韓国検察は、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の夫人のキム・ゴンヒ女史関連疑惑が明らかになったドイツモーターズの株価操作事件の捜査を1年ぶりに再稼動した。キム女史の証券口座取引内訳などがまとめられている「キム・ゴンヒ・ファイル」の作成に関与したとされるM氏(52)を拘束した。「生身の権力」の捜査には手をこまねいていると批判されてきた検察としては、もはや「判断」を下さなければならない状況に追い込まれているが、捜査チームは依然としてキム女史の捜査に生ぬるい態度を示している。
ソウル中央地検反腐敗捜査2部(キム・ヨンチョル部長)は1日、資本市場法違反などの疑いが持たれているM氏に対する拘束令状を請求した。ソウル中央地裁のキム・セヨン令状専担部長判事の審理で、同日午後、同氏の拘束前被疑者尋問(令状実質審査)が行われた。
投資諮問会社であるA社の役員だったM氏は、2009年12月から2012年12月までの間、クォン・オス前ドイツモーターズ代表(拘束起訴)らと共謀し、株価を人為的に浮揚させた疑いが持たれている。M氏は昨年、捜査が始まると海外に逃避した。文在寅(ムン・ジェイン)政権時代、この事件の1次捜査チームはM氏のパスポートを無効化し、国際手配を要請するなどの措置を取った。約1年がたって、最近自主帰国の意思を明らかにしたM氏は先月29日、仁川国際空港で検察に逮捕された。
M氏は「キム・ゴンヒ・ファイル」の作成に関与した人物として知られる。昨年9月、検察がA社を家宅捜索して発見したノートパソコンから「キム・ゴンヒ」という名前のエクセルファイルが発見された。同ファイルにはキム女史の証券口座の引き出し内訳、株式数などが記録されていたという。A社は2010年10月以降に行われた「ドイツモーターズ2次株価操作」事件の主要拠点とされるところだが、検察はA社がキム女史の口座を管理したのではないかと疑っている。 実際、「キム・ゴンヒ・ファイル」に言及されたキム女史名義の2つの口座を通じて、A社代表のL被告(拘束起訴)が2010年10月から2011年1月までドイツモーターズの株式49万株以上(約18億4600万ウォン相当)を買収した。M氏はL被告の義弟で、株価操作において連絡策など実務的な役割を果たしたという。
検察はまずクォン前代表の共犯とされるM氏の株価操作容疑の立証に集中する方針だ。 M氏が「キム・ゴンヒ・ファイル」の作成に関与し、キム女史の口座を管理したという疑惑が事実と立証されても、キム女史が株価操作に主導的に参加したかどうかは別の問題だという立場を示している。
法曹界の一部では、M氏に対する捜査が「表面上のバランス」を合わせる水準にとどまるだろうという見通しも示されている。検事長出身のある弁護士は「キム女史に直接つながらない水準で、脇役の捜査を続けることで、(キム女史関連疑惑の)捜査も疎かにしていないという名分を得られるようになった」と話した。これに先立ち、キム女史事件を捜査する反腐敗捜査2部などソウル中央地検特別捜査部署全体が、野党の「共に民主党」関連捜査だけに没頭し、検察権の行使に最小限のバランスを失ったという批判が高まった。