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尹大統領の「外交エンディング」…米大統領への暴言から日本首相を“訪ねる”会談まで

登録:2022-09-26 06:30 修正:2022-09-26 07:58
[ハンギョレ21] 
英国女王への拝礼の取り消し、30分の韓日懇談、48秒の韓米対面 
大統領室の混沌の外交プロトコール…拙速な意欲、ブーメランとして戻ってくる
尹錫悦大統領と米国のジョー・バイデン大統領が9月21日(現地時間)、米国ニューヨークのビルで開かれたグローバルファンド第7次増資会合を終えた後、話を交わしている//ハンギョレ新聞社

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は、2回目の海外歴訪でも「準備されていない」外交力をそのまま示した。エリザベス女王の弔問に行った英国ロンドンでは弔問できず、「快く合意した」という韓日首脳会談は、尹大統領が岸田文雄首相のいる会場を訪れ、非公開で行われた。米国ニューヨークで面会した米国のジョー・バイデン大統領との話は「48秒」で終わった。48秒は、米国における韓国の電気自動車(EV)への補助金差別問題などを議論するにはまったく足りない時間だ。

#英国 ロンドン

 2022年9月18日(現地時間)午後3時30分、尹大統領と夫人のキム・ゴンヒ女史、英国スタンステッド空港に到着

 18日午後6時、エリザベス女王への拝礼は「交通事情」のために行くことができず、チャールズ国王主催のレセプションに参加(1時間進行)

 19日午前11時、ウェストミンスター寺院で開かれたエリザベス女王の葬儀に参加後、弔意を記帳

#米国 ニューヨーク

 9月19日午後8時30分、尹大統領とキム女史、米国ニューヨークのJFK空港に到着

 20日午後12時20分、尹大統領、国連総会の会場に入場し、12時51分から11分間、「北朝鮮への言及なし」の演説

 20日午後3時45分、アントニオ・グテーレス国連事務総長と面談

 21日午後12時23分、尹大統領、日本の岸田文雄首相がいる会場を訪れ30分間の略式会談

 21日午後2時20分、ドイツのオラフ・ショルツ首相と首脳会談

 21日午後5時15分、尹大統領、予定になかった「グローバルファンド第7回財政公約会議」に参加し、米国のジョー・バイデン大統領と48秒間対話

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英国の最初のスケジュールから不確実性の連続

 尹大統領の歴訪日程をみると、いわゆる外交の「プロトコール」(外交用語で約束や規律、儀典)が混沌に陥っていることがわかる。まず、ロンドンに到着した最初のスケジュールから不確実だった。尹大統領は、英国に向かう大統領専用機の中で「朝鮮戦争に参戦した勇士に献花しにいき、その次に(女王への)追悼、その次にレセプションの3つだが、3つすべてをできるかどうかは正確には分からない」と述べた。エリザベス女王の棺が安置されたウェストミンスターホールを訪問し拝礼する計画が可能かどうか分からないまま、ロンドンに到着したということだ。結局、大統領室は「ロンドン現地の交通問題のため、拝礼できなかった」と明らかにした。野党「共に民主党」は、専用機の出発時間を早めるべきだった、尹大統領が歩いてでもできる「弔問外交」をしなかったと非難した。

 ニューヨークでも尹大統領の動向は、プロトコールが正常に進められなかった。これに先立ち9月15日、大統領室のキム・テヒョ国家安全保障室第1次長は「(海外歴訪期間中に)韓米首脳会談と韓日首脳会談を行うことで合意しており、時間を調整中だ」と発表した。しかし、首脳会談はまともには行われなかった。尹大統領は9月21日、日本の岸田文雄首相が参加する「包括的核実験禁止条約フレンズ首脳級会合」の会場がある建物を訪れ、両国の国旗も取材陣もなしに非公開で会談した。大統領室は、会談の結果について「韓日間の対立が存在するなか、解決のための第一歩を踏んだという意味がある」と意味づけた。しかし、懸案の中心である強制動員被害者賠償問題などへの言及はなかった。日本は尹大統領との面談を首脳会談ではなく「非公式の懇談」と表現した。

 尹大統領は続いてこの日午後、バイデン大統領が主催したイベントを訪れた。イベントが終わった後、各国首脳らが団体写真を撮り自由に話しあうなか、バイデン大統領を探し、48秒間の対話を交わした。バイデン大統領がニューヨークの滞在日程を減らしたため、短い「対面」をすることで終わったのだ。尹大統領が会場を出て、同行していたパク・チン外交部長官とキム・ソンハン安全保障室長のほうをみて、「国会でこのXX(野郎ども)が承認しなければ、バイデンは赤っ恥をかくだろうな」と話す場面が放送局のカメラに撮られ、悪口・卑俗語の議論も起きた。これについてキム・ウンヘ広報首席は、15時間後の22日午前(現地時間)に会見を開き、尹大統領の発言は「国会でこのXXが承認しなければ、バイデンは赤っ恥をかくだろうな」ではなく、「(韓国の)国会でこのXXが承認ぜず棒に振れば(反対すれば)、赤っ恥をかくだろうな」だと反論した。野党「共に民主党」に対して語ったものだという趣旨だ。

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基本から崩れた外交

 外交安全保障の専門家らは、これについて「外交の基本から崩れた状況」だと述べた。首脳会談は、第三国で行われる場合でも会談を行う主催国があり、両国を象徴する国旗を置いて進行する。会談に先立ち、挨拶の発言を公開し両国の同席者を同じ人数に合わせるなど形式を整えるのは、「国家」対「国家」という対等な関係のもと首脳間で話を交わすという意味も含まれている。

 今回の韓日首脳の面会は、事前予告なしに尹大統領が岸田首相を訪ねる形式で進められた。国旗もない場所で非公開で行われた。文在寅(ムン・ジェイン)政権で仕事をしたある外交関連担当者は「プロトコールは外交では本当に重要で、形式と過程が(会談の)内容にまで影響を及ぼす。あのようにしてしまうと、基本的に強者と弱者になってしまう」と述べた。

尹錫悦大統領が2022年9月21日(現地時間)、日本の岸田文雄首相がいる米国ニューヨークの建物に会いに訪れ、握手を交わしている/聯合ニュース

 今回の英国・米国・カナダ訪問は、大統領室を改編した後、尹大統領が披露した初の外交舞台だった。特に、キム・テヒョ第1次長は、両国が同時に発表する慣例を壊し、先に韓日・韓米首脳会談の開催を公式発表する“意欲”をみせた。尹大統領も歴訪出発前、ニューヨークタイムズのインタビューで「大妥協」を口にして、韓国と日本の外交問題の解決に言及した。しかし、拙速な意欲はブーメランとして戻ってきた。日本は、韓国政府が外交慣例を壊したことに不快感を示し、首脳会談のスケジュールを最後まで発表しなかった。これに対し、首脳会談に先に言及した韓国は、日本側に引きずられていかざるをえない状況に置かれた。

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外交の司令塔の総体的不良

 延世大学統一研究院のキム・ジョンデ客員教授は「日本の首相は今回の国連演説で、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長に条件なしに会うという提案をしたにもかかわらず、韓国との関係改善には一言も触れなかった。尹錫悦政権は屈辱感を感じなければならないのが正常であり、外交の司令塔の問題点が深刻であることを示した」と述べた。

 EVの補助金差別や通貨スワップなど、韓米間の懸案を首脳会談で解決するという尹錫悦政権の構想もあてが外れた。ホワイトハウスは報道資料を出し、「両指導者は韓米同盟を強化した」と明らかにしたが、EVの補助金などには言及しなかった。共に民主党のパク・ホングン院内代表はこの日、「首脳外交の目的も成果もまったくない国際的な恥さらしであり、外交惨事には必ず責任を負わなければならない。外交実務者の全面的交替は不可避とみられる」と述べた。

 9月22日に公開された世論調査(9月19~21日に全国満18歳以上の男女1000人を対象に実施の全国指標調査、信頼水準95%標本誤差±3.1ポイント)の結果によると、尹大統領の海外歴訪の成果について、「成果なし」という回答は55%にのぼった。「成果あり」という回答は40%だった。尹大統領が「外交的ショー」を通じて懸案の解決と低支持率に対する突破口を用意する可能性はほとんどないように思われる。

イ・ワン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/bluehouse/1059993.html韓国語原文入力:2022-09-25 18:08
訳M.S

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