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トランプはノーベル平和賞を受賞できるか【コラム】

登録:2025-07-11 09:42 修正:2025-07-11 10:15
チェ・ウリ|国際ニュースチーム記者
2020年12月、米国ニューヨークでノーベル賞のメダルが展示されている/AP・聯合ニュース

 「ノーベル平和賞は進歩派ばかりに授与されている。私はノーベル平和賞を4、5回は受賞していてもおかしくない」

 米国FOXニュースは先月22日、トランプ大統領がノーベル平和賞について、偏向的であり、そのせいで自分は期待しないと述べたと伝えた。これは、オバマ元大統領が非核化などの国際平和のビジョンを提示したことが認められ、2009年に任期1年目で同賞を受賞したことを念頭に置いたような発言だ。トランプ大統領はノーベル平和賞を受賞すべきだと言ったある右翼のポッドキャスターのSNSでの発言を、自身のトゥルース・ソーシャルのアカウントで共有してもいる。

 王になりたくて大規模な軍事パレードを行い、次期教皇をどう思うかと尋ねられた際に自分が教皇になりたいと言ったトランプ大統領は、ノーベル賞は自分に与えられるべき当然の「王冠」のようなものだと考えているようだ。そして、その王冠を「偏向的」なノーベル賞の審査委員たちから引き出すために彼が掲げる業績の一つは、「中東の平和の実現」だ。2020年にアラブ首長国連邦(UAE)、バーレーン、モロッコ、スーダンのアラブ圏4カ国とイスラエルの国交正常化「アブラハム合意」を導き出したことを代表的な成果だとしている。

 韓国のある外交専門家は「トランプ大統領のノーベル平和賞受賞の可能性」を記者に問われ、「もしトランプ大統領が自身の嫌う進歩・エリート知識人の象徴のようなオバマ大統領のようにノーベル賞を絶対にとりたいと思っているなら、情勢を大きく変える取引をする可能性はあるだろう」との見通しを示した。トランプ大統領がアブラハム合意の完成として掲げたイスラム教スンニ派の盟主であるサウジアラビアとイスラエルの国交樹立にとどまらず、米国とイスラエルが最大の敵とするイランをもこの枠組みに引き入れられれば、評価が変わることもありうる、との分析だ。

 いまのところはその方向へと向かっている。ガザ戦争の休戦を求め、イランとの核交渉を試みた。しかし結論から言うと、イスラエル中心の中東平和を引き出したとしても、トランプ大統領がノーベル賞を受賞できると予測する人は少ない。方法が破壊的だからだ。

 2023年10月7日にガザ戦争が勃発したことを受け、サウジはイスラエルとの国交正常化交渉を暫定的に中断している。そして、今年に入ってトランプ大統領がガザ戦争の終息を求めつつ、ガザ住民の隣国への強制移住まで提案すると、アラブ諸国は声を一つにしてパレスチナ支持を表明した。イスラエルはイランの核の脅威を理由として米国を巻き込み、12日間の戦争まで引き起こした。トランプ大統領の心を見抜くように、最も信頼できる親しい仲間になっていっているイスラエルのネタニヤフ首相は今月7日の晩さんの席で、「世界的に平和、安保、安定を増進するために確固とした、かつ優れた献身を示した」と述べて、トランプ大統領をノーベル平和賞候補に推薦する書簡を直に手渡した。

 トランプ大統領は何度かノーベル賞候補に推薦されたことがある。ネタニヤフ首相に先立ち、インドとの休戦を仲裁したとの理由で、パキスタン政府が先月、彼を候補に推薦している。上院議員選挙への出馬を狙う米共和党の下院議員らも、彼を推薦している。しかしノーベル平和賞の審査機関であるノルウェー・ノーベル委員会のある委員は、すでに2018年に「もはや彼は米国と世界の道徳的指導者ではない」と評している。トランプ第2期も第1期と同様に国内外の混乱を拡大再生産していることも、やはり明らかだ。トランプ大統領はノーベル平和賞を受賞できるだろうか。

//ハンギョレ新聞社

チェ・ウリ|国際ニュースチーム記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1207449.html韓国語原文入力:2025-07-11 08:00
訳D.K

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