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「接種完了率85%になればマスクから解放」?…誤解招いた韓国防疫当局

登録:2021-10-15 05:39 修正:2021-10-15 06:53
防対本のクォン・ジュヌク副本部長の発言が波紋 
チョン・ウンギョン庁長の「集団免疫は難しい」と相反する 
専門家「虚しい希望抱かせる最悪のコミュニケーション」 
韓国政府「ヤンセン製ワクチンのブースターショットに対する否定的な意見を検討」
今月14日、中央防疫対策本部のブリーフィングで発言しているクォン・ジュヌク第2副本部長=中央防疫対策本部提供//ハンギョレ新聞社

 韓国の防疫当局が14日、新型コロナの変異ウイルスであるデルタ株のため、事実上不可能だとしていた集団免疫を再び取り出し、「ワクチン接種完了率85%の場合、マスクなしでもデルタ株を克服できる」と述べた。接種率をさらに引き上げるという趣旨とはいえ、混乱を招きかねない「最悪のコミュニケーション」という批判の声があがっている。

 中央防疫対策本部(防対本)のクォン・ジュヌク第2副本部長は同日、「デルタ株の場合、(感染者1人が感染する人数の)基本再生産数が5であるため、接種の完了率が85%になれば集団免疫は80%に達し、理論的にはマスクや集合禁止、営業制限なしでも克服できる」と説明した。

 同日0時現在で1回目の接種を終えた人は対象者の78.3%、接種を完了した人は61.6%に上る。 現在12~17歳と妊婦、未接種者接種などが続き、11月中・後半頃には接種完了率が80%を超える可能性がある。しかし、残りの未接種者らの接種意思が高くなく、85%まで達するかどうかは不透明だ。

 チョン・ウンギョン防対本本部長(疾病管理庁長)は9月7日、国会予算決算特別委員会全体会議で「デルタ株は感染力が高く、感染遮断効果を落とす側面があるため、(中略)集団免疫は難しいと判断している」とし、「ハシカや天然痘のように感染病を完全に根絶するための集団免疫は難しいとみている」と述べた。ソウル大学医学部のキム・ユン教授(医療管理学)も今月1日の討論会で、「デルタ株は最初の新型コロナウイルスより2~3倍高い感染力があり、ワクチンの感染予防効果を79%に低下させるため、集団免疫達成に必要な接種率は120%」だとし、「これは全国民が接種を受けても不可能な数値で、デルタ株によって集団免疫は不可能になった」と指摘した。

 このため専門家はクォン副本部長の発言が「特定の接種率を超えればマスク着用や社会的距離措置(ソーシャル・ディスタンシング)をしなくてもよい」という誤解を招く可能性があると指摘した。対外経済政策研究院のチャン・ヨンウク副研究委員は「集団免疫は固定された数値ではなく、接種率が上がるほど距離措置のレベルを下げられる状態をいう」とし、「85%接種完了に80%が免疫を確保するためには、ワクチンの感染予防効果が95%にならなければならないが、デルタ株はワクチン別予防効果が60~70%にとどまる」と述べた。チャン副研究委員はさらに「キム・ブギョム首相が前日、『すぐにマスクを取れるわけではない』と述べたのに、翌日防疫当局の高官が『マスクなしでもデルタ株を克服できる』と発言したのは、国民に虚しい希望を抱かせる最悪のコミュニケーションの取り方だ」と指摘した。

 一方、米食品医薬品局(FDA)がモデルナとジョンソン・エンド・ジョンソン(ヤンセンファーマ)製ワクチンの追加接種(ブースターショット)に否定的な意見を出したことを受け、ヤンセン製ワクチン接種者の追加接種用にファイザーやモデルナとともにヤンセン製も考慮していた防疫当局は「公式発表が出れば、十分検討する予定」だと述べた。FDAは12日(現地時間)に公開した文書で、「モデルナ製ワクチンは2回の接種だけでも予防効果が強く持続し、ブースターショットが必要ないかもしれない」と明らかにした。13日に公開した検討資料では、ヤンセン製ワクチンの追加接種が十分な免疫増強効果を発揮するかどうか明確な結論を出せず、「ヤンセン側が提供した資料が不十分」と指摘したと、AP通信などが報じた。

キム・ジフン、シン・ギソプ記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/society/health/1015256.html韓国語原文入力:2021-10-150 2:35
訳H.J

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