上半期中に保険料軽減案を作成
1100億円以上の収入減少には“無対策”
韓国政府は「健康保険料改善案白紙化論議」が大きくなると、今年上半期中に低所得層の保険料軽減案を作ると明らかにした。しかしこれは、健康保険料の支出はそのままで収入だけを一方的に減らす内容なので、健康保険制度の持続可能性を害するという批判が出ている。 所得や財産が多いのに、既存の健康保険制度の不備を悪用して、健康保険料を殆ど納めていなかった一部の高所得層の“無賃乗車”を正す対策が抜け落ちており、「保険料負担の公平性」問題を解決できないという点も限界として指摘される。
保健福祉部は1月30日、今年上半期中に脆弱階層の保険料負担軽減案を策定し施行すると明らかにした。 保健福祉部が検討している健康保険料軽減対象は、全ての地域健保加入者(758万9000世帯)の約78％を占める年間所得500万ウォン（約55万円、100ウォンは約11円）以下の地域健保加入者(599万6000世帯)だ。現行の健康保険料賦課体系は職場健保加入者と地域健保加入者を区分しているが、地域健保加入者はさらに年間所得500万ウォンを基準に「超過世帯」と「以下世帯」に分けられる。
年間所得が500万ウォンを超える地域健保加入者は、所得と財産の多寡、自家用車の種類に応じて保険料を納める。 一方、低所得層に当たる500万ウォン以下の地域加入者は、財産・自家用車・「評価所得」の３要素に応じて保険料を納付する。 評価所得とは、性別や年齢、財産、自動車を点数化し、実際には存在しない所得を推定して保険料を決める方式を指す。 結果的に財産と自動車について保険料が２度計算されることになるので、ただでさえ経済的に苦しい低所得層に対して二重賦課になっているという議論が絶えなかった。
これについて保健福祉部は「評価所得をなくすことはできないが、先ず性別・年齢に応じて保険料を賦課する項目をなくすなど、多様な軽減策を検討している」と明らかにした。 評価所得の中で大きな比重を占めてきた自家用車と関連しても「生計型自動車」は保険料の賦課対象から除外する案を検討中だ。
問題は、福祉部の「低所得層保険料軽減策」には健康保険料の追加確保案が全くないという事実だ。 健康保険審査評価院などが昨年９月に出した「2013年健康保険統計年報」によれば、2013年の全保険料収入が39兆319億ウォンだが、このうち地域健保保険料は7兆1568億ウォンだった。 地域健保保険料のうち評価所得の性別・年齢と自家用車の項目があるために徴収できた保険料はそれぞれ9000億ウォン、5000億ウォンに上る。 評価所得とは別途に自家用車に賦課する保険料も4000億ウォンあまりだ。 性別・年齢項目をなくし、自家用車に対する保険料も引き下げるならば、少なくとも１兆ウォン(約1100億円)以上の健康保険料収入の減少が生じるという意味だ。
健康保険公団の関係者は1日、「健康保険制度を新たに設計する際は、制度の持続可能性を先ず考慮しなければならないが、このようなやり方で収入を一方的に減らすならば、健保財政が深刻に脅かされざるを得ない」と指摘した。 この関係者はさらに「現在健康保険財政に12兆ウォン余りの累積黒字があるが、これは高齢者人口の増加と同時に増大している高齢者診療費の増加分に備えた余裕資金だ」として、「さしあたり健保財政に余裕があるからと言って、このようなやり方で収入・支出の均衡を破る低所得層保険料軽減案を作ることは極めて無責任な態度だ」と批判した。
政府が1月28日に白紙化した「健康保険料賦課体系改善企画団」(企画団)の改善案とは異なり、今回の低所得層保険料軽減策には一部の高所得層の無賃乗車に対する対策が全くないという点も深刻な問題として挙げられる。 当初企画団は、保険料負担の“公平性”及び“公正性”実現を目標に「経済的事情に応じた保険料負担」、「収入・支出の均衡(財政中立)」、「無賃乗車排除」の３大原則を立てた。 45万人前後の高所得層の健康保険料を引き上げて、600万人に達する低所得層の負担を減らす方向の改善案が出てきた背景だ。
「私が作る福祉国家」のキム・ジョンミョン健康保険チーム長は、「現行の健康保険料賦課体系を改革せよという国民的要求の核心は、保険料負担の不公平性を正せということだ」として、「政府が面目を立てるだけの低所得層対策で健康保険料の改善案白紙化に対する批判を免れようとするのは、全人口の1％にもならない高所得層45万人の特恵を何としても保護しようという態度だ」と指摘した。
韓国語原文入力:2015/02/01 23:12
