本文に移動
全体  > 文化

開城工団は果たして「一方的な支援」なのか

登録:2015-06-11 23:19 修正:2015-06-13 07:43
 「日々小さな統一が行われる奇跡の空間」
 北側より南側がずっとプラスになる開城工団
 工団長期滞在体験者インタビューを通じ
 就業住民たちの生活の実像にアプローチ
開城工業団地のすぐ隣の北民家や学校。校舎の壁に掲げられた「朝鮮のために学ぼう」というスローガンが見える=キム・ジンヒャン提供//ハンギョレ新聞社

 『開城工団の人々』
 キム・ジンヒャン企画総括、カン・スンファン、イ・ヨング、キム・セラ取材
 明日を開く本・1万5000ウォン

『開城工団の人々』(キム・ジンヒャン企画総括、カン・スンファン、イ・ヨング、キム・セラ取材、明日を開く本・1万5000ウォン) //ハンギョレ新聞社

 開城(ケソン)工業団地(開城公団)は本当に「一方的な対北支援」の本拠地なのか?

 開城工業団地に4年間滞在し、北朝鮮側との交渉などを担当したカイスト未来戦略大学院の北朝鮮・統一問題の専門家であるキム・ジンヒャン教授が、取材作家3人と2年余りの共同作業の末に出した『開城工団の人々』は、「とんでもない」と一蹴する。 「北側に比べて、むしろ南側の方が数倍は得するところ」がまさに開城工団だという。注目すべきなのは、そのような経済効果だけではない。

 開城工業団地に勤務していたり、したことのある南側の駐在員9人のインタビューを通じて「開城工業団地で働く北朝鮮住民たちの生の話」を盛り込んだというこの本によると、最も軍事的緊張の高い最高度の武装地帯だった開城一帯の西部戦線が、南北共存と分断解体の最前線へと変貌している。まだ多少希望的な観測かもしれないが、そこはすでに「世界で最も経済性が高い生産基地」であり、「戦争の脅威が日常化したソウルよりも、むしろより安全な」場所になったと言う。

 このような話はどうだろうか?「今日も忙しく稼働している開城工団で、火星から来た南側の労働者と金星から来た北側の労働者たちは、なんだかんだ言いながら“愛憎相半ばする情”を積み重ねながら、お互いに同化されていく。だから彼らは開城工団を『日々の小さな統一が行われる奇跡の空間』と呼ぶ」

 このような話をどれほど信じればいいのか?2000年に南北が合意し、2004年に最初の製品を生産し始めた開城工団では今、韓国企業124社が工場を稼働させている。そこで働く北朝鮮の住民たちは5万3000人。開城市と近隣から動員可能な働き手を最大限に集めた人員だ。一人1カ月50ドルから始まり、今は130ドル程度にまでなった開城工団の給料で生計を支えている北朝鮮の住民は、その家族などを合わせると、数十万と推定される。公団が稼働してから10年間で、60〜70%が女性である開城の労働者たちの顔は白くなり、メイクや衣類などの生活ファッション、そして考え方さえも、韓国に近づいて行く革命的な変化が起きているという。

 5万3000人の北朝鮮労働者の賃金と税金を合わせて1年に約1億ドル(約1000億ウォン)程度が北側に流れているが、南側が上げる生産額は15億〜30億ドルを超えるという。政府の発表によると、開城工団の年間生産額は約5億ドルだが、賃加工料(縫製費=単純賃加工料)基準で算定したこの数値には、抜け穴があると指摘されている。これを工場卸値や消費者価格に換算すると、少なくとも5〜10倍以上の差が出ると言われている。だから「南北が経済的にウインウイン(Win-Win)する所だが、より厳密に評価すると、韓国の方が北朝鮮より何倍、何十倍も多く稼いでおり、国家経済の観点から、比較ができないほど、より多くの得をしている所」が開城工団ということだ。

 「韓国下着の70%が、開城工団から生産されたものです。私たちが着ている衣服の30%は開城工団で作られます。そして携帯電話の部品も相当数が、開城工業団地で組み立てられています。いわゆる『開城単価』というのがあります。開城工団で生産される製品があるからこそ、価格が信じられないほど安く形成されているのです。それほど開城工団の経済的価値は計り知れないものです」

 世界で最も競争力が高いというのも、口先だけの言葉ではない。「海外のどこに行っても、開城工団ほどの比較優位、競争力を持っているところはない。開城で利益を上げられなかったら、事業を畳むべきだ」という。人件費、近接性(物流費)、技術性(生産性)などで圧倒的に優位を占めているという話だ。

 そのため、「統一が大当たり」という言葉は、「平和が大当たり」という言葉に変えるべきだと、(著者たちは)主張する。致命的な損失をもたらした稼働中断のような緊張と対決がない平和が、すなわち大当たりということだ。「物々しい統一論がなぜ必要なのでしょうか?開城工団のような場所がいくつか増えれば、自然に統一されるのに」

 だからこそ、天文学的な数値の統一費用云々も、虚構として一蹴される。開城工団式の平和統一過程には、「一銭のお金もかからない」。ただ、お互いの「違い」を認める「相互尊重」さえ実践すれば、南北はむしろお金を稼ぎながら、統一向けて歩んでいけるというのだ。

 北朝鮮当局がタダ同然で譲ってくれた開城工団の敷地と周辺地域は、北朝鮮軍6師団と64師団、2軍団砲兵連隊などがあった土地だ。北朝鮮はその基地を5〜10キロメートルも後退させ、公団で働く北朝鮮住民の給料も自ら大幅下げる譲歩をした。

 もともと開城工団は、3段階に分けて公団800万坪と背後都市1200万坪など合わせて2000万坪の、韓国の昌原(チャンウォン)公団と昌原市を合わせた規模の巨大都市に建設することに合意した。しかし、今は1段階である100万坪の約40%のみに工場が入っている。勢いに乗っていた公団の拡張計画は、李明博(イ・ミョンバク)政権の登場とともに、全面的に中断された。 2008年7月に「パク・ワンジャ氏射殺事件」のためという主張は、誤解か歪曲だという。その前の同年3月にはすでに統一部長官が「核問題の妥結なしに開城工団の拡大は不可能」を明らかにしており、「開城工団を中断してもよい」という発言までしていた。その時から南北は互いに背を向け始めた。それによる「異常状態」が「過程としての統一」を遮った。吸収統一を志向しながら、南北の分断・対立体制を既得権維持の手段として存続させようとする勢力、奇跡の前に立ちはだかろうとする彼らは誰なのか。

ハン・スンドン先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015-06-11 20:49

https://www.hani.co.kr/arti/culture/book/695633.html  訳H.J

関連記事