「会食の時には部長は『酒は女が注ぐべき』と言って、必ず自分のそばに全員女性を座らせた。特に、酒のグラスに紙幣を巻きつけて私に渡したりもした」(通常、風俗店の接客員にする行動)
「課長は会社の同僚と小規模で酒を飲む席で、私に酒を飲む姿が『セクシーだった』とコメントを残した」
「『運転手さん、近くでホテルの多いところに行ってください』C課長がタクシーの運転手にこっそり伝えるのを聞いた」
ソウル職場セクハラ・性暴力予防センターが先月末に発刊した手記集『セクハラのない職場作り』に書かれた、職場内性暴力被害者たちの証言だ。この手記集には、被害者が職場内セクハラ・性暴力被害を受けて退社した事例、被害を申告した後に職を失った事例などが含まれている。計24編の手記のうち半分ほどが会食の席で発生したセクハラ事件を含んでいる。加害者は大半が職位の高い男性だった。
このように、会食の席では性暴力事件が頻繁に発生するものとみられる。4日、韓国女性政策研究院が作成した報告書「ソーシャルビッグデータを利用した組織文化実態探索および政策イシュー発掘」によると、会社員の匿名コミュニティ「ブラインド」の会社生活掲示板に上がった書き込みの、セクハラと関連した文章では「会食」という単語が頻繁に言及されていた。この報告書は、ブラインド利用者が2021年8月1日から昨年8月30日までこの掲示板に会社組織文化について残した2627の書き込みのキーワードを分析した内容を土台にしている。
セクハラに言及した書き込みで最も多く言及された30のキーワードを選定し、使用頻度の順位を付けたところ、「セクハラ」「会社」「職員」「男」「わいせつ行為」「上司」が順に1位から6位を占めた。「事務所」という言葉は17番目に多く使われた。「会食」という言葉も20位にのぼるほど使用頻度が高いことが分かった。
報告書を書いた韓国女性政策研究院性認知データセンターのキム・ウンジョン副研究委員は「『会食』が関連キーワードの上位に登場し、会食の席でのセクハラおよび強制わいせつ行為などが頻繁に発生すると推論される」と述べた。キム副研究委員は続けて「(キーワード間の)意味網を分析した結果、特に『セクハラ』、『上司』、『男』のキーワードが強くつながっており、男性上司によるセクハラが頻繁に発生するものと類推される」と分析した。
業務時間後でも、会社外でも、業務と関連性のある関係および状況で発生したことならば性暴力になりうる。ソウル職場セクハラ・性暴力予防センターは「『職場内セクハラ』だからといって『場所的に職場内で、時間的に業務時間中に』起きたことだけを意味するものではない。会食、ワークショップ、出張、外回りなど、すべて業務との関連性が認められる」とし、「会食の席を移して(二次会、三次会などへと)続いた場合や、一部の人員だけが参加した飲み会の場合、会食後の帰路なども、業務との関連性があると判断する」と説明した。
性暴力被害者たちにとっては、会食の席に一緒にいた同僚が加害状況を目撃しても暗黙のうちに同調する姿勢が2次被害となる。「イエローアップル」というペンネームで手記を書いたAさんは、会食の時に酒に酔った部長が「娘のようだから一度抱きしめさせて」といって身体接触をしたことに言及し「その日私と部長の周りを取り囲んでいた人々の表情と姿勢が思い浮かぶ。彼らは部長のそのような態度に拍手し、共感する表情をしていた」とした。そして「その瞬間には、何も抵抗できなかった」と述べた。
しかしセンターは、被害当時に拒否の意思を表現できなくても、職場内の性暴力として申告できると説明する。「拒否の意思は職場内セクハラの判断基準ではない。職場内セクハラは職位の高い人が職位の低い人にするケースが大半なので、拒否の意思を表現するのが非常に難しいのが現実」だとし、「拒否の意思を表現したかどうかは、職場内セクハラの判断基準ではない」と述べた。
そして重要なのは「記録」だと言う。すぐに問題を提起できなくても、5W1Hの原則に従って、誰が、どんな行為をし、どんな感情を感じたのかを詳しく書きとめておくことが役に立つというのがセンターの説明だ。