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韓国国立中央医療院長「医師増員必要…患者のもとを去ったことを恥じるべき」

登録:2024-03-20 08:14 修正:2024-03-20 09:04
[インタビュー]チュ・ヨンス国立中央医療院長
チュ・ヨンス国立中央医療院長が17日、ソウル中区の国立中央医療院で開催された専門医協議会の声明に対する国立中央医療院の立場表明懇談会で発言している/聯合ニュース

 「自らに与えられた(医師免許という)独占的権力を暴力的に行使しているのです。今回の事態が終われば、患者に背を向けたということを、みなが恥じるべきです」

 チュ・ヨンス国立中央医療院長は18日のハンギョレとのインタビューで、専攻医の集団行動と医学部教授の辞職決議を強い口調で批判した。教授たちは教え子の事情を訴える前に、医師として医療現場に背を向けた選択が正当だったのかを振り返るべきだと語った。

「医師免許には権限もあり、社会的義務もある」

 国立中央医療院は韓国の最上位の公共医療機関で、全国35の地方医療院と6つの赤十字病院のコントロールタワーだ。新型コロナウイルス禍ではコロナ患者を積極的に受け入れるなど、感染症遮断の防波堤の役割を果たした。しかし、同医療院の専攻医までもが医学部の定員増員に反発して辞表を提出している。

 チュ院長は、専門医と教授にも広がる診療拒否は「医師として一線を越えている」と指摘した。医学部増員などの政府の政策に反対するにしても、患者のもとを離れずに批判の声をあげるべきだという。「医師免許は患者を治療する独占的権限であると同時に、(患者の健康に対する)責任と社会的義務もある。患者の健康と命を握っておいて利害関係の貫徹のための集団行動を取ることは、このような責任を放棄した行為だ」

 医学部教授の相次ぐ辞職決議に対しては、さらに声を強めた。チュ院長は「社会的にも医師社会の中でも尊敬を受ける教授たちは、専攻医をなだめて戻って来させるべきだ」とし、「特に彼らが所属している上級総合病院などには、そこで治療を受けなければ命を維持できない重症患者がいる。そのような方々を人質に取って集団行動をするのは暴力だ」と批判した。

「年俸2億ウォンでも必須医療の医師を探すのが難しくなって久しい」

 さらに、「医師は不足していない」という大韓医師協会などの医師団体の主張にも積極的に反論した。チュ院長は「事情を知りながら知らないふりをしている」とし、「ソウルの病院も、年俸2億ウォン台でも必須医療の医師を探すのが難しくなって久しい」と語った。「中央医療院でさえ心血管、脳血管、救急医学、画像医学などに空席が多い。別の補完策が伴わなければならないが、医師の供給を増やして収入を安定させる措置なくして、この問題は解決できない」

 同時に、政府の政策の不足を補完する必要性を指摘することも忘れなかった。「公共病院が地域内の2次病院としての役割を確実に果たせるように、これらの数を増やすとともに、各診療科に2人以上の医師を確保することで機能をアップグレードすべきだ」

 政府は先月発表した「必須医療パッケージ」に、国立大学病院の人材や予算などを強化し、地域医療の連係システムの頂点に位置付けるという構想を盛り込んだ。軽症と中等症の患者は地元の医院や病院が、最も重症の患者は国立大学病院が引き受けるというものだ。

 しかし、地域医療の「腰」役を果たす地方医療院などの強化策は抜け落ちている。地域の公共医療に対する果敢な投資が必要だとの指摘は以前から医療団体からなされていたが、これといった方策は示されなかったわけだ。

 チュ院長は、「韓国の医療機関の95%が民間の病院や医院である中、彼らだけに1次、2次医療を任せていては、医療機関が患者の先取り競争を繰り広げる環境を変えるのは難しい」とし、「医療の連係システムにおける公共医療機関の役割を明確に確立すべきだ」と述べた。

 最後にチュ院長は、医師は集団行動をやめ、政府との対話のテーブルにつくべきだと強調した。「政府が打ち出した政策は医療課題の解決策をかなり包括的に提示した水準だ。きちんと整頓された政策として執行されるよう、専門家の力量を発揮することこそ医師の役割だ」

チョン・ホソン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/health/1132833.html韓国語原文入力:2024-03-18 22:06
訳D.K

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