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「北朝鮮による漁業指導員の射殺、北朝鮮海軍司令官が指示した」

登録:2020-09-25 06:16 修正:2020-09-25 08:11
行方不明になった指導員に銃撃・遺体を損壊 
韓国政府「反人倫的蛮行を容認しない」 
文大統領「衝撃的…非常に遺憾」 
国防委、全員一致で糾弾決議文を採択
漁業指導船であるムグンファ23号が不法操業する漁船を取り締まるため、放水砲を撃つ訓練を行っている様子=海洋水産部提供//ハンギョレ新聞社

 大統領府と韓国政府は24日、北朝鮮が海洋水産部所属の漁業指導員に銃撃を加えた後、遺体を損壊した事件について、「反人倫的行為で、いかなる理由であれ正当化できない」と強く批判した。文在寅(ムン・ジェイン)大統領は「衝撃的な事件で非常に遺憾だ」とし、北朝鮮当局の釈明と処置を求めた。さらに、今回の事件は、北朝鮮海軍の最高責任者の指示で起きたとされ、現場の偶発的な事故ではなく、北朝鮮軍当局の故意によるものの可能性が高いと見られる。北朝鮮軍による民間人銃撃死亡と遺体毀損という前例のない事件が起きたことで、文在寅政権が進めてきた朝鮮半島平和プロセスは最大の危機を迎えた。

 国家安全保障会議(NSC)のソ・ジュソク事務処長は、同日に行われた国家安全保障会議結果のブリーフィングで、「21日、延坪島(ヨンピョンド)近くで行方不明になった漁業指導員が北朝鮮軍によって犠牲になった事件が発生したことについて、深く哀悼の意を表する。北朝鮮軍が武装もせず、抵抗の意思もない韓国国民を銃撃で殺害し、遺体を毀損したのは、いかなる理由であれ正当化できない」と述べた。ソ処長は「北朝鮮軍の行為は国際規範と人道主義に反する行動であり、政府はこれを強く糾弾する」とし、「反人倫的行為に対して謝罪し、こうした事態の再発防止のために明確な措置を取らなければならない」と述べた。ソ処長は「北朝鮮の行為は9・19軍事合意の細部項目の違反ではないものの、境界地域で軍事的緊張の緩和と信頼構築のための9・19軍事合意の精神を傷つける行為」だと付け加えた。

 文大統領は同日午後、ノ・ヨンミン秘書室長やソ・フン国家安保室長にNSCでの議論の結果について報告を受け、「衝撃的な事件で、非常に遺憾だ」とし、「どんな理由でも容認できない。北朝鮮当局は責任ある答弁と措置を取らなければならない」と述べたと、カン・ミンソク大統領府報道官が伝えた。国会国防委員会も同日、与野党の満場一致で北朝鮮の蛮行を糾弾する決議文を採択した。

 これに先立ち、国防部は21日昼、西海(黄海)小延坪島(ソヨンピョンド)南方1.2マイルの海上漁業指導船で業務を行っていた西海漁業管理団所属の海洋水産書記A氏(47)が22日夜10時ごろ、北朝鮮軍の銃撃を受けて死亡しており、北朝鮮軍がその遺体を損壊したと発表した。国防部は「さまざまな情報を精密分析した結果、北朝鮮が北側海域で発見された韓国国民に銃撃を加え、遺体を燃やす蛮行を犯したことを確認した」と明らかにした。同日、国防部から非公開の報告を受けた国会国防委員会所属の複数の議員は「北朝鮮海軍司令官が銃撃を指示をしたと韓国軍は見ている」と伝えた。海軍司令官は北朝鮮海軍の最高責任者で、現在はキム・ミョンシク人民軍大将が務めている。

 今回の事件で文在寅政権の朝鮮半島平和プロセス構想は、重大な危機に直面した。前日、文大統領はテレビ会議形式で行われた国連総会の演説で「終戦宣言こそが朝鮮半島における非核化とともに恒久的平和体制の道を開く扉になる」として、国際社会の支持を訴えると共に、南北関係改善に向けた意志を示した。

 しかし、演説翌日に発生した大型の悪材料は、南北関係改善の推進力を大きく落とすものとみられる。野党は政府の対北朝鮮政策が“幻想”に過ぎないとして、激しく批判した。世論も良くない。南北関係が行き詰まっている中、2008年7月の金剛山(クムガンサン)観光客死亡事件から約12年ぶりに起きた衝撃的な事件のため、国民の対北朝鮮感情も急激に悪化する可能性が高い。与党の幹部は「南北関係に相当な支障が生じた」とし、「しばらく関係悪化は避けられないかもしれない」と述べた。

ソン・ヨンチョル、キム・ジウン、ノ・ジウォン、ソ・ヨンジ記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/bluehouse/963568.html韓国語原文入力:2020-09-25 02:17
訳H.J

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