政府と大韓医師協会(医協)が、医学部の定員拡大や公共医科大学の設立計画を巡り激しい駆け引きを続けている。医協が26~28日に第2次集団休診を予告した中、21日の専攻医に続き24日には専任医(フェロー)も休診に加勢し、政府に対する圧迫の水位を高めた。この日、専攻医の集団休診参加率は69.4%と集計された。医協が政府計画に反対する主要な論理は「医師数は足りている」ということだ。医協の主張が事実かどうか突き詰めてみた。
■主要国より医師数の増加率が高い?
韓国の医師数は人口1000人当たり2.3人(2017年現在、韓方医0.4人を含む)である。これは経済協力開発機構(OECD)平均の3.4人の70%にも満たない。この点は医協も認める。しかし、医協は、韓国の年平均医師数の増加率が3.1%と、OECD平均(1.1%)より高いと強調する。また、この傾向が続けば、人口1000人当たりの医師数は、2038年にはOECD平均を上回ると推計する。
医協が見過ごしているのは、医師が増えるスピードだ。韓国の人口10万人当たりの医学系列卒業者数は、2011年の8.2人から2016年は7.9人へと減少した。一方、OECDの平均は10.5人から12.6人に増えた。こうなると、2038年のOECDの平均医師数は、現在の医協の「基準ライン」である2017年の3.4人より多くなる。さらに、韓国は高齢化のスピードが速く、2038年になれば1人が必要とする医療サービスが増え、医師がより多く必要となる。この日、人道主義実践医師協議会(人医協)は声明を出し、「医協の主張とは異なり、韓国の人口1000人当たりの医師数はOECD平均の65.7%、人口10万人当たりの医学部卒業者数は58%(2017年基準)に過ぎない」と反論した。
■地方で働く環境を作れ?
医協は、むやみに医学部の定員ばかりを拡大すれば、現在のバランスの偏った医師人材の分布はさらに激しくなると主張している。ただでさえ多い大都市の医師や、皮膚科・整形外科の医師ばかり増えるというのだ。現在、人口1000人当たりの医師数はソウル(3.1人)が慶尚北道(1.4人)の2倍以上多い。これに対して政府は「地域医師制」を導入し、特定地域で10年間服務する義務のある医師を育成すると明らかにした。
医協はこうした「人材拡大」ではなく、「人材再配置」が必要だと見ている。医療の伝達システムの見直し、医師が避けたがる専門分野への加算報酬などを通じて、医師が地域や必須医療分野へと自ら進むことができるようにすべきだという意味だ。しかし、すでに今でも人口の少ない都市ほど医師の給与は高い。2017年現在、ソウルの医師の平均給与は年1億1千万ウォン(約983万円)である一方、医師数の少ない全羅南道は1億6800万ウォン(約1500万円)、慶尚北道は1億6300万ウォン(約1460万円)だった。同年の労働者の平均年俸は3475万ウォン(約310万円)だ。金銭的補償だけでは、地域への偏り現象をなくすのは難しいという意味だ。
保健医療団体等は、地域で必須・重症医療を担当する医師を大規模に育成する「エリア別公共医大」を設立し、彼らが働く公共病院の建設を要求している。政府が計画した「地域医師」だけでは、研修医・専攻医の5年間を除けば地域での義務服務期間は5年にすぎず、短期処方で終わる可能性があるからだ。
■医師が増えれば医療費も高くなる?
医協のもう一つの主張は「医師が過剰に輩出されれば、全体の医療費が高くなる」というものだ。競争が激しくなった医療界が保険外診療を増やしたり、過剰診療をして患者の負担が大きくなりかねないという主張だ。
しかし保健医療団体では、これは医師の数の問題ではなく、医療行為を増やすほど報酬を多く受け取る現行の「行為別報酬制」のためだと指摘している。過剰診療の原因とされてきた報酬支払い制度を見なおさなければ解決できないということだ。ソウル大学医学部のキム・ユン教授(医療管理学)は「脆弱地は医師が足りず過少診療をし、大都市は競争が激しいため過多診療をする状況」だとし「過疎地域に送る医師を増やす政策が不必要な医療費の引き上げにつながるという主張はつじつまが合わない」と指摘した。