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南北の「平和の駆け引き」から不動産の竹箆まで…文在寅政権5年の裏話

登録:2022-04-15 02:56 修正:2022-04-15 10:03
文在寅大統領と金正恩国務委員長が2018年9月19日夜、平壌の5・1競技場で行われた南北首脳会談慶祝大集団体操と芸術公演「輝く祖国」に入場後、手を上げてあいさつしている=平壌写真共同取材団//ハンギョレ新聞社

 「(綾羅島(ルンナド)の)演説形式も、最初は競技場に来た平壌市民の前で簡単にあいさつだけしてほしいというのが北朝鮮の趣旨でしたが、私たちが生放送もして正式なものにしようと逆提案しました。今度はむしろ北朝鮮が少し困惑しているようでした」(ユン・ゴニョン元大統領府国政状況室長)

 「9月13日から14日へと日がかわった午前3時頃だったと思います。軍事合意の文書は30枚を超えるのですが、夜中の2時頃に北朝鮮側が『最初に戻りましょう』と言うんです。それで私たちは『最後まで押してみて、だめなら撤退しよう』と言ったことすらあります。しかし、北朝鮮側は何か言われたのか、互いの争点の大半を受け入れると立場を変えたんです。『北朝鮮側の決断があったんだな』という気がしました」(チェ・ジョンゴン元大統領府平和軍備統制秘書官)

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領の北朝鮮訪問と綾羅島5・1競技場での演説、銃を突き付け合っていた非武装地帯(DMZ)の監視警戒所(GP)の撤去など、緊迫したものの短かった朝鮮半島の冷戦の「春」。その後日談などを記した本が出版された。大統領秘書室が大統領府で働いた前職・現職関係者13人を含む計41人のインタビューを公開した『偉大な国民の国』だ。

南北間の平和の「駆け引き」

 同書で、ユン・ゴニョン元大統領府国政状況室長(共に民主党国会議員)は、綾羅島演説を生み出した交渉の前後の過程を初めて公開した。ユン議員は「実は、その予定自体について非常に悩んだ」とし、「演説は北朝鮮が誇る『輝く祖国』という集団劇の観覧前に行うものだった。北朝鮮が体制宣伝の場とする公演であり、国内的には敏感になる部分もありうるからだ」と述べた。同氏は「むしろ大統領が大胆に行こうとおっしゃった」と当時を回想した。「『我々の方がはるかに進んでいて自信があるのに、守勢的にアプローチする必要があるのか』との趣旨」から文大統領は述べたというのだ。ユン議員は「そのように交渉に臨んだら、敏感になりうる内容はすべて修正すると北朝鮮の方から言ってきて、紆余曲折の末に日程を確定することができた」と述べた。

 チェ・ジョンゴン元大統領府軍備統制秘書官(外交部次官)は9・19軍事合意に至るまでの交渉の「駆け引き」の過程を語った。チェ次官は「北朝鮮側が言ったことの一つが『このまま平壌に戻れば、私は降伏分子になってしまいます』だった。それだけ北朝鮮も内部合意を導き出すのに苦労したようだ」とし、「北朝鮮も最高指導者の意志が重要だが、どれほどその意志を軍内部の協議を通じて数字で実現するかは別問題だった」と振り返った。

「不動産、厳しい鞭で打たれた」

 『偉大な国民の国』は不動産政策に対する自省も記している。「鞭で打たれた」、「政策の結果は期待に満たなかった」とし、「大統領は国政の最終責任者として数回にわたって国民に謝罪した」と記録した。さらに、「不動産市場を襲った購入ブームを沈静化させることができず、青年世代は急騰する市場を見て、なけなしの金をかき集めて購入するか、挫折を繰り返さなければならなかった」とし、「骨身の痛む時間をありのまま整理し、切迫した民生課題を完遂できなかった申し訳なさをそっくりそのまま記録しようと思う」とし、「反省文」を記した。

 文大統領の任期中に推進した民間登録賃貸事業者制度については、節税の手段と認識されたため、売却物件不足や住宅価格上昇の原因と指摘され、「政策の一貫性が足りない、国民の信頼を損なうという批判に直面した」と記録した。尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が見直すとしている「賃貸借3法」については、「賃借人の住居を安定化させるために果敢に制度導入を進めた」とし、「制度導入初期には一部混乱が発生したが、依然として制度実施初期であるだけに、補完の継続の必要性も検討していく必要がある」と擁護した。

 特に大統領府は、ピョン・チャンフム前国土交通部長官のインタビューを通じて、不動産政策に対する信頼を失ったことが痛恨だったと述べた。ピョン前長官は、「住宅政策の信頼回復が重要だったが、結局は私や国土部、そして私がトップを務めた機関(LH)によって、国民からの信頼がむしろ低下したのではないかという残念な気持ちが大きい」と述べた。続いて「実際のところ、2・4対策発表初期の価格の趨勢からみれば、早くから効果が出て住宅市場が安定化する可能性があったのに、LH問題や補欠選挙の結果、約9カ月にわたり市場が混乱した」と述べ、政策の信頼性の低下を悔やんだ。

 ピョン前長官はまた、「住宅供給量が多かったとしても、多くの人は(郊外の)新都市よりも既成の市街地で供給されることを望み、また供給されたとしても、安価な価格で自分に購入の機会が与えられることを望んでいるが、このような部分で細心の配慮が足りなかった」と述べた。

『偉大な国民の国』の表紙=ハンスメディア提供//ハンギョレ新聞社

「現場が見られないなら、せめてニュースを見て」

 このほか、新型コロナウイルス禍初期のマスク不足の際の、文大統領のもどかしい心境も本書には記されている。文大統領は非公開会議で、「本当に腹が立ち癪に障りますよ。いつまでこんな風にマスク一つ解決できないで、根拠がどうだとか、そんなことばかり言っているんですか」と叱責した。そして、「ニュースを見ていませんでしたよね。現場が見られないのなら、せめてニュースを見てください」と民意を読み取るよう参謀たちに強調した。

 文大統領の叱責を受け、ノ・ヨンミン秘書室長はキム・サンジョ政策室長らを呼んで、1日に2000万枚のマスクを供給する「紅海プロジェクト」を始動した。大統領府は「出エジプト級の奇跡が必要だとの切迫感」からこのように名づけ、マスク全面戦に突入したと述べた。

 文大統領の外国訪問に関する話も掲載されている。大韓商工会議所のパク・ヨンマン前会長は、「(大統領が企業家を)『引き連れて歩いている』という表現は話にならない。今は大統領が来いと言えば来る、行けと言えば行く世の中ではない」とし、「もはや大手企業の会長たちは思い通りには動かない」と述べた。パク前会長は、「私は前の政権でも大統領と多く外国を訪問しているが、まともな観光はしたことがない。大統領は忙しい人々を連れて遊びに行っているのではない」と首を振った。

 そして文大統領の外国訪問に同行した経験について、「前の政権と異なる変化と言えば、あまり権威ぶらなくなった」とし、「昔は、大統領が通り過ぎれば皆が凍りついた。最近は気軽に写真を撮ったりもするし、自由になった」と語った。

イ・ワン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/bluehouse/1039031.html韓国語原文入力:2022-04-14 21:36
訳D.K

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