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サムスンバイオ、モデルナとワクチン生産委託契約…でも「充填・包装」だけ?

登録:2021-05-24 04:39 修正:2021-05-24 08:40
韓米首脳会談に続くワクチン企業パートナーシップ行事で 
 
モデルナ、サムスンに充填と包装のみ任せることに 
韓国内での自社生産施設建設に向けた議論、政府とMOUも 
政府、「用地推薦」…モデルナ、大規模支援要求か 
 
コロナ長期化に備える生産基盤の多様化は注目の価値あり

 米国系グローバル製薬会社のモデルナとサムスンバイオロジックスの間で、新型コロナウイルスワクチン生産の委託契約が成立した。モデルナはこれとは別に、韓国国内にワクチン生産施設を建てるために直接投資をするかどうかを韓国政府と話し合うという覚書も交わした。ひとまず、韓国企業が4種類のコロナワクチンのうち、mRNAを含む3種類のワクチンを受託生産することになり、コロナ禍の長期化に対応する戦略的多様性を備えることになったことが注目される。ただし、このような受託生産が韓国国内への供給の拡大や受託企業の収益性などにどれほど大きな実益をもたらすかは不透明だ。サムスンバイオは、ワクチン原液の製造技術は移転を受けられず、充填と包装のみを行うという低水準の協力にとどまったことが限界として指摘されている。

 23日の韓国政府、サムスンバイオ、モデルナの説明を総合すると、22日(現地時間)に米ワシントンで開かれた「ワクチン企業パートナーシップ」行事において、モデルナが韓国側に推進または検討の意思を明らかにした事業は、大きく2つに分けられる。まず、サムスンバイオとは数億回分規模の委託生産契約を交わした。これによりサムスンバイオは第3四半期より、モデルナからワクチンの原液の供給を受け、米国以外の地域に供給されるワクチンを充填・包装する「完成品生産(DP)」を行うことになる。モデルナがスイス企業のロンザにはmRNAワクチンの製造技術の移転を伴う「原液生産(DS)」を任せたのとは、技術協力水準での違いが明らかだ。すでにSKバイオサイエンスがアストラゼネカ、ノババックスのワクチンを原液から完成品まで全て受託生産する契約を結んでおり、ロシアのワクチン「スプートニクV」を受託生産するヒュオンスなどの国内企業のコンソーシアムも技術移転を受けて原液や完成品生産を全て行うが、これらとは異なる。

 もう一つの事業は、モデルナによる韓国内のmRNAワクチン施設への直接投資だ。これは産業通商資源部、保健福祉部と交わした「モデルナの潜在的な韓国投資および生産に関する議論における協力に向けた覚書」に盛り込まれた。これについて産業部のムン・ドンミン貿易投資室長は「モデルナがワクチン生産施設を韓国に建設するという意志を確認したもの」とし「今後のさらなる論議で最終的な投資内容が決定されるだろう」と説明した。これに先立ちモデルナのステファン・バンセル最高経営責任者(CEO)はワシントンの同行事で「本日交わされる覚書によって韓国でのmRNAワクチンの生産施設の建設を急ぐのは『未来』のためであり、サムスンバイオに完成品の充填を委託することにしたのはコロナパンデミックに対応した『現在』の問題」と述べた。

 これらの協力について、保健福祉部のカン・ドテ第2次官はこの日、「K防疫からグローバル・ワクチンハブ国家へと発展するきっかけとなった」と評価した。政府はまた、ウイルスベクターワクチン(アストラゼネカ、スプートニクV)と組み換えたんぱくワクチン(ノババックス)に加え、mRNA(モデルナ)ワクチンにまで受託生産の組み合わせを多様化したことを主な成果として挙げた。コロナ禍の長期化と変異ウイルスの出現により「第3次ブースターショット」の必要性が高まっているが、ベクターワクチンは接種回数が増えれば効果が低くなる可能性があり、ワクチンの種類の多様化が必要となっている。

 ただ、モデルナが韓国に生産施設を自ら建設するまでに至るかについては、不透明な部分が多い。業界では、モデルナが韓国政府の支援水準に満足できなければ、投資する国を変えるだろうという見方も出ている。ムン・ドンミン室長はこの日「覚書にもとづきモデルナに工場用地を推薦するなど、投資活動を支援する」と述べた。しかし21日の日本経済新聞は、モデルナのステファン・バンセルCEOが電話取材に対し「日本を含めたアジアでのワクチン生産について検討している。日本の製薬業界の関係者と協議を進めている」と述べたと報じている。

 サムスンバイオが生産するモデルナのワクチンの一部が国内に供給されるかどうかは、まだ未知数だ。中央事故収拾本部のチョン・ウニョン・ワクチン導入事務局長は「現在、韓国がモデルナと直接契約して確保した2000万人分のワクチンは、国外で生産された完成品の形で供給を受けることになっている」とし「しかし流通の様々な効率的側面を考慮して、国内での生産分が供給されるよう協議していく」と述べた。米国が韓国軍の将兵のために寄付を決めた55万人分のワクチンの導入日程、ワクチンの種類などもまだ決まっておらず、さらに協議を進めなければならない。

チェ・ハヤン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/health/996319.html韓国語原文入力:2021-05-23 19:27
訳D.K

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