韓国外交部が被害者側と事前協議もなしに最高裁(大法院)に意見書を提出したことで、強制動員被害者賠償問題の解決策を設けるために先月発足した官民協議会は、不完全体での運営が避けられなくなった。原告人団が直ちに「訴訟妨害行為」として強く反発したうえに、これまで官民協議会に参加してきた支援団体側も、参加拒否を宣言する方向に意見をまとめたためだ。なまじ成果に執着し、政府が再び被害者中心主義の原則を破る愚を犯したという指摘が出ている。
2日、強制動員被害者および支援団体側の説明を総合すると、外交部は先月26日、三菱重工業の強制労働被害者ヤン・クムドクさん、キム・ソンジュさんに対する商標権・特許権特別現金化(売却)命令事件を審理中の最高裁民事2部と3部に、解決策作りのために多角的に外交的努力を傾けているという内容を骨子とした意見書をそれぞれ提出した。事実上、最終判断を先送りしてほしいという内容だ。被害者側には何の事前説明もなかった。その後、外交部当局者が先月28日に光州を訪問し、社団法人日帝強制動員市民の会と被害者訴訟代理人団に会い、意見書を提出した事実を明らかにした。
被害者支援団体の関係者は「外交部側はこの日、『(2018年の最高裁強制徴用賠償判決後)日本政府が2019年に輸出規制措置を取ったが、今回現金化がなされれば、また報復措置を取るだろう』と説得した」と伝えた。これに対し、訴訟代理人団は「今回のことは訴訟妨害に準ずる厳重な問題」とし、強く反発したという。
外交部が最高裁に意見書を提出した根拠は、国や地方自治体が公益と関連した事項に対しては、民事事件にも意見を出すことができるよう規定した民事訴訟規則第134条の2だ。この条項は朴槿恵(パク・クネ)政権で司法壟断騒ぎの中心人物だったヤン・スンテ元最高裁長官の主導で作られたもので、規則改正当時から「強制動員訴訟に合わせて作られた」として批判された。
実際、外交部は2016年11月、強制徴用被害者訴訟と関連して「(加害戦犯企業の賠償責任を認めれば)韓日関係が破局に突き進む」などの内容が書かれた意見書を最高裁に提出した。
被害者代理人団側は先月4日、官民協議会の1回目の会議に先立ち、日本の加害企業と被害者間の直接交渉を成功させるために外交的保護努力を尽くすならば、交渉期間中に現金化手続きを遅らせることができると提案したことがある。外交部に「退路」を開いたといえる。にもかかわらず、外交部が協議会レベルの事前議論もなしに突然意見書を提出したのは、最高裁判決を遅らせることが現金化を防ぐ「最も確実な方法」と判断したためとみられる。この過程で被害者側の立場を排除したことで、「仲裁者」としての信頼性を自ら崩したという評価が出ている。
官民協議会は2回の会議を経て、事実上破局を迎えた。これまで協議会に参加してきた被害者支援団体の関係者は、「司法壟断問題の時に提出した意見書に対しても最後まで反省しなかった外交部が、約6年を経てまた同じ愚を犯している」と述べた。