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[ニュース分析]李明博元大統領、懲役17年確定…「ダース」13年の疑惑に終止符

登録:2020-10-30 05:30 修正:2020-10-30 10:04
[ニュース分析]李明博元大統領、懲役17年確定…「ダース」13年の疑惑に終止符

李明博元大統領を“断罪”するまでの長い道のり 
 
2007年の予備選挙で浮き彫りになった「ダース疑惑」 
検察「第三者のもの」、李元大統領の所有を示唆したにかかわらず 
大統領選挙2週間前に「明確な証拠はない」と発表 
李元大統領の当選後、特検も「嫌疑なし」で捜査終結 
 
文在寅政権発足後、再び告発され 
検察、全面的な家宅捜査と事情聴取で 
「ダースは李大統領のもの」という側近の供述引き出す

借名所有した会社の資金を横領し、サムスンなどから巨額の賄賂を受け取った容疑で裁判にかけられた李明博元大統領に今月29日、懲役17年の確定判決が言い渡された。写真は1月8日、ソウル瑞草洞中央地裁で開かれた控訴審続行公判に出席する李元大統領/聯合ニュース

 29日に行われた李明博(イ・ミョンバク)元大統領の賄賂や横領の疑いを有罪と認めた韓国最高裁(大法院)の判決は、多くの不正疑惑にもかかわらず、最高統治者の強大な権力と検察の手抜き捜査で刑事処罰を免れてきた権力者をついに断罪したという点で、意味がある。李元大統領は検察と特別検察官(特検)による三度の捜査を通じて、免罪符を得て権力と名誉を維持したが、不正を最後まで覆い隠すことはできなかった。ダース(DAS)の実際のオーナーをめぐる疑惑から始まった“積弊捜査”は、そこから派生した賄賂事件まで暴き出し、懲役17年という重刑につながった。

■最高裁「ダースの実際のオーナーは李明博」

 最高裁が認めた李元大統領の収賄額94億ウォン(約8億6千万円)のうち89億ウォン(約8億2千万円)がサムスンから提供された金額だ。ダースは李明博政権時代の2009年、自身がBBKに投資した140億ウォン(約12億8千万円)を回収するため、キム・ギョンジュン元代表を相手取って米国で訴訟を起こしたが、この訴訟費用をサムスングループが肩代わりしたのだ。控訴審裁判所は、裏金事件で有罪(執行猶予)を言い渡されたサムスングループのイ・ゴンヒ会長に対する特別赦免の見返りとしてサムスンがダースの訴訟費用を肩代わりしたという検察の主張を認めた。最高裁も控訴審の判断が正しいと判決した。

 李元大統領が夫人のキム・ユノク氏を通じて、イ・パルソン元ウリィ金融持株会長から受け取った現金2億ウォン(約1800万円)と1億2千万ウォン(約1100万円)の贈り物(衣類)も、会長選任や再任のための賄賂として認められた。裁判所はキム・ソナム元議員が比例代表公認を得るために渡した2億ウォンと、更迭の危機に追い込まれたウォン・セフン元国情院長が上納した特殊活動費10万ドルも賄賂と認めた。李元大統領のダースの横領額は計252億3千万ウォン(約23億1千万円)だった。李元大統領がダースの実際のオーナーとして1991年から2007年まで会社の金を個人的に流用したと判断したのだ。

 李元大統領側は、収賄とダースの横領額の一部は大統領選挙用の“政治資金”と見なすべきであり、大統領当選以前に受け取ったものもあるため、公訴時効(10年)が過ぎたとして、処罰は不可能だと主張している。しかし最高裁は、当時ハンナラ党の政権交代の可能性が高く、李元大統領が党内予備選挙で勝利した2007年8月20日からは「大統領になる地位にあった」と判断した。大統領選候補に確定してからは収賄罪の適用が可能であり、在任期間中は公訴時効が停止されるため、処罰に問題がないということだ。

 しかし最高裁は、李元大統領が在任中、大統領府総務秘書官や民情首席室行政官らに対し、米国でのダースの訴訟戦略の検討を指示し経過の報告を受けたことや、キム・ベクジュン大統領府総務企画官に義弟名義のダースの持ち株と相続税の削減案を検討するよう指示したのは、職権乱用と言えないと判断した。最高裁は「私的な業務指示にすぎず、国政懸案管理業務に対する一般的職務権限を行使する姿を見せたという情況もない」とし、「こうした指示が大統領の一般的職務権限に属さず、下級者に義務のない仕事をさせたとは認められない」と説明した。

■二度にわたる検察の取り調べと特検、そしてようやく実現した断罪

 ダースをめぐる疑惑は李元大統領が2007年のハンナラ党の予備選挙候補だった時代に本格的に提起された。李元大統領が実兄のイ・サンウン氏と義弟のキム・ジェジョン氏の名義で購入したソウル道谷洞(トゴクドン)の土地を売って調達した資金がダースに流れ、実際のオーナーは誰なのかをめぐる疑惑が浮上したのだ。検察は捜査に乗り出し、ハンナラ党の大統領選候予備選挙直前の2007年8月、「道谷洞の土地の持分はイ・サンウン氏ではなく、第3者のものとみられる」とし、実際のオーナーが李元大統領であることを強く示唆した。しかし、大統領選挙を2週間後に控えた同年12月には「ダースが李明博候補の所有という明確な証拠がない」という捜査結果を発表した。李明博大統領当選後の翌年の2月には、ダースと道谷洞不動産の所有者をめぐる疑惑を捜査するため、チョン・ホヨン特別検察官チームが発足したが、特検の結論も「嫌疑なし」だった。

 文在寅(ムン・ジェイン)政権発足後の2017年12月、参与連帯などが身元不詳のダースの代表取締役を横領の疑いなどで告発し、李元大統領に向けた検察の捜査が再び始まった。当時、ソウル中央地検長だったユン・ソクヨル検察総長は、「ダースの実際のオーナーを確認する」として、全面的な家宅捜査と召喚調査を行った。検察の積極的な捜査により、結局、キム・ベクジュン元大統領府総務企画官ら李元大統領の側近が「ダースは李元大統領のもの」と供述した。検察は、横領や収賄、政治資金法違反など16件の犯罪容疑を適用し、2018年4月9日、李元大統領を拘束起訴した。四度目の捜査の末に明らかになった真実だった。

チャン・ピルス記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/967840.html韓国語原文入力:2020-10-30 02:43
訳H.J

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