韓国政府が新型コロナウイルス感染症の流行で急減した外国人患者を誘致するため、オンラインビザ(査証)発給を大幅に拡大し、患者とともに入国できる保護者の範囲も広げることにした。韓国国内の医師が画像などを通じて外国人患者を診療できるよう、非対面診療に必要な法改正も行う方針だ。
保健福祉部が29日、関係省庁合同で発表した「外国人患者誘致活性化戦略」によると、政府は新型コロナの流行期間に急減した外国人患者を再び国内に呼び込むため、まずビザ発給の敷居を下げることにした。これにより、外国人患者が海外公館を直接訪問せず、オンラインで電子ビザを申請し発給してもらえる法務部指定の医療観光優秀誘致機関を現在の27カ所から50カ所以上に増やす。重症患者の割合が高い上級総合病院と福祉部認定の誘致機関が申請すれば、審査なしに優秀誘致機関に指定される。海外公館で医療観光ビザなどを取得するためには平均2~3週間かかるが、優秀誘致機関が申請すれば3日以内に電子ビザが発給される。
また、患者とともにビザが発給される介護者や保護者の範囲を、現在の配偶者と直系家族から緊急性に応じて兄弟や姉妹まで広げる方針だ。介護者や保護者の範囲を拡大すれば、患者にとっては海外で治療を受けることが容易になり、韓国を訪れる外国人数が増える効果も期待できる。最近、韓国保健産業振興院が出した「2022年外国人患者韓国医療利用経験および満足度調査の結果報告書」によると、昨年介護者や保護者とともに入国した外国人患者は全体の73.5%で、本人を含めて平均2.6人が韓国を訪れた。政府は今回の戦略で財政能力立証書類の提出義務を免除する計画も打ち出した。
韓国を訪れた外国人患者は、2020年に11万7069人まで減少し、昨年は24万8110人まで増えたが、新型コロナの流行以前の2019年(49万7464人)に比べるとまだ50%の水準だ。政府は今回の戦略を通じて、2027年には1年間で70万人の誘致を目指す。新型コロナの流行が終わったうえに、近年いわゆる「Kカルチャー」と呼ばれる韓国文化経験が外国人の間で大きく拡大した点を積極的に活用する方針だ。実際、韓国保健産業振興院の調査によると、昨年韓国を訪れた外国人患者に「韓国医療の選択に韓国文化経験が影響を与えたのか」という質問に約半数が「影響を受けた」(49.7%)と答えた。前年の調査に比べて25.4ポイント増えた数値だ。
政府は外国人患者を対象にした非対面診療の制度化も推進する。現在は「医療の海外進出及び外国人患者誘致支援に関する法律」(医療海外進出法)により、国内の医師、歯科医師、韓方医が外国人患者対象の事前相談や事後管理を行うためには、現地の海外国外医療関係者が間に入らなければならない。福祉部は医師と患者間の非対面診療を認める医療法改正後、医療海外進出法も改正を推進し、国内の医療関係者と外国人患者間の非対面診療を活性化する計画だ。保健福祉部のチョン・ウニョン保健産業政策局長は「診療費の請求や薬の処方については相手国とも協議が必要だ」とし、「非対面診療の範囲については協議を行い、法改正を進める計画」だと述べた。
また、医療と観光を連携した「ウェルネス・医療観光融合クラスター」を今年仁川(インチョン)や大邱(テグ)・慶尚北道、釜山(プサン)、江原道、全羅北道、忠清北道などに構築する。治療を受けて食事やスパなどを利用する方式だ。Kポップや韓国ドラマなどを活用した広報も進める。韓国保健産業振興院の報告書によると、昨年8~11月の外国人患者1200人のうち49.7%がKポップやドラマ、韓流スターなど韓国文化に接した経験が韓国の医療サービスを選ぶのに影響を与えたと答えた。
診療分野もこれまでの美容中心から重症疾患や漢方薬などに広げるため、広報を拡大していく方針だ。昨年、単一診療科目基準の外国人患者は、美容整形外科(4万6314人)と皮膚科(3万6060人)が最も多く、全体患者の28.1%だった。一方、ここ5年間のがん、希少、心臓、重症難病、脳血管、重症火傷など6つの重症疾患の誘致率は平均8.5%にとどまっている。