「(日本の加害企業の韓国内資産の)『現金化は韓日関係の破綻を意味する』という言説は、被害者を脅してあきらめろと言っているに過ぎない」
日本政府を相手にした戦後補償裁判で被害者側の代理人として長い間活動してきた山本晴太弁護士(69)は、先月26日と28日、二度にわたる本紙との電子メールインタビューで、このように語った。山本弁護士は2018年10月、韓国最高裁(大法院)の強制動員被害者賠償判決以後、日本で非難世論が起きたことを受け、判決の正当性と歴史性を法律的に分析した本(『徴用工裁判と日韓請求権協定: 韓国大法院判決を読み解く』)を同僚の弁護士らと共に書いた。以下は山本弁護士との一問一答。
-戦後補償問題に関心を持つようになったきっかけは?
「九州大学の日本史専攻の学生だった時に、原爆症の治療のために日本に密航してきた孫振斗(ソン・ジンドゥ)さんの支援運動(1972年)に参加した。強制動員に対する損害賠償を初めて日本国に要求した(在日コリアンの)金鐘甲(キム・ジョンガプ)さんの日本国籍確認訴訟(1975年)の支援もした。これらの裁判が戦後補償裁判の始まりであるということは、ずっと後にになって気づいた。その後、京都の宋斗会(ソン・ドゥフェ)さんと知り合い、司法修習生のころから(浮島丸事件など)宋さんが計画した戦後補償裁判の準備に関わるようになった。特別なきっかけがあったというより、『戦後補償』という言葉も知らないうちに、気づいてみれば、その真っただ中にいたという状況だ」
-戦後補償の専門家として2018年10月の韓国最高裁の強制動員賠償判決をどうみるか。
「請求権協定には不法行為の賠償は含まないという韓国最高裁判決の多数意見は、国際的にはむしろ『オーソドックスな判断』だ。日本で国と論争しながら裁判を進めてきた立場からは、日韓請求権協定による解決は外交保護権の放棄に過ぎず、個人の請求権は消滅していないという(韓国最高裁の)少数意見にも親近感がある。被害者個人の請求権が存在するとしても、サンフランシスコ平和条約、日中共同声明、日韓請求権協定により裁判で請求できなくなったという日本の裁判所の判断こそ、非常に特異で、国際法に反する解釈だと思う」
-日本政府は韓国最高裁判決履行のための加害企業と被害者間の接触さえ遮断している。一方、中国側の強制動員被害者に対しては日本政府黙認のもと、加害企業が謝罪し賠償にも参加したが。
「日本企業と中国被害者の和解について日本政府が黙認したのは、主に経済的理由のからだろう。これは明らかな二重基準だ」
-最高裁判決履行のために加害企業の韓国内資産売却を通じた現金化に対する最終判決を控えている。 日本と韓国政府は「現金化は韓日関係破綻を意味する」という。望ましい解決策は何だろうか。
「『現金化は韓日関係の破綻を意味する』という言説は日本にも韓国にも、そして両国の市民社会にも存在するが、意味がわからない。そもそも『破綻』とは何なのだろうか?ロシアとウクライナのような状態なのか?現金化が実行されたら自衛隊が独島に上陸したり、ソウルをミサイル攻撃する可能性があると本気で思っている人がいるだろうか?逆に、韓国大使が日本の首相に面会もできない現状は友好国の通常の関係から見れば、すでに『破綻』しているとも言える。結局『破綻……』の言説は『これ以上やると大変なことになるぞ』と被害者を脅して、『もういい加減にあきらめろ』と言っているに過ぎない。
日本政府や企業が謝罪も拒否したまま、韓国政府が『破綻を回避するために』という発想で始める『解決策』は必ず失敗する。日本側に謝罪の意思がなく、韓国政府にも被害者中心主義の原則によって解決する意思がないなら、粛々と法的手続(現金化)を進めるしかないのではと思う」