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韓国政府、福島原発に視察団派遣…環境団体「汚染水放出の名目づくりを手助け」批判

登録:2023-05-08 06:37 修正:2023-05-08 08:28
大統領室「単に見て回るだけではない」と強調したが 
岸田首相「IAEAの最終報告書を反映し、手続き進める」
1泊2日の日程で韓国を訪れた日本の岸田文雄首相と尹錫悦大統領が7日、ソウル龍山の大統領室庁舎で開かれた韓日首脳会談で握手を交わしている=大統領室写真記者団//ハンギョレ新聞社

 韓国大統領室は、7日に尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領と日本の岸田文雄首相が福島原発汚染水の海洋放出問題に関して「韓国専門家による現場視察団の派遣」に合意したことについて、「単に(現場を)見て回ることを意味するわけではない」と強調した。しかし環境団体などは、視察後に韓国政府が日本政府の汚染水放出過程に実質介入できるレベルの合意が出たわけではないという点を挙げ、政府が福島原発汚染水の放出に向けた日本政府の名目づくりを手助けするものだと批判した。

 尹大統領は同日、韓日首脳会談が終わった直後の記者会見で、韓国専門家による現場視察団の派遣に合意したことを発表し、「科学に基づいた客観的検証が必要という韓国国民の要求を考慮した有意義な措置が取られることを願う」と述べた。岸田首相は「韓国国内で懸念の声があることはよく認識している」とし、「日本の首相として、自国民及び韓国国民の健康や海洋環境に悪影響を与えるような形での放出を認めることはない」と述べた。

 日本政府は2011年の福島第一原発事故以降、事故現場内のタンクに保管してきた高濃度放射性物質が混ざった汚染水を多核種除去設備(ALPS)で浄化処理した後、今夏、福島県沖の海に放出することを目指している。日本政府は浄化処理でも濾過できないトリチウムの濃度が安全基準以下に下がるまで汚染処理水を海水で希釈して排出する方針だが、環境団体は人体にがんを誘発する可能性など、トリチウムの生物学的濃縮などに対する研究が不十分だとして、拙速に放出を進めるべきではないと反対してきた。特に放射能汚染分野の著名な学者である米サウスカロライナ大学のティモシー・ムソー教授は、先月27日、トリチウムと関連した科学文献70万件余りを全数調査した結果、人体に及ぼす影響に対する体系的な研究は皆無だと批判した。

 大統領室はこれと関連して、韓国専門家の現場視察が単なる視察以上のものになると強調した。大統領室関係者は「日本は韓国との特別な関係を考慮し、一対一で別途の視察団を受け入れることにした」とし、「(日本政府が)韓国国民の健康の不安を招くような措置は取らないという意向を明確にしたもの」だと述べた。同関係者は「(視察団に)どのような構成員や科学的手法が採択されるかは議論しなければならないが、国際原子力機関(IAEA)の方法を参考にし、問題になりうる成分を調査できるのではないかと思う」と付け加えた。

 共同通信は、両国首脳の合意により韓国視察団が23日に福島原発を訪問すると報じた。これは、汚染水の海洋放出に関するIAEAの専門家グループの最終報告書が発表される時点(6月目標)に合わせたものとみられる。2021年に国際検証団を構成したIAEAは、6日に放出計画が「十分現実的」だという中間報告書を出すなど、汚染水を希釈して放出した場合、濃度は微々たるものだという日本の主張に友好的な見解を示してきた。日本政府はこのようなIAEAの「国際検証」を世論の盾にしてきた。岸田首相が同日の会見で、IAEAの最終報告書を反映して国内手続きを進めるとし、日韓間で引き続き誠実な意思疎通をしていきたい分野だと述べたのも、IAEAの結論に基づいて海洋放出を進める意思を表わしたものとみられる。

 特にIAEAが汚染水の放出に対して免罪符を与えれば、日本政府が福島産水産物の輸入に対する圧力を再開する可能性があるという批判もある。大統領室関係者はこれに関して「福島原発汚染水の処理問題が当面の課題であるため、両国が先にこの問題に集中することになるのではないかと思う」とし、「この部分が議論される機会があれば、福島原発汚染水と同じ立場でアプローチすることになりそうだ」とだけ述べた。

 環境団体は今回の合意をめぐり、政府が日本の福島原発汚染水の海洋放出にむけた名目づくりに力を貸すことになったと批判した。「脱核市民行動」は同日、「韓日両国首脳は福島原発放射性汚染水の海洋投棄の中止を宣言し、長期保管の解決策を論議すべきだった」とし、「尹大統領は外交的成果のために(日本の)汚染水海洋投棄の名目づくりの共犯に転落した」という声明を出した。グリーンピースのキャンペナー、チャン・マリ氏も「放射性物質がどんな生物学的影響を及ぼすかが最も懸念される部分だが、これに対する言及なしに現場視察をすることは無意味」だと批判した。「エネルギー正義行動」のイ・ホンソク政策委員も「日本政府の汚染水処理に対する名目づくりを韓国政府が手助けしたとしか言いようがない」と語った。

ナム・ジョンヨン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/environment/1090815.html韓国語原文入力:2023-05-08 05:00
訳H.J

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