中国が今年8月、核弾頭搭載が可能な極超音速ミサイルの発射実験を実施したという。激化する米中対立の中で、両国の競争が戦略兵器分野にまで広がっている。
英国のフィナンシャル・タイムズ紙は17日、複数の消息筋の話を引用し、「中国軍が最近弾道ミサイルより低い軌道を飛行して目標物を打撃する『極超音速滑空体(HGV)』の発射実験を行った」とし、「ミサイルは目標地点から20マイル(約32キロ)離れところに落ちたが、これまで把握していたものより技術的にかなりの進展を見せ、米情報当局を驚かせた」と報じた。ある消息筋は同紙に「中国がどうやってこれほど進んだ能力を備えたのか分からない」と述べた。
同紙は「中国軍が発射実験を行ったのは今年8月で、『長征』ロケットに搭載されて打ち上げられた」とし、「中国側は通常、『長征』ロケット発射の事実を公表するが、8月の発射実験は公開しなかった」と報道した。また「国営の中国航天科技集団傘下の中国航天空気動力技術研究院(CAAA)が極超音速兵器システムの開発を主導している」と付け加えた。同研究院は2018年8月3日、「極超音速飛行体(星空2)が『長征』ロケットに搭載され、予定高度まで上昇した後、高度30キロ上空でマッハ5.5~6の速度で6分以上飛行した」と発表した。
極超音速滑空体はロケットに装着して大気圏外の高い高度に発射され、ロケットから分離して大気圏に再進入した後、進行方向を変えながら約30~70キロメートルの高度でマッハ5(時速6120キロメートル)以上の極超音速で滑空する兵器システムだ。弾道ミサイルのように「発射-上昇-中間-下降」といった固定の放物線の軌跡を描かないため、飛行経路の予測が難しく、現存するミサイル防衛システムでは迎撃が事実上不可能だ。戦争の勢力図を変える「ゲームチェンジャー」と呼ばれるのもこのためだ。
中国は2014年1月9日、山西省太原の衛星打ち上げセンターで初めて極超音速滑空体の発射実験を実施した。当時、これを探知した米情報当局は、衛星発射センターがある地域(五寨)の名前を取って「ウ(WU)14」と名付けた。中国側が2019年に建国70周年記念軍事パレード初めて公開した「東風17号」開発の始まりだ。
米戦略国際問題研究所(CSIS)はミサイル脅威関連資料集で「中国は2014年1月から2017年11月まで少なくとも9回にわたって『東風17号』の発射実験を実施した」とし、「特に2015年6月7日と8月19日にそれぞれ実施した4回目と5回目の発射実験の際は、ミサイル防衛システムを避けるための機動能力に重点を置いたことが確認された」と明らかにした。
フィナンシャル・タイムズ紙は中国核兵器専門家でマサチューセッツ工科大(MIT)教授のテイラー・フラベル氏の話を引用し、「極超音速滑降体は弾道ミサイルより相対的に低い軌跡を飛行し、飛行中の移動経路を変えることもできるため、探知追跡による迎撃がもっと難しい」とし、「中国が核弾頭を装着した極超音速滑空体を保有するなら、弾道ミサイル迎撃用に開発された米国のミサイル防衛網を無力化させることができる」と報じた。
中国は今年に入り、核兵器関連投資を前年比4倍まで増やし、新疆、甘粛、内モンゴルなどで弾道ミサイル用格納庫(サイロ)の追加建設に乗り出すなど、核武装能力の強化に拍車をかけている。米国とロシアは2010年に締結した新戦略兵器削減条約(新START)により、実戦配備核弾頭を1550基以下に制限しているが、中国には核軍縮義務がない。中国側が極超音速ミサイル分野でかなりの進展を見せたことで、米国内でも中国に対抗した核兵器の現代化を主張する声が高まるものとみられる。ややもすると、米中両国間の戦略兵器競争に広がるのではないかという懸念の声もあがっている。ジョー・バイデン政権は来年初めの完成を目標に、今年7月から「核態勢の見直し(NPR)」を作成している。