日本軍慰安婦被害者の人権と名誉のために30年以上にわたって力を尽くしてきた挺身隊問題対策釜山(プサン)協議会のキム・ムンスク理事長が29日に死去した。享年95。
キムさんは、1992年に提訴され、日本の裁判所が初めて日本軍慰安婦被害者に対する賠償を命ずる判決を下した下関裁判(関釜裁判)を主導。この裁判を描いた映画『ハー・ストーリー』の主人公がキム理事長だった。
キムさんは1986年から、釜山(プサン)で家庭内暴力相談所を運営するなど、女性の人権運動に力を入れてきた。1991年、釜山に妓生(キーセン)観光に来た日本人から、日本軍慰安婦が存在したということを初めて聞いた。キムさんは2014年の本紙とのインタビューで「日本軍慰安婦問題を初めて聞いた時、血が逆流するような気持ちだった。ただただとても悔しい気持ちだった」と話した。
キムさんは1991年に直ちに挺身隊問題対策釜山協議会を結成し、関連資料を集めた。釜山や慶尚南道などで、日本軍慰安婦の被害女性や、日本などに連れていかれて強制労働させられた勤労挺身隊の被害女性10人を探し出した。彼女たちが原告となり、1992年12月25日、山口地裁下関支部で、「釜山従軍慰安婦、勤労挺身隊公式謝罪等請求事件」訴訟が起こされた。
キムさんは1998年まで、釜山と日本の下関を23回往来して裁判を続けた。山口地裁下関支部は1998年、日本政府に対して日本軍慰安婦被害者に30万円の賠償を命ずる判決を下した。日本の司法府が初めて日本政府の責任を一部認めたものだった。
キムさんは1994年から日本軍慰安婦に関する史料などを整理し、2004年に私財を投じて釜山水営区(スヨング)に日本軍慰安婦歴史館「民族と女性の歴史館」をオープンした。キムさんは生前、本紙に「子どもたちに日本軍慰安婦の実態と歴史をきちんと伝えなければならないと考えて、歴史館を作った」と語っている。現在この歴史館には1000点を超える日本軍慰安婦についての資料が展示されている。
遺族は釜山市などと協議のうえ、来週民族と女性の歴史館に焼香所を設ける予定だ。葬儀会場はソウル江南聖母病院。出棺は31日午前10時。