「新型コロナの症状が出ていると伝えても、『仕事をする人がいない』ということで、出勤するよう言われます。出勤を拒否すれば解雇されます。その結果、高齢者と療養保護士の感染が相次いでいます。療養施設は阿鼻叫喚そのものです」
仁川(インチョン)のある療養院で働く療養保護士のKさん(54)は、「最近の療養施設の高齢者は、いつ新型コロナにかかったとしてもまったくおかしくない。高齢者の相当数に基礎疾患があるので『生きる人は生き、死ぬ人は死ぬ』として放置する印象さえ受ける」と述べた。Kさんは「以前は、療養施設で感染者が出ればコホート(同一集団)隔離をしていたが、今はオミクロン株にさらされたまま療養保護士が高齢者の介護をしている」とも話した。
疾病管理庁の資料によると、11~17日の1週間に新型コロナで亡くなった1835人のうち、療養病院と療養院で亡くなった感染者は647人(35.3%)に達する。
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「痰のついたマスクも取り替えられない」
最大の問題は、療養病院の高齢者と療養保護士の相互感染が日常になったという点だ。実際、大邱(テグ)のある療養院で働く療養保護士のJさん(54)は先月、感染者との接触後、自己検査キットで検査した。陰性だったが熱があり「1日休む」と伝えた。しかし、療養院は、「人手が不足しているから出勤してほしい」と言ってきた。Jさんは出勤して高齢者の介護を行い、退勤後の検査で陽性になった。その日にJさんが介護した高齢者6人が感染した。
1カ月ほどの間、1日の感染者数が30万人を前後しており、介護をする人材の不足が現実となり、これが患者の管理をないがしろにすることにつながっている。大田(テジョン)のある療養病院に義母が入院しているというIさん(46)は、「義母は感染者が多く出た時期、床ずれができて苦労した」と話した。同じ地域の療養保護士のAさん(61)は「感染の心配から、入浴はとてもじゃないができない。適切な時に十分に食事をとっているか、不便な点はないかなどを見回らなければならないが、全員が疲れ切っており、食事だけを配給し、そのまま片付けているのが現実」だと耳打ちした。療養保護士のBさん(64)は、「1人が17~30人もの高齢者の介護をしなければならない状況だ。本来は朝7時から午後4時まで働くのだが、いまは夜10時まで働いている」とし、「現場はとても大変で、『いっそのことコロナにかかってしまいたい』という言葉まで出ている」と苦しさを吐露した。
仁川で働く療養保護士のCさん(49)は「高齢者のマスクに痰がついたりして汚れていても、取り替えることができない。防疫服もそのたびごとに着替えなければならないが、着替えがしにくく、最初から着ていなかったりしている」と述べた。「保健所などで点検されることもない。療養施設に話しても、政府からは『後で清算するので、先に買って使いなさい」と言われており、防疫用品の購買費が送られていないという」と言い、「どの療養施設が私費を投じて防疫物品を買うだろうか」と付け加えた。
民主労総サービス連盟・全国療養保護士労働組合のキム・ミスク大邱慶北支部長は、「コロナ禍の初期には、政府が防疫物品の支給や消毒などをしてくれたが、最近は施設で処理しなければならない状況になった」と述べた。民主労総公共運輸労働組合・医療連帯本部のチョ・ヒョンヘ・ソウル市立療養院分会長は、「療養病院の構造には、独立した隔離空間がなく、感染者だけを担当する人材の運用も不可能だ」とし、「感染者を病院に移送することも事実上難しい。救急車で運ばれた高齢者が、(受け入れる)病院がなくて数時間後にまた帰ってきたこともある」と述べた。
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「療養病院はシステム崩壊直前」
現場からは、医療システムの崩壊を懸念する状況だという声が出ている。
新型コロナが発生してからの2年間、感染者がいなかった大邱南区の大邱療養病院では、先月18日、医療スタッフから最初の感染者が出た。発生初期は、感染者が出た場合保健当局と協議し、感染症専門病院に移送していたが、累積感染者数が76人に達した現在は、病院が直接感染者を管理している。キム・ヒョンス院長は「感染者が数人の時は専門病院に送って他の患者を保護していたが、今はその臨界点を超えた」とし、「専門病院への移送が無意味なほど病院内の感染者が多くなり、専門病院に行ってきた患者の状態がむしろ良くない場合があり、やむを得ず自ら管理している」と述べた。
大韓療養病院協会のノ・ドンフン広報委員長は、「現在の看護人材は通常より2~3倍長く勤務している。人材があまりに不足しているため、マニュアル作成も難しい」とし、「今の療養病院の医療システムは崩壊直前」だと述べた。翰林大学江南聖心病院のイ・ジェガプ教授(感染内科)は、最近の療養病院・施設などでの集団感染の状況について、「療養保護士が感染しても代わりの人材がいなかったり、患者が発生しても感染症専門療養病院の病床が埋まっているため、患者が病院や施設に残り始めるようになると、事が大きくなる。今は集団で管理するよりも、家で生活できるようにして管理するような代案を用意しなければならない」と述べた。
キム・ギュヒョン、チェ・イェリン、イム・ジェヒ、パク・スヒョク記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )