外交・安保分野についてのメディアの論評は、ある程度「言いたい放題」が許される領域ではないかと思ったりもする。国内の懸案については、不正確な報道に対する後続措置が比較的明確に行われるが、機密性が重視される外交・安保分野については、当局は明確な誤報に対しても対応を控えることが多い。特に、外国の外交・安保政策についての解釈の領域ともなるとさらにひどくなり、同じテキストに対する解釈が正反対になることも多い。韓国の記者の勝手な解釈に米日の政府が「抗議電話」をかけてくることもないため、この「言いたい放題」構造は続くことになるわけだ。
こうした考えが固まったのは、米ホワイトハウスのジェン・サキ新報道官が23日の記者会見で言及した「新戦略(new strategy)」についての25日の保守メディアの解釈を確認してからだ。「東亜日報」は社説で、バイデン政権が「対北朝鮮『新戦略』に言及したのは初」とし、これは「バイデン政権によるトランプ政策払拭において、対北朝鮮政策も例外ではないことを公式化したもの」と分析し、「中央日報」も「バイデン政権が発足から二日で北朝鮮の核に対する立場を明らかにした」と述べ、文大統領は米国と「北朝鮮の核の脅威に対する認識をまず共有」しなければならないと主張した。つまり、米国はトランプ政権の対北朝鮮政策を廃棄して「新たな戦略」を構想しているというのに、文在寅(ムン・ジェイン)政権だけが夢想に浸っていると言っているのだ。だがこの発言は、そこまで軽はずみに騒ぐほどのものだろうか。
その日の会見の模様は、ユーチューブのホワイトハウス・アカウントにアップされている61分42秒の動画で確認できる。午後1時3分に始まったその日の会見で、くだんの質問は最後の方に出た。ホワイトハウスのブリーフィングルーム後方に座っていた日本人記者とみられる男性がまず「東京五輪」開催の可能性についてのホワイトハウスの見解を聞き、その後、バイデン政権のインド太平洋政策に話題を移した。サキ報道官は2つ目の質問に対し「北朝鮮に関する対日政策について尋ねているのか」と確認した後、「北朝鮮の核や弾道ミサイルなどは深刻な脅威」と前置きし、「我々は米国人と同盟を守る新たな政策を導入する」とし「徹底した政策の見直しを行う過程で、韓日と緊密に協議する」と答えた。
この発言は、実際には次期国務長官に指名されたアントニー・ブリンケン氏の上院人事承認公聴会での発言を、サキ報道官が「自分の言葉」で整理したものに過ぎない。ブリンケン氏は「北朝鮮に対するアプローチと政策を再検討する予定で、この過程で韓日などとあらゆる方策について話し合う」と述べた。そして「北朝鮮が交渉のテーブルにつくために圧力を強化した方が効率的なのか、それとも他の外交的アプローチも可能なのか」検討するとも述べている。米国が政策の見直しを通じて導き出す戦略が「新戦略」であって、いずれにせよ失敗した「昔の戦略」ではないはずだ。
韓米が政策を調整する過程で多少の摩擦は予想されるものの、北朝鮮の核という難題にはっきりとした答えがないのは互いに同じだ。主張すべきことは主張し、受け入れるべきことは受け入れればよいだけで、何もないうちから「新戦略」の一言に恐れる必要はない。