産業用尿素水を自動車用へと転換して使用することを検討している韓国政府は、早ければ15日にその結果を発表する計画だ。中国の輸出制限によって引き起こされた「尿素水供給不足」の根本的な対策ではないものの、物流難へと拡大して日常生活が脅かされるのを防ぐための緊急措置だ。ここでは、解決の糸口を見出せずにいる尿素水品薄の疑問点を解説する。
Q.なぜ品薄問題が発生したのか。
A.韓国は尿素水の原料である尿素のほとんどを中国から輸入してきた。世界最大の尿素生産国であり輸出国でもある中国は、毎年500万トンの尿素を世界市場に供給している。ところが中国は先月11日、自国内の肥料供給への支障を理由として、尿素に対する輸出前検査を義務付けた。尿素は農業用化学肥料の最重要原料だが、9月初めまでは1トン当たり2500元を下回っていた尿素価格が急騰し、先月末にはほぼ3500元になった。2カ月あまりで尿素価格が1.4倍ほどに高騰したことになる。中国の政治指導部の最重要の存立基盤が農民や農民の家族であることを考えると、肥料の供給と価格に対する不安は中国政府としては避けなければならない。結局、冬の小麦栽培を控えて中国海関(関税庁)は、特に検疫や検査なしに輸出されていた尿素などの29種の肥料品目に対して、検疫を義務付けた。肥料の供給と価格の安定化のために断行された措置が、韓国では尿素水品薄となって現れたわけだ。
Q.なぜ中国の尿素価格は上昇したのか。
A.今秋から本格化した石炭不足がその理由だ。石炭は尿素の原料のひとつだが、主要石炭輸出国のオーストラリアと対立したことで、9月から中国内で深刻な石炭の供給難が発生している。それにより石炭発電所の稼働率が下がり、連鎖的に電力不足となった。石炭から尿素を抽出するにはかなりの電力が必要となるが、石炭と電気が同時に不足しているのだ。大韓貿易投資振興公社(KOTRA)は、10月第2週の中国の尿素生産稼働率は67.24%で、昨年同期比で5.6ポイント減ったと発表している。
Q.尿素水不足はなぜ韓国でとりわけ深刻なのか。
A.尿素水の不足は世界的な現象だが、韓国は特にひどい。その理由はまず、中国への依存度が高いためだ。中国製尿素は韓国の尿素輸入量の3分の2、尿素水の原料となる産業用尿素だと、ほぼ全量の97.6%を占める。かつては韓国肥料(現ロッテ精密化学)など、国内で尿素を生産するメーカーがあったが、2010年代初頭に生産を取りやめている。石炭や天然ガスが出る中国やロシアなどの産地国と比べると、価格競争力が低いからだ。一方、欧州は独自の尿素供給システムを備えており、中国への依存度は比較的低い。日本も自国内での生産はもとより、輸入先もオーストラリアやインドネシアなど、多角化している。次に、韓国は他国に比べてディーゼル車の占める割合が高い。国内で運行中の車両約2600万台のうち、ディーゼル車は919万台を占める。尿素水を満たしておく必要のある排気ガス低減装置を装着した車は、21%の216万台に達する。2015年9月から欧州の最新排出ガス基準であるユーロ6を採用していることによるものだ。一方で米国、中国、日本のディーゼル車の割合は1~3%程度だ。
Q.産業用尿素水の車両用への転換は難しいのか。
A.用途ごとに品質が大きく異なるため、尿素水の転換には技術的な検討が必要だ。自動車の排気ガスに含まれている窒素酸化物を除去する排気ガス低減装置には、産業用より不純物の含有量が少ない高純度の尿素水が使われる。純度が低く不純物の多い産業用尿素水を自動車に注入すれば、排気ガスの汚染物質が十分に取り除けない恐れがある。しかも自動車の排気ガス低減装置は、鉄鋼やセメント産業などの産業用排気ガス低減設備より精巧なため、故障につながりうる。政府が転用を公式に認めた場合に発生する事態、事故に対する責任の問題もあり、環境部としては慎重にならざるを得ない。
Q.技術的検討はどのように行われるのか。
A.国立環境科学院の交通環境研究所が成分を分析したところ、産業用尿素水は自動車用より発がん性物質であるホルムアルデヒド成分の含量率が高いことが確認された。大気環境保全法施行規則に基づき、自動車用尿素水は尿素の含有率が31.8~33.2%、ホルムアルデヒド含有率が1キロ当たり5ミリグラム以下となっている。そのため、排気ガス低減装置に入れる際の窒素酸化物の除去性能とともに、ホルムアルデヒドのような他の有害物質が本来の自動車用に比べて実際にどれくらい排出されるのかなども主な検討対象だ。産業用尿素水の自動車用への転換が決まれば、環境部が産業用尿素水の成分分析結果を反映し、大気環境保全法施行規則の自動車触媒基準を見直せば、直ちに適用が可能になる。環境部の関係者は「可能だという結論が出れば、来月初めまでに大気環境保全法施行規則に例外規定を新設して適用できるだろう」と述べている。
Q.排気ガス低減装置を一時的に使用しないようにすることはできないのか。
A.実際のところ、尿素水がなくても車が運行できるよう、排気ガス低減装置を操作することはできる。かつて、一部の貨物車の運転手たちが尿素水のコストを節約するために操作した事例が、大量に摘発されている。問題はコストと時間だ。産業用尿素水の自動車用への転換を認めることは、自動車用触媒基準を変えることだが、排気ガス低減装置のソフトウェアをすべて変えるのには莫大なコストと時間がかかる。「任意操作」を違法と規定した大気環境保全法も見直さなければならない。いま現在直面している尿素水不足を解決する現実的な方法にはなり得ない。
窒素酸化物低減装置のスイッチを切ると、ディーゼルの燃焼過程で発生する窒素酸化物はそのまま大気中に排出されるしかない。窒素酸化物はそれ自体が発がん性物質であるだけでなく、微小粒子状物質(PM2.5など)の原因物質でもある。冬が近づくにつれて微小粒子状物質の濃度が高まる中、国民の健康と環境への被害を考慮すれば、政府としては考えにくい選択だ。
[尿素水は、ディーゼル車から出る窒素酸化物を減らす触媒だ。窒素酸化物は微小粒子状物質を誘発する物質だが、尿素水を入れると排気ガス中の汚染物質が70%削減できる。バスやトラックなどのディーゼル車への装着が義務付けられている「排気ガス低減装置(SCR)」には、尿素水を定期的に入れる必要がある。尿素水が不足すると警告灯がつき、エンジンがかからないようになるソフトウェアが使われている。]