本文に移動

一歩遅れた防疫、その場しのぎの病床、不透明なワクチン…揺れる韓国のコロナ対応

登録:2020-12-22 09:12 修正:2020-12-23 11:24
[コロナ対応の弱点を露呈した第3波の1カ月]
チョン・セギュン首相が今月21日午前、ソウル市庁で開かれた「新型コロナウイルス中央災害安全対策本部(中対本)」会議を開くため移動している/聯合ニュース

 新型コロナウイルスの第3波が押し寄せてから1カ月が過ぎた。先月20日、中央事故収拾本部(中収本)のユン・テホ防疫総括班長は「2~3月と8月に続き、3回目の流行が進んでいると判断する」とし、第3波を公式に宣言した。この日は0時基準で新規感染者が348人だった日だ。一部の専門家たちは、第3波のスタート時点をこれより早い11月中旬(10日100人→13日191人)頃と見ている。それから1カ月余り、新型コロナへの対応において三本柱となる防疫、治療、ワクチンの導入で、いずれも問題が生じて。相次ぐ社会的距離措置(ソーシャル・ディスタンシング)レベルの引き上げにもかかわらず、患者数は減少しておらず、病床が空くのを待っていた患者が死亡する事例もあり、医療システムの弱点も露呈した。しかも十分なワクチンが国内に導入される時点も不透明な状況だ。

1.社会的距離措置のレベル引き上げを“検討”するだけ

 この1カ月、韓国政府はソーシャル・ディスタンシングのレベルを引き上げてきた。11月19日、ソウルや京畿道、光州市(クァンジュシ)をレベル1.5に引き上げ→11月24日、首都圏をレベル2に、全羅道圏をレベル1.5に引き上げ→12月1日、首都圏をレベル2+αに、非首都圏をレベル1.5に引き上げ→8日、首都圏をレベル2.5に、非首都圏をレベル2に引き上げと、レベルを上げてきた。しかしソーシャル・ディスタンシングのレベルを調整する度に「遅れた対応」と批判された。過去の流行から学習した「10~14日後には(ソーシャル・ディスタンシングのレベルの)引き上げ効果が現れる」(新規患者数の減少)という公式も、今回の流行では当てはまらなかった。

 専門家らは第3波は第1波や第2波に比べて考慮しなければならない要素が多かったにもかかわらず、政府がこれを軽視していると指摘する。高麗大学九老病院のキム・ウジュ教授(感染内科)は「気温低下と乾燥という季節的変化、中心集団のない市中感染、ソーシャル・ディスタンシングに対する疲れなど、客観的な状況変化が政府の防疫政策にきちんと反映されなかった」とし、「急速な感染拡大傾向を抑えるためには先制的な対応が必要だった」と話した。

 政府は、すでに今月16日に「1週間の1日平均新規感染確認者800~1千人」というソーシャル・ディスタンシングのレベルの引き上げ基準を満たしたにもかかわらず、疫学調査による追跡隔離が不可能なほどなのか、医療システムが受け入れがたいほどなのかなどを考慮し、まだ引き上げる状況ではないという立場だ。ソウル公共保健医療財団のキム・チャンボ代表は「政府が自ら作った基準に従わずに他の要素を取り入れると、国民の信頼を失う恐れがある」とし、「優柔不断に対応して、むしろ長期化しかねないという不安が高まる可能性がある」と述べた。

2.「体系的病床確保」の不備であたふた

 患者数の増加を見越して前もって行うべきった病床と医療スタッフの拡充は、ずっとその場しのぎの対応から抜け出せなかった。中央事故収拾本部が民間の大型病院などの協力を引き出す方式で確保してきた「新型コロナ重症患者専門治療病床」は、先月21日には全国144床(首都圏103床)から今月20日には全国252床(首都圏164床)に100床増えた。一方、同期間、重症患者は84人から278人へと、200人近く増加した。この一週間、毎日1000人前後の新規患者が発生したため、5~10日の時差を置いて発生する重症患者は今週、さらに大幅に増える見通しだ。前日、パク・ヌンフ中央災害安全対策本部第1次長も「患者の発生速度と比べ、有効病床の確保と効率的な患者配分の速度が少しずつ遅れている状況だ」と認めた。

 ただし、政府は一部の公共・民間病院を拠点型病院に指定するなど、病床の大量確保を始めており、今週からは状況が好転するものとみている。18日には国立大学病院と上級総合病院などに1%病床動員行政命令も下した。中収本のソン・ヨンネ戦略企画班長は同日、「追加の病床を確保し、病床の配分の速度を向上させれば、病床待機患者が急速に減るとみている」と述べた。

 専門家たちは、その場しのぎで対応するのではなく、体系的な病床確保の計画を早く立てておくべきだったと指摘する。大統領直属の政策企画委員会は今年8月、感染者の急増時に稼動する「段階別病床動員シナリオ」を書いた報告書を大統領府に提出した。重症患者病床の場合、第1段階として全国の地方医療院や大学病院などに政府予算で策定されていた約190床の「国家指定入院治療病床」、第2段階として民間の上級総合病院など全国医療機関の重症患者室にある約540床の「陰圧隔離病床」、第3段階として民間病院の重症患者室を「病棟」単位で活用するなど、具体的な病床動員計画が盛り込まれた。中等症患者も公共病院の病床を優先的に活用し、患者が増えれば300病床以上の総合病院の一般病棟の30~50%を活用する準備を整えなければならず、そのために具体的な補償案も準備しなければならないと、同報告書は指摘した。当時、報告書の作成に参加したソウル大学医学部のキム・ユン教授(医療管理学)は「大統領府に報告書を提出したが、後続の措置が取られなかった」とし、「最近の病床不足による被害は大流行への備えを疎かにした大統領府の責任」だと批判した。

 看護師などの医療人材の拡充も難航している。大韓看護協会側は「中収本が、重症患者の治療経験のある看護師が絶対的に不足しているとして急いで募集しているが、まだ全体募集計画の10%水準に止まっている」とし、「医療現場では人材が投入される準備がほとんどできておらず、20年目のベテラン看護師に簡単な処置が任せられるなど、2~3月に大邱(テグ)・慶尚北道で発生した問題が今回も繰り返されている」と述べた。

3.1社に頼り切りのワクチン、物量と導入時期も不透明

 一部の国が新型コロナワクチンの接種を始めたが、韓国ではまだ導入時期すら不透明であるのも、混乱を呼んでいる。チョン・セギュン首相は前日、ファイザー、モデルナ、ヤンセンのワクチンは「契約間近だが、来年第1四半期の供給の約束を取りつけたわけではない」と明らかにした。嘉泉大医学部のチョン・ジェフン教授(予防医学)は、「政府が現在明らかにできる導入量は、アストラゼネカの1千万人分だけで、国民的不安が高まるのは当然のことだ」とし、「政府が他の製薬会社との契約を迅速に完了し、ワクチン導入時点を明確にする必要がある」と述べた。

 アストラゼネカのワクチンの契約書にもワクチンの導入時点が明記されておらず、波紋が広がっている。これに対し、政府はアストラゼネカのワクチンが2~3月に導入されるという内容が、アストラゼネカ最高経営責任者(CEO)とパク・ヌンフ保健福祉部長官の映像会議録に収録されていると説明している。中収本のソン・ヨンネ戦略企画班長は同日、「政府は数回にわたり2~3月に(ワクチンを)国内導入するという確約を様々なルートで取り付けており、保証されている」とし、「進行過程について(政府を)信頼してほしい」と述べた。しかし、政府自らも認めたように、「ソーシャル・ディスタンシングで流行を抑制してきた初期の経験に依存し、ワクチン購入交渉を急がなかった」という批判が高まっている。

 キム・ウジュ教授は「政府が第3波に対し、全般的にその場しのぎの対応をしている状況」だとし、「感染病対応において最も重要なのは“適時性”であり、今からでも機を逃してはならない」と指摘した。

チェ・ハヤン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/health/975297.html韓国語原文入力:2020-12-22 05:59
訳H.J

関連記事