ドナルド・トランプ米大統領は10日、韓国を含めた57の主要貿易相手国に対する相互関税の適用を90日間猶予すると電撃的に発表した。その代わり、10%の一律関税が課せられる。これにより韓国は、対米輸出品関税率が25%から10%に低くなったものの、事実上無関税である韓米自由貿易協定(FTA)が米国によって一方的に破棄された状況を迎えた。また、世界1位と2位の経済大国である米国と中国が互いに125%と84%の報復関税を賦課し、貿易戦争に突入した点も、韓国にとっては非常に悪い知らせだ。
今回の発表は、米国の限界を露呈したという点で、示唆するところが大きい。相互関税発効初日にトランプ大統領が決定を覆した背景には、株式市場の暴落と米国国債の投売りなどが起き、金融危機説まで流れたうえ、米国内の企業・金融界関係者たちの強い反発などがあったという。対外的には中国が報復関税で対抗し、周辺国を糾合しようとする動きを見せており、欧州連合(EU)まで25%の報復関税を決めた点も、少なくない影響を及ぼしたものとみられる。いくら最強の大国とはいえ、市場の力と主要同盟国の反対を無視してまで無謀な関税戦争を繰り広げることは難しいからだ。
韓米は9日、ハン・ドクス大統領権限代行とトランプ大統領間の初の電話会談を基点に事実上交渉を始めた。しかし、関税戦争の勢力図が微妙に変わりつつあることを踏まえ、交渉戦略を原点から練り直さなければならない。米国側は貿易不均衡、造船、液化天然ガスの販売、アラスカのパイプライン関連合弁事業などの様々な経済案件と、在韓米軍の防衛費分担金問題まで交渉のテーブルに載せようとしている。韓国の立場からすると、安全保障問題は別途に交渉しなければならない。防衛費分担金問題は、経済案件と性格そのものが異なり、在韓米軍の役割の調整とも関わっている。経済案件も一つひとつがかなりの検討を要する事案だ。開発費が57兆ウォン(約5兆6800億円)と推定されるアラスカのパイプライン事業は、世界的なエネルギー会社も経済性がないとして手を引いた事業だ。造船に関しても、造船業の基盤が崩れた米国で韓国企業が事業を展開し収益を出すのは事実上困難といえる。
ハン代行が自分の責任のもとで交渉を急ぎ、結論を出そうとする動きを見せているが、これは間違った態度だ。交渉そのものが相当な時間を要するうえ、国益に大きな影響が避けられない重大な事案を、民主的正当性を欠いた代行が決めてはならない。大統領選挙の候補になりたいが為に、早期妥結に向け「一方的な譲歩」をすることなど、夢にも思わないでほしい。