ハンギョレは10月2日の老人の日に際し、忠清南道南部高齢者保護専門機関が作成した鶏龍市(ケリョンシ)と公州市(コンジュシ)の高齢者虐待事例の判定書を中心に、療養院(老人ホーム)内でどのように拘束が行われ、なぜ問題なのかを検討した。防犯カメラ(CCTV)で撮影された拘束の瞬間を見て、それが本当に自傷や傷害を防ぐために必要不可欠な措置なのか、ケアなのか虐待なのかを検討した。専門家に再発防止のための制度改善案も聞いた。
療養院での拘束は、超高齢社会の敏感な人権問題だ。韓国は来年から、人口に占める65歳以上の高齢者人口の割合が20%以上となる超高齢社会に突入する。今年7月現在で、65歳以上の人口の9.8%が、療養院に入所できる高齢者長期療養保険の療養等級の1~4級判定を受けている。数にすると97万8865人だ。
「首都圏の療養院ではあまりなかったのですが、地方では深刻な虐待事例が多く、とてもショックを受けました」
ソウル西部高齢者保護専門機関などでも事例判定委員を務めるペ・グァンニョル弁護士(社団法人オンニュル)はそう語る。ペ弁護士は「忠清南道高齢者保護専門機関では今年から判定委員になって、最初の判定委員会で5件の事例を審議したが、いずれもひどかった」と語った。高齢者虐待の通報を受けて調査・判定する各地方自治体傘下の高齢者保護専門機関は2カ月に1度、各界の専門家からなる事例判定委員会を開き、通報された事件が虐待であるかどうかを判定する。
ペ弁護士は、「忠清南道の南部地域では、車いすやベッドに拘束されていた患者が同じ部屋の高齢者に殴られて死亡する事件があった。ベッドから転落した高齢者を一晩中放置した事件もあった」とし、「ソウルで判定委員を5年間務めているが、転落事故以外はあまり見られなかった」と付け加えた。
高齢者人口の増加に伴って療養院が急増したことにより、どの療養院を選択するかについて、受給者(等級判定を受けた当事者)と保護者は頭を悩ませている。各療養院のサービスの水準はひとまず、国民健康保険公団が評価委員を組織し、3年に1度おこなう定期評価等級(A~E)で確認できる。
ペ弁護士は、「ソウルと首都圏にA等級が集中している。療養院に対する同地域の保護者の要求水準も非常に高い」と語る。A等級だからといって、入所者に対する拘束などの身体抑制がないという保障はない。身体抑制の有無に対する評価は、事前同意書をあらかじめきちんと書かせるかなど、書類上の評価で済まされるケースが多いからだ。
ペ弁護士は、「療養院は高齢者の居住施設だが、入所者が中から外に出られなかったり、エレベーターのボタンも押せなかったりなど、収容施設のように運用されている所が多い。いくら人権を守るようにしても、施設であるという基本的な限界がある」とし、「長期的には地域社会でケアできるよう、国が支援する方式になるべきだ」と話した。
では、療養院を選ぶ際には、どのようなことに気をつければよいのだろうか。2008年から2014年にかけて論山(ノンサン)の療養院の院長を務めたこともある忠清南道高齢者保護専門機関のオ・ボッキョン館長は、次の4つを提示する。(1)入った時に高齢者の表情が安らかで明るいか(2)職員が高齢者に気を使い、耳を傾けているか(3)院長のマインドが機関運営ではなく高齢者に向いているか(4)漂白剤や消臭剤などのにおいがしないか。(4)の項目については、入所者のおむつを頻繁に交換していなかったり、入浴をきちんとさせていなかったりする施設は、漂白剤や消臭剤でその匂いを隠すことが多いためだ。
各療養院にどのような等級がつけられているかは、国民健康保険公団のウェブサイトの「長期療養機関検索」で、給与の種類を「高齢者療養施設」に設定して検索すれば知ることができる。