韓国の「尿素水」不足が解決されない中、世界的には、肥料の原料である尿素の価格上昇により食糧供給が打撃を受ける可能性があるとの見通しが出ている。
8日、世界のエネルギー、農業、気象に関するデータを扱う企業「DTN」の資料を確認したところ、先月最終週現在の世界の主要肥料メーカーの1トン当たりの尿素の平均価格は751ドルで、9月の最終週の価格(620ドル)から21%上昇した。1年前の昨年10月の価格(358ドル)の2倍を超えており、2012年5月(770ドル)以来9年ぶりの高値だ。
尿素は、ディーゼル車の運用に必要な「尿素水」の原料としても使われるが、化学肥料で最も多く使われる窒素系肥料の原料としての方がより多く使われる。尿素は主に石炭と天然ガスから抽出するアンモニアを用いて作られるが、石炭と天然ガスの価格が上昇していることで、尿素の価格も跳ね上がっている。尿素の世界最大の生産国である中国が、自国内の需要を満たすために輸出を制限したことも影響している。
肥料価格の上昇の原因は尿素にとどまらない。窒素とともに肥料の3大原料に数えられるカリウムとリン酸も価格が急騰している。DTNの資料によると、先月最終週現在のカリウム価格は1トン当たり731ドルで、1カ月前の647ドルから12.9%の上昇。1年前(332ドル)の2.5倍近くに跳ね上がっている。尿素と似たような値の上がり方だ。リン酸(DAP)も同様だ。先月最終週現在のリン酸価格は1トン当たり812ドルで、1年前の448ドルの2倍近くに値上がりしている。
肥料価格の上昇は肥料供給の減少を意味するもので、「ブルームバーグ」などは、来年は世界的に作物の収穫量が減少しうると分析している。最近、米国の肥料メーカー「CFインダストリーズ」は、第3四半期の実績発表会で「少なくとも2023年までは国際的に強い肥料需要が続くことから、肥料の量は十分ではない」とし「不足する肥料を確保できなければ、来年は全世界の穀物収穫量が減少するだろう」と述べている。
現代農業において肥料の果たす役割は大きい。一部の専門家は、窒素系肥料がなかったとしたら世界の人口は現在の半分程度だっただろうと予想する。化学肥料が作られる前の約100年前、世界の人口は約17億人だったが、現在の世界人口は70億人を超える。
肥料不足はすでに全世界で様々な影響を及ぼしている。ブルームバーグの報道によると、世界最大のコーヒー生産地である南米のブラジルでは、コーヒーを栽培する農民の約30%が注文した肥料を受け取れておらず、ペルーは尿素の輸入が最大3カ月遅れている。世界最大のトウモロコシ生産国である米国では、農民たちが窒素肥料を多く必要とするトウモロコシの生産から大豆生産に切り替える計画を立てている。シカゴ先物市場ではトウモロコシの栽培面積縮小に対する懸念により、トウモロコシの先物価格が先月半ば以降10%以上の急上昇を示している。コメの主要輸出国であるタイでは、コメ生産への打撃が予想される。タイ農業協会の会長は「いまや1トンの肥料の方が1トンのコメより高い。政府は介入すべきだ」と主張した。
すでに世界の食糧価格は、肥料不足などを反映して上昇傾向を示している。4日に国連食糧農業機関(FAO)が発表した先月の世界食料価格指数は、対前月比で3.0%上昇の133.2ポイントと集計された。世界食料価格指数は、穀物や油脂類などの主要食糧の国際価格を指数化したもので、2014~2016年の平均を100ポイントとする。世界食料価格指数は7月以降4カ月連続で上昇しており、2011年7月以来の高値を記録している。