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「文大統領ワクチン指示」非公開発言の公開で対応に乗り出した大統領府

登録:2020-12-23 02:44 修正:2020-12-27 09:26
保守メディアと野党の攻勢に反撃 
カン・ミンソク報道官「ワクチンの政治化はやめて」
文在寅大統領が10月15日、京畿道城南にある新型コロナワクチン開発企業SKバイオサイエンスを訪問し、冒頭発言を行っている=大統領府提供//ハンギョレ新聞社

 大統領府は22日、非公開だった数カ月前の内部会議での発言まで公開し、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が新型コロナウイルスワクチンの確保を指示してきたことを強調した。「朝鮮日報」などの保守系メディアと野党が連日、米英などのワクチン接種開始をあげて韓国政府の対応の遅れを批判していることへの対応とみられる。

大統領の非公開発言まで異例の公開

 大統領府のカン・ミンソク報道官は22日夕、書面ブリーフィングを通じて「『ワクチンの政治化』はやめていただけるよう、切に訴える」と述べ、文大統領のコロナワクチンに関する過去の非公開・公開発言を公開した。資料によると、文大統領は先月24日、大統領府参謀会議で「ワクチンの安全性についての問題提起は、輸送や取り扱いの過程で我々の側に不注意がない限り、科学と医学に基づくべきものだ。最善を尽くして確保せよ」と述べたのに続き、30日の会議でも「多すぎだと言えるほどの物量を確保せよ。適当に考えるな」と指示している。この他に文大統領は、4月9日に京畿道城南市(ソンナムシ)の韓国パスツール研究所を訪問した際、「開発した治療薬とワクチンは、コロナが終息しても備蓄する。最後までやり遂げろ」と述べている。7月21日の内部参謀会議でも、SKバイオサイエンスがアストラゼネカのワクチンを受託生産することなどについて報告を受け、「十分な物量の供給」を求めるなど、今年に入って10回以上指摘しているというのが大統領府の主張だ。

 大統領府がこのように大統領の非公開発言まで公開して事実関係を強調したのは、この日の朝に朝鮮日報や中央日報などが「いまさら参謀陣を叱責」「文大統領にワクチン直言2回、無駄だった」との見出しを付けた報道で、ワクチン確保の遅れに対する大統領府の責任に重ねて言及したことと深い関係があるとみられる。「国民の力」などの野党も、これらの報道を根拠として、文大統領と大統領府に向けた集中攻勢に乗り出した。

ブリーフィングの行間からにじみ出る「悔しさ」

 国民の力のチュ・ホヨン院内代表はこの日「いま国民が最も関心を持っているのは、ワクチンがいつ供給されるのかだ」とし「世界的に見てもワクチン確保は大統領自身の仕事であるのに、大統領が雲の上に座って『私が確保しろと言ったのに、お前たちは何をしているのか』というような責任転嫁をするのはいただけない」と批判した。

 カン・ミンソク報道官はこの日、資料を公開し、「ワクチンに関する大統領の活動を『最小限』まとめたものだ。文大統領がまるでワクチン確保に手をこまねいていたかのように誇張・歪曲され、国民の不信が増幅しているため、公開されていない大統領のメッセージを含め、これまでに文大統領がどのような活動をしてきたのか、事実関係を明らかにしたい」と説明した。

 大統領府がこのようにワクチン問題についてのマスコミと野党の批判に敏感に反応するのは、これまで文大統領が強調してきたK防疫の成果が、ワクチン確保の不振のせいで一挙に崩れかねないという懸念のためとみられる。韓国ギャラップが18日に発表した世論調査結果によると、文大統領を肯定的に評価する理由は「コロナへの対処」が29%で1位を占めた。不動産政策や法務部と検察の対立に対する否定的な評価が大統領の支持率を落としている中、「コロナへの対処」が文大統領の支持率を支えてきたわけだ。

「コミュニケーション不在」大統領に責任はないのか

 しかし、大統領府の釈明と反論が事実だとしても、ワクチン確保に対するマスコミと野党の不信が大きくなっていることについては、大統領府の責任は避けられないとみられる。韓国政府は8日、アストラゼネカ、ファイザー、モデルナなどから合計3400万人分のワクチンを確保したと発表した。当初、国民はこれらのワクチンが2~3月中に韓国に導入されると思っていたが、実際に先行購入契約が締結されたのは、アストラゼネカのワクチンだけであることが間もなく確認された。さらにアストラゼネカは、米食品医薬品局(FDA)の承認が出ておらず、FDAの承認が出たファイザーとモデルナとは依然として購買契約が結ばれていない。こうしたことがメディアなどを通じて集中的に報道されたことから、国民の間には「ワクチン不信」が広がっている。

 もちろん、保守系メディアの執拗な攻撃とワクチンの弱点をほじくり出す野党の政略的攻勢がやりすぎだという感もあるが、最初にこうした状況を作り出した第一義的責任は、状況を率直に公開するのではなく、迫られてからようやく一つひとつ事実を打ち明けるような政府の態度にある。公開された発言のように、文大統領が国外の製薬会社と行うワクチン契約の過程の難しさを国民に隠すことなく説明し、理解を求めていたなら、「手をこまねいていながら、いまさら参謀陣ばかりを叱責している」というフレームに陥ることはなかったはずであり、国民の「ワクチン不安」もここまでにはなっていなかったと思われる。

イ・ワン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/bluehouse/975456.html韓国語原文入力:2020-12-22 19:40
訳D.K

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