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北朝鮮、マッハ5以上「極超音速ミサイル」発射実験の成功を誇示

登録:2022-01-07 05:33 修正:2022-01-07 08:08
韓国軍当局「正確度低く、射程距離短いため発射実験の成功とは言えない」 
金総書記不在の中の発射実験で「対米武力示威」とは一線画す
北朝鮮の国防科学院が「5日に極超音速ミサイルの発射実験を実施」し、「党中央は発射実験の結果に大きな満足を示した」と労働新聞が6日付で報じた。金正恩労働党総書記兼国務委員長は現場に姿を現さなかった/朝鮮中央通信・聯合ニュース

 北朝鮮が今月5日に東海上に発射した弾道ミサイルは、速度がマッハ5以上の極超音速ミサイルだということが明らかになった。北朝鮮が極超音速ミサイルの発射実験に乗り出したのは、昨年9月28日の「火星8型」に続き二度目だ。北朝鮮は「国防力の強化基調によるもの」だと説明しているが、高度化した兵器実験が朝鮮半島の緊張を高めるという懸念の声もあがっている。

 北朝鮮の「労働新聞」は6日、「国防科学院が極超音速ミサイルの発射実験を行った」とし、「党中央は発射実験の結果に大きな満足を示した」と報道した。さらに「発射後に分離し、極超音速滑空飛行戦闘部の飛行区間で、初期発射方位角から目標方位角へ120キロメートルを側面機動し、700キロメートル先に設定された標的に誤差なく命中した」と明らかにした。「労働新聞」は正確な速度は明らかにしなかったが、韓国軍当局は前日発射した極超音速ミサイルの速度をマッハ5以上と推定している。極超音速ミサイルの基本要件はマッハ5以上であり、基本要件は満たしている。昨年9月に試験発射した「火星8型」は速度がマッハ3前後とされた。また、「火星8型」の弾頭部はシャープなグライダーの形をしているが、今回は円錐形だ。前回の発射実験で極超音速の速度が出なかったことを受け、弾頭部の形を円錐に変え、マッハ5以上の速度を出そうとしたものとみられる。約3カ月で改良または新機種を開発したと推定される。

 極超音速ミサイルは弾道ミサイルと巡航ミサイルの長所を兼ね備えており、探知と迎撃が不可能なほどの速度の先端兵器だ。未来の戦場に大きな変化をもたらす「ゲームチェンジャー」と評されるのもそのためだ。ただし、北朝鮮は前日、極超音速ミサイルが700キロメートル先の標的に誤差なく命中したと主張したが、韓米情報当局が把握した射程距離はこれより短いという。極超音速ミサイルが標的まで進めず、途中で墜落したか、何らかの異常が発生した可能性があるとみているのだ。軍当局は、極超音速ミサイルは速い速度による機動性と正確度が合わさってこそ威力を発揮するため、今回の発射実験を慎重かつ総合的に分析する必要があるとみている。合同参謀本部のキム・ジュンラク報道室長が前日に続き6日の国防部の定例ブリーフィングで「北朝鮮が発射した弾道ミサイルの諸元と特性について精密分析中」とだけ明らかにしたのも、こうした背景からだ。

 前日の発射実験を「完全な」成功とみなすのは難しいとしても、北朝鮮の極超音速ミサイル開発能力が高まったのは事実だ。北朝鮮の国防科学院は「発射実験でミサイルの能動区間の飛行操縦性と安全性を再確証」し、「分離した極超音速滑空飛行戦闘部に新たに導入された側面機動技術の遂行能力を評価した」と、「労働新聞」は報じた。さらに「発射実験を通じて、多階段滑空跳躍飛行と強い側面機動を結合した極超音速滑空飛行戦闘部の操縦性と安定性がはっきりと示された」と明らかにした。要するに、極超音速の滑空体が上下と左右に飛行して目標に到達したという話だ。「労働新聞」に掲載された発射写真を見る限り、今回発射実験が行われたミサイルは昨年9月28日に初めて発射されたミサイルよりも、昨年10月11日に行われた労働党創建76周年記念行事として開かれた国防発展展覧会「自衛-2021」で公開された「新型機動式再突入体(MARV)」の形に似ている。この形状は、胴体の上下左右に翼をつけ、最後の飛行段階で方向を上下左右に変えることで、ミサイル防御システムを撹乱することができる。

 「労働新聞」は「極超音速ミサイル部門における相次ぐ発射実験の成功は、(労働)党第8回大会が提示した国家戦略武力の現代化課業を加速化し、5カ年計画の戦略兵器部門の最優先課業のうち、最も重要な核心課業を果たすという戦略的意義を持つ」と解説した。昨年1月に発表した「国防科学発展および兵器体系5カ年計画」による追加発射であり、「情勢対応型対韓・対米武力示威」ではないことを強調したものとみられる。韓米の変化を圧迫する布石ともいえる。金正恩(キム・ジョンウン)総書記は、昨年9月の発射実験に続き、今回も現場に姿を現さなかった。

 しかし、北朝鮮が文在寅(ムン・ジェイン)政権の終戦宣言提案などの対話努力には反応を示さず、相次いで高度化した兵器の発射実験を行うのは情勢の安定に役立たないという批判もある。韓国政府は前日、国家安全保障会議(NSC)常任委員会緊急会議を開き、北朝鮮が敏感に反応する単語「挑発」ではなく、「懸念表明」のメッセージを出し、文在寅大統領は江原道高城(コソン)で開かれた江陵(カンヌン)~猪津(チェジン)鉄道着工式に出席し、「こうした状況を根本的に克服するために対話を諦めてはならない」と述べた。ソ・フン大統領府国家安保室長によって同日午後開かれた国家安全保障会議の常任委員会会議で、北朝鮮の極超音速ミサイルに対する言及はなかった。統一部は同日、「北朝鮮の発射意図をある一方向には断定していない」と述べた。統一部当局者は同日、記者団に「北朝鮮の報道された立場と様々な行動、関連する部処及び国際社会の評価などを基に総合的に判断していく」とし、このように答えた。

イ・ジェフン先任記者、クォン・ヒョクチョル記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/1026337.html韓国語原文入力:2022-01-07 02:32
訳H.J

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