国開発研究院(KDI)研究委員は、「不安定な雇用状況と平均寿命の増加などで、貯蓄性向が高くなるにつれ、消費不振が構造化されている流れ」だと診断した。所得よりも早く増える家計負債も、消費をおさえる重要な要素とされる。ムーディーズは、最近発表した2015年の世界経済展望報告書で、「家計負債が中期的に消費にマイナスの影響を及ぼしている」と分析した。

 このような消費不振の構造的背景に照らしてみると、これまでの政府の経済運用は消費回復にあまりつながらない方向へと進んでいる。政府は昨年8月に断行した住宅ローン規制緩和を1年延長したのに続き、最近では、既存の従業員の賃金水準を落とす賃金ピーク制の導入を押し通している。パク・ジョンギュ韓国金融研究院主任研究委員は、「今回の政府の対策は、消費萎縮の短期的な減少を目指した、苦肉の策と思われる」とし「長期化した消費不振を乗り越えるためには、根本的に家計の財布に厚みを持たせる方案が提示されなければならない」と述べた。

世宗/キム・ギョンラク記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015-08-26 20:01

https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/706146.html  訳H.J

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