2月26日午前9時頃、鎮海(チンヘ)ドリーム療養病院には妙な緊張感が漂っていた。国内で新型コロナウイルス感染症の一人目の患者が発生した昨年1月20日以来、402日ぶりに初のワクチンであるアストラゼネカ製ワクチンの接種がまもなく始まる予定だったからだ。実をいうと、このように緊張する理由はなかった。一部ではアストラゼネカのワクチンの効果が低いとか、副作用が心配だと主張していたが、英国などで出た大規模な実際接種データを見る限り、アストラゼネカのワクチンも重症化の抑制に効果が優れており、副作用も他のワクチンよりもむしろ少ない方だったからだ。最も懸念される副作用の「アナフィラキシー」、すなわち急性重症アレルギー反応はほとんどなかった。また、もし発生しても抗アレルギー注射投与などにより、直ちに好転するため、それほど大きな問題にはならなかった。
それでも初めての接種という負担は拭えなかった。少し不安がる職員らもいた。だからといって、彼らが接種を拒んだわけではない。療養病院に勤めるという理由で、1年以上にわたり一般的な基準よりはるかに高いレベルの防疫守則の順守と会合の自制など、生活に不便を強いられてきた状況から抜け出せる希望が見えるという期待感と、高齢患者をケアしている人としての責任感が大きかったからだ。
実際の接種にはそれほど時間がかからなかった。現在の体調や過去に重症のアレルギー歴があったかなどを問う予診表を作成し、体温測定と医師の予診を受けた。もし高熱があった場合は接種を数日延期することになっていたが、そのような事例はなかった。アレルギーについても、ショックや呼吸困難など重症のアレルギーでない食物アレルギーなどは特に問題ないが、そのような人には接種後の反応観察のための待機時間を増やした。元々は15分ぐらいで十分だが、30分ぐらい時間を設けた。何の問題もなく、当日休みの人を除く40人全員が接種を終えた。
接種後の反応も一般注射と変わらなかった。痛みがインフルエンザワクチンより少ないという人も多かった。もう少し痛いという人もいたが、平均的にはインフルエンザワクチン同様のレベルだった。接種部位が晴れたり、軽いめまいがある場合もあったが、やはり時間が経つにつれ緩和したという。もう少し時間が経過してからは、筋肉痛や微熱などが生じる場合もあったが、このような軽い疲れの症状はワクチン種にはつきものであり、正常な免疫形成過程でもある。1~2日程度の適度な休息で、大半が好転する。鎮痛剤は免疫形成を減らす恐れがあるため、服用しない方が良いが、必要な場合はアセトアミノフェン系鎮痛剤を飲めば良い。このようなすべての状況を含め、ワクチン接種後2日が過ぎた28日午前まで、異常反応は報告されなかった。
接種前は少し不安がっていた職員たちでさえ、今はみんな早く接種してよかったと言っている。もちろんワクチンを接種したからといって、すぐに日常に戻れるわけではない。保護効果が完璧なわけではないうえ、実際に効果が現れるには2週間から4週間程度の時間がかかり、その後も2回目の接種を受けなければならないなど、まだまだ道のりは遠い。しかし、重症化の抑制やウイルスの拡散を抑制する効果だけでも、高齢患者らを抱えている療養病院の職員らにとっては心理的負担が大幅に緩和する。実際、この1年間は薄氷の上を歩く気持ちで過ごしてきた。
もちろん、残念に思える部分もある。何よりも65歳以上のアストラゼネカのワクチン接種が承認されなかったため、今回の接種対象から彼らが除外されたことは非常に残念だ。臨床試験において65歳以上の対象者が少なく、彼らにも確実に効果があることを立証するデータが不十分であることが理由であったが、すでに臨床試験よりもはるかに大規模な実際のデータが報告されており、65歳以上においても重症化の抑制に優れた効果があることが立証されている。人々が心配する安全性も、当初から問題ではなかったが、アストラゼネカのワクチンがむしろ他のワクチンより重症の副作用事例がはるかに少なく、もしできても接種機関で十分対処できる。したがって、これを承認しない理由はない。
入院患者は外部の出入りが統制されているので多少遅れることはあっても理解できるが、介護者や職員の中でも65歳以上の人がかなりおり、彼らは外部から通勤している。療養病院の集団感染の大半は通勤する人々によって発生したことを考慮し、彼らだけでも一日でも早くワクチン接種を始めてほしい。
また、最優先接種対象であるにもかかわらず、除外される場合がたまにある。例えば、一部の機関では清掃労働者や患者の移送労働者らを該当の機関の所属でないとか非正規職という理由で接種対象から外したという。新型コロナウイルスは人を選ばない。所属などを問わず、病院内で働いている人は全員最優先接種の対象にしなければならない。内部勤務ではなく、定期的に病院を訪れる人、たとえば医薬品を配送する製薬会社の社員なども同様だ。実際の危険性を突き詰めて考えるべきだ。ワクチン接種までもう一つの差別へとつながってはならない。
イ・ジャンギュ|鎮海ドリーム療養病院院長(お問い合わせ japan@hani.co.kr)