22日朝から韓国のニュースは、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の暴言騒ぎで埋め尽くされた。 23日まで全国民が大統領の口から突然飛び出した低俗な言葉を繰り返し耳にせざるを得なかった。特定の単語をめぐっては様々なところで議論が続いた。この恥ずかしい状況で私たちが注目するのは、大統領や大統領室が国民に公式謝罪をしなかったという事実だ。ありふれた「遺憾表明」さえ出していない。
大統領室は、尹大統領の発言の波紋が広がってから15時間が経ってようやく発言そのものに対する釈明というものを出した。ところが、その内容は不自然極まりないものだった。キム・ウンヘ広報首席秘書官は「大統領の発言が実際とは違う形で伝えられた」とし、「発言をつぎはぎし歪曲することで揚げ足を取った」とし、マスコミと野党のせいにした。そして発言に登場する単語が米国大統領の名前の「バイデンが」ではなく、「棒に振れば(反対すれば)」であると強弁し、「もう一度聞いてみてほしい」と述べた。「国民聴力試験」と言われるほど、聞く人によって違って聞こえる特定の単語をめぐる議論にすり替えたのだ。キム首席秘書官は、大統領が低俗な言葉を使ったことについては一言も言及しなかった。典型的なフレーム切り替えだ。
大統領が口にした特定の単語が何なのかは副次的問題だ。韓国と全国民を代表して外交舞台に立った大統領が、道端の喧嘩で使われるような暴言と低俗な言葉を平気で使い、国民を驚かせた。 さらに、発言内容が米国現地のマスコミを通じて知られ、波紋が米政界にまで広がっている。実際、尹大統領の暴言はこれが初めてではない。テレグラムのメッセージに残した「内部に銃を向けていた党代表」は上品な方だ。大統領選挙の過程で当時、政府や相手候補陣営に向かって「無知な三流バカ」「狂った人々」「重犯罪者」のような言葉を何の躊躇いもなく使ったが、謝罪したことはない。
百歩譲ってキム首席の説明が事実だとしても、尹大統領は民主党に向かって暴言を吐いたことになる。キム首席は前日の騒ぎで「大韓民国は同盟国を嘲弄する国に転落した」と述べたが、同盟国関係は心配しているのに、野党を「この××(野郎ども)」と呼ぶ大統領の認識は何の問題もないというのか。暴言の余波がまだ消えていない状況で、尹大統領は「大韓民国国会の積極的な協力を期待する」というメッセージを載せた。暴言を浴びせておいて、いきなり態度を変えて「頑張ろう」と握手を求める格好だ。これでは協治と対話ができるはずがない。国民に、そして野党に謝罪するのが先だ。