文在寅(ムン・ジェイン)大統領は8日、大統領府の参謀会議で「買い占めや売り惜しみに対する徹底的な取り締まりとともに、公共部門の余裕分を活用するなど、韓国内の需給の物量管理に万全を期す一方、海外の物量確保のための外交的な努力に総力を尽くすように」と指示した。しかし、大統領府が中国政府の輸出制限にともなう尿素水の供給問題の深刻さを適時に把握できなかったことが明らかになり、対応が遅れたという批判は避けられないとみられる。
大統領府の関係者の話を総合すると、大統領府は、尿素水の供給不安の深刻さを一歩遅れて把握したものとみられる。大統領府のある関係者は、「落ち着いて対応している」と言いながらも「尿素水がない場合、貨物の物流において深刻な問題が生じる可能性があるという判断がやや遅かった側面はある」と語った。また、当初は尿素肥料の問題程度だと考えており、尿素水の問題に広がるという報告も遅れたことがわかった。産業通商資源部などの担当省庁で、中国による尿素水の輸出制限措置の波及効果が十分に把握できておらず、大統領府が前もって対応することができなかったということだ。また、別の大統領府の関係者は、「大統領の任期末期に公務員たちが動かないことが目に見える」と述べた。
大統領府の今回の尿素水関連の対応は、2019年7月の日本による輸出規制への対応の時と比較される。当時大統領府は、日本が半導体とディスプレーの生産に使われる3大重要材料の輸出を規制したところ、企業と共同で輸入代替先を確保するとともに、国産の材料の開発を促進した。これとあわせ、日本の予想される輸出規制品目に対する全数調査を実施し、緻密な対応に乗りだした。一方、今回の尿素水の供給問題の場合、先月15日に中国が尿素水の輸出制限措置を取ってから、今月初めに尿素水の「品薄」状況が生じた後にになってようやく問題の深刻さを遅れて把握し、その責任を任期末期の大統領に対する公務員の怠慢によるものだとする姿勢を示している。
大統領府は、尿素水の供給問題が判明した今月4日になって、国家安全保障会議で「国内に尿素水が安定的に供給されるよう、関連国との外交的協議を強化」するという立場を明らかにし、5日にはアン・イルファン経済首席を長とする尿素水対応タスクフォース(TF)の運営を開始した。米国のジョー・バイデン政権の発足後、大統領府が「グローバル・サプライチェーン」の重要性を強調してきたにもかかわらず、実際に韓国内で起きている主要物資の供給にはまともに対処できなかったというわけだ。
文大統領は、欧州歴訪中に米国のバイデン大統領とともに「サプライチェーン回復力グローバル首脳会議」に参加するなど、港湾をはじめとした物流の混乱に対応すると明らかにしながらも、実際に「国内の陸上物流」が止まることが起こりうる問題に対しては、十分に対処できなかった。大統領府高官は歴訪中に「サプライチェーン首脳会議で、尿素水問題について中国との話はあったのか」という質問に、「中国は参加しなかった」とだけ答えた。
キム・ブギョム首相は、この日の国会予算決算特別委員会の総合政策質疑で、尿素水不足問題について、「初期のうちにもう少し積極性をもっていたならば、状況が悪化することを防げたのではないかという心残りがある」と述べ、「強く反省する」と明らかにした。キム首相は、「資源の安全保障に対する認識を新たにして備え、国家全体が状況を管理するシステムを構築する」と述べた。
大統領府は、ひとまずオーストラリアから尿素水2万7000リットルを軍輸送機を通じて持ちこみ、ベトナムとは約1万トン規模の尿素の輸入を交渉中だと述べ、供給への不安心理を抑えようとしている。長期的には、尿素など輸入元の多角化が必要な物資の管理方法について、全般的な点検を行う予定だ。