本文に移動

[ニュース分析] 賃金引上げで再び揺らぐ開城工団

登録:2015-04-08 08:59 修正:2015-04-08 19:43
南北の駆け引きも新たな局面へ
開城工業団地で作業している北朝鮮労働者たち。//ハンギョレ新聞社

 開城(ケソン)工業団地が再び分岐点にさしかかった。10日から北朝鮮が一方的に引上げを通知した開城工団の北側労働者3月分の賃金支給が始まる。北側当局は通知通りに引き上げた賃金を支給せよと、南側当局はこれを絶対受け入れるなと企業を圧迫してきた。だが、賃金支給日を3日後に控えた7日、北側の中央特区開発指導総局(総局)が南側の開城工業団地管理委員会と賃金問題を話し合えるという意向を明らかにしたと、この日、工団を訪問して南に戻ってきた開城工団入居企業代表が伝えた。開城工団を身動きとれなくさせた賃金問題が南北協議によって解決するか注目される。

 北側当局は昨年11月、開城工団の労働規定のうちの13項目を一方的に改正した。2月末にはこのうち2項目を適用させ、3月から1カ月の最低賃金を74ドルに5.18%引き上げると明らかにした。南側の4大保険料と類似の社会保険料も、算定基準を労賃に加給金(時間外手当)を含めた金額の15%(現在は労賃の15%)に変え5.5%(8.6ドル)上げると通知した。

 南側当局は北側要求に応じないよう企業の手綱をしっかり掴んでいる。政府は2日、開城工団入居企業に対し北側の一方的な最低賃金引き上げ要求に従わず、今まで通りの給与と社会保険料を支給するよう公文書を送った。北側要請に従った場合は北朝鮮訪問承認を出さなかったり、金融支援制限だけでなく事業承認取り消しをすることもあるとする警告も一緒に伝達した。

北の一方的な引上げは収益確保の意図
工団運営権を掌握する試みとの分析も
北側が昨日、交渉の意思を伝達
南北対峙局面を避けられるか注目
今年初めの賦課土地使用料も新たな火種
北側の一方的措置撤回、南側の5・24措置解除で
開城工団が活性化する可能性

 現在の開城工団最低賃金引上げの上限は5%だ。北側の引上げ率は上限より0.18%高いだけだ。だが、どれだけ上げるかが重要なのではないと南側はみている。統一部当局者は「今回北側が南北合意なしで改正した労働規定を受け入れれば、今後、北側が保険や税金の規定まですべて変えようとするなど、開城工団全般を一方的に運営する口実を与えることになる」と見通した。

 南北の間に挟まれた企業は不安を隠せずにいる。ある入居企業の代表は「どんな状況に変わっていくのか不安だ」と心境を吐露する。キム・ソジン開城工団企業協会常務は「賃金引上げを聞き入れず北側労働者が残業などを拒否したら、小さな企業や納期日が迫った企業は状況がかなり厳しくなる」と訴えた。開城工団の賃金問題は2013年に5カ月間も同工団が閉鎖された記憶を思い起こさせる。当時北側は韓米連合軍事訓練などを理由に北側労働者を撤収させ、南側は従業員を帰還させた。

 当時の操業中断で入居企業は申告額基準で1兆566億ウォン(約1500億円)の被害を被った。その年の8月、南北は7回の当局実務会談の末、「稼動中断再発防止」や「開城工団の国際化」などの合意書を作り、これを履行するため「開城工業団地南北共同委員会」を設けた。今回、北側が一方的に労働規定を改正したのは、共同委で南北が協議して問題を解決させる合意を違反したという点で 再び閉鎖事態以前の態度に戻ったのではないかとの憂慮をもたらした。

 北側が一方的に労働規定を改正した理由は何なのか。まず考えられるのは、北側が開城工団で当初の計画通り得れなかった収益を確保するためとするものだ。チョ・ポンヒョンIBK経済研究所首席研究委員は「北でも開城工団事業では期待より利益を出せず、ある程度の補充をしようとする試みに思える」と分析した。

 対北朝鮮ビラ散布と韓米連合軍事訓練を原因とする見解もある。また、北側が開城工団を“北側主導”に変えようと動き始めたという分析も出される。キム・ヨンチョル仁済大北朝鮮学科教授は「2008年の李明博(イ・ミョンバク)大統領就任当時に開城工団から韓国の公務員を退去させる事件が発生してから8年間も問題が積み重なって起きた事態」とした上で、「北朝鮮は開城工団を南北共同運営から北朝鮮主導に変えようとしているものと思われる」と指摘する。

 今年から賦課される土地使用料ももう一つの火種となる。2004年に北側の総局と南側の現代峨山(アサン)が賃貸借契約を締結して10年になる翌年の2015年から土地使用料を賦課することにした。北側の総局関係者は昨年11月、南側の開城工業団地管理委を訪問して土地使用料問題の協議を通知してある状態だ。北側は2009年に3.3平米当たり5~10ドルの土地使用料を直ちに課すと主張したが、南側の反対で失敗に終わったことがある。政府は3.3平米当たり2.8ドルのベトナム国際工団の事例などに照らし無理な要求だと判断している。

 今回の問題を解決して開城工団を正常化できなければ、開城工団の地位そのものが南北ともに揺らぐことになるとの警告も出されている。キム教授は「北朝鮮と中国の国境隣接地帯に中国が作った委託加工団地が造成されており、ロシアに進出した労働者が2万人を超えるなど、北朝鮮内の開城工団の相対的地位が低くなっている」と語る。事態が長期化する場合、南北葛藤の震源地となる開城工団に対する南側での疲労度も高まる可能性が高い。

開城工団の入居状況。 //ハンギョレ新聞社

 北側は一方的措置を撤回して南北合意精神に戻るべきであり、南側も5・24措置解除など南北関係の復元に乗り出さなければならないとする声も出てくる。政府高官は「(北朝鮮は)既存合意をまず守り、その合意により(賃金引き上げ問題も)解決してから段階的に進めなければならない」と話した。

 イム・ウルチュル慶南大極東問題研究所教授は「わが政府が対北朝鮮ビラ散布を防ぎ南北関係改善に真剣に臨む姿勢を見せるやり方で南北対話の出口を開く必要がある」と語る。キム教授も「わが政府が5・24措置を解除することが最も重要だ。5・24措置で新規投資が禁止された状況で開城工団を発展させる方法はない」と指摘した。

キム・ジフン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015-04-07 21:31

https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/685928.html 訳Y.B

関連記事