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国防部のパク・チェミン次官(中央)が24日、国会本庁内の共に民主党代表室を訪れ、北朝鮮海域での行方不明公務員銃撃事件について報告している=共同取材写真//ハンギョレ新聞社

　事実上の断絶状態にある南北関係に、特大の突発的な悪材料が浮上した。韓国側の激昂した世論と北朝鮮特有の硬直した強硬対応がもつれれば、南北関係は統制不能な悪循環の泥沼に陥る危機に直面している。

　24日の韓国軍関係者の説明を総合すると、北朝鮮軍は、西海北方限界線(NLL)の北朝鮮側の海上を漂流していた「海洋水産部所属の漁業指導船の船員」を、「海軍系統の指示」を受けて「北朝鮮軍の取締艦艇が銃撃」し、その後、「海上で遺体に油を撒いて燃やす蛮行を犯した」。北朝鮮軍の行為は偶発的ではなく「意図的と考える」と軍関係者は指摘している。

　北朝鮮軍の「銃撃殺害」と「遺体の焼却・毀損」はひとまず「新型コロナウイルス感染症（COVID-19）遮断」が理由であり大義名分だったと推定される。軍関係者の説明によると、22日午後3時30分ごろ、「浮遊物に乗った、疲労困憊した状態の行方不明者」を最初に発見した「北朝鮮水産事業所の船舶」は、行方不明者をすぐには救助せず、「一定の距離を取って、防毒マスクを着用して行方不明者の漂流経緯を確認」した後、「行方不明者が(海で)流されないように措置」を取った。その後、北朝鮮軍の取締艦艇が銃撃し殺害してからも、「防毒マスクを着用し、防護服を着た北朝鮮軍が遺体に近づき、(海上で)燃やした情況が捉えられた」。繰り返し登場する「防毒マスク」と「防護服」は、新型コロナ感染を回避するための装備と考えられる。

　去る7月19日に、ある脱北者が江華島(カンファド)から泳いで開城(ケソン)に越境した際、北朝鮮側は『労働新聞』の報道を通じて「開城市で、悪性ウイルスに感染した疑いのある越南逃走者(脱北して韓国に逃げた者)が、3年ぶりに違法に境界線を越えて帰郷するという非常事態が発生した」と発表している。金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長は事件発生6日後の7月25日、労働党中央委政治局非常拡大会議を招集し、開城市を「完全封鎖」するとともに、「事件発生に責任のある部隊に対する厳重な処罰」を指示した。理由はどうあれ、北朝鮮軍の「国際規範と人道主義に反する行為」は、「開城事件」の問責を再び受けないようにするための「責任回避のための過剰対応」の側面が強いと見られる。

　北朝鮮軍のこのような行為の背景に最高指導部の政務的判断があるのかどうかは、まだ確認できない。金正恩委員長は、6月23日の党中央軍事委予備会議で対北朝鮮ビラを問題視した「対南軍事行動計画」の「保留」を指示した後は、韓米合同軍事演習に公式の反応を示さないなど、状況を悪化させる措置は取っていない。

　北朝鮮軍の「銃撃殺害」と「遺体焼却・毀損」は、事情はどうあれ、「意図」が介入しているという点で、2008年の金剛山観光客パク・ワンジャさん殺害事件より悪質だ。パクさんは2008年7月11日午前4時50分ごろ、海岸を散歩中に韓国側の観光客立入禁止地域に入ったとして、人民軍警戒兵の銃撃を受けて死亡した。北朝鮮は事件発生当日に韓国側に事件の概要を伝え、その後「遺憾」を表明したものの、李明博(イ・ミョンバク)政権による南北共同の現場真相調査の要求は拒否している。パクさん殺害事件により、1998年以降150万人近い韓国側の人々が訪れた金剛山観光事業は中止され、事件発生から12年が経った今も再開されていない。人の命に関わる突発的な悪材料は、南北関係においてはどこに飛んでいくか分からないボールだ。

　政府は「蛮行を強く糾弾」するとし、北朝鮮側に「釈明」と「謝罪」、「責任者処罰」と「再発防止措置」を注文した。ひとまず「共同真相調査」は提案していない。北朝鮮が韓国のこのような要求にどのように反応するのかに、この事件が70年の分断史にもう一つの一過性の悲劇として残るのか、南北関係に台風をもたらす「蝶の羽ばたき」となるのかがかかっている。南北関係の波乱万丈を経験してきた人々は「ひとまず北朝鮮側が何と説明するのか聞いてみなければ、影響は予想できない」とし、それ以上の言及は避けている。