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2014年10月、脱北民団体が京畿道坡州市炭懸面の統一園の駐車場で対北朝鮮ビラを付けた風船を飛ばしている=パク・ジョンシク記者//ハンギョレ新聞社

　自由北韓運動連合など一部の北朝鮮離脱住民（脱北民）団体が朝鮮戦争70周年を迎え、北朝鮮への大規模ビラまきを予告した中、脱北民内部でも激しい反対の声があがっている。これらの団体が主張する「北朝鮮住民の人権向上」にビラまきが何の役にも立たないだけでなく、北朝鮮に残された脱北民の家族が迫害を受ける恐れがあるためだ。ハンギョレは12日、北朝鮮へのビラまきに反対する脱北民たちの声を聞いた。

　「北朝鮮でビラを拾ったら、直ちに韓国の交番のような分駐所に持っていくか、破ったりして埋めなければならない。読んだことがばれると、即処罰の対象になる」。2004年まで平壌（ピョンヤン）で暮らし脱北したAさんは、対北朝鮮ビラで北朝鮮住民が危険にさらされるかもしれないと懸念した。Aさんだけでなく、ハンギョレのインタビューに応じた脱北民7人は全員、「北朝鮮住民の人権向上」のための行為だというビラまき団体の主張とは異なり、口をそろえてこうした行為は北朝鮮住民には全く役に立たないと語った。北朝鮮政府を挑発するだけで、北朝鮮住民の手には届かないか、偶然発見して所持した場合、処罰を受けるためだ。2004年に脱北した40代の男性、Bさんは「住民はビラについてあまり知らない。山が多く、市内にはあまり届かない」と話した。2005年に脱北したCさんも、「北朝鮮では、韓国がビラとともに送るコメに触れると、手が腐り、病気になると宣伝されている。何回まいても無駄だ。南北関係が好転し、韓国政府が正式にコメを送る方がましだ」と主張した。一部の団体がペットボトルにコメを入れてビラと共に放流していることを批判したしたのだ。

　脱北民としては、北朝鮮に残された家族が被害を受ける恐れがあるという懸念も大きい。朝鮮労働党中央委員会のキム・ヨジョン第1副部長が直接北朝鮮に向けてビラを飛ばす脱北民を「裏切り者」や「人間のクズ」などと呼んで強く批判しただけに、こうした北朝鮮指導部の怒りがどこに向かうか分からないと、彼らは語った。2005年に脱北したDさんは、「韓国にいる脱北民の親戚に電話をかけたことが発覚し、数カ月間北朝鮮の国家保衛省に拘束されている甥が心配だ」と話した。脱北民のEさん（45）も「平壌に兄がいる。3カ月前、最後に電話をして以来連絡がうまく取れず、不安でたまらない。脱北民団体がビラをまいたからといって、脱北民家族に連座制で罰を与える可能性が高い」と話した。Eさんは、自由北韓運動連合のパク・サンハク代表がメディアのインタビューで、「両親や弟と共に脱北した」と明らかにしたことを挙げ、「北朝鮮に残された家族がいないから、気楽にビラをまいているのではないかという噂も流れている」と怒りをあらわにした。

　脱北民たちは、北朝鮮へのビラまき行為が南北を敵対局面に追い込んだことについても懸念を示した。パク・ヨンナムさん（49）は、「今後、対話チャンネルが開かれるかもしれないのに、彼ら（脱北民団体）が北朝鮮が敏感になる部分に触れ続けている。なぜ北朝鮮を刺激するのか理解に苦しむ」と批判した。韓国内の脱北民に対する認識が、北朝鮮へのビラまきでさらに悪くなることを心配する人も多かった。脱北民のFさん（52）は、「北朝鮮へのビラまきを強行する人たちのせいで、韓国で苦しい生活を強いられる脱北民がかえって被害を受ける。韓国の人々が私たちに対する警戒を強めるかもしれない。周囲の脱北民の70％は反対している」と語った。Eさんは「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で仕事を辞めてから求職活動しているが、北朝鮮の方言を聞いて採用しないケースもある。脱北民に対する認識がさらに悪化するのではないか心配だ」と打ち明けた。

　彼らは口をそろえて、政府が北朝鮮へのビラまきを確実に制裁しなければならないと指摘した。Eさんは「韓国より立ち後れた北朝鮮の現実を知らない北朝鮮住民はほとんどいないと考えていい」とし、「南北関係を悪化させるだけの時代遅れのビラをいつまで飛ばすというのか。 当該団体に対する法人許可取り消しや制裁など、政府の強い動きを望む」と述べた。パク・ヨンナムさんも「ビラで北朝鮮を刺激してはならない。南北が対話をすれば関係がよくなる」と指摘した。

　韓国政府も、北朝鮮へのビラまきに対する強力な制裁を予告した。これに先立ち、大統領府は11日、北朝鮮へのビラおよび物品散布が2018年の板門店宣言や1972年の7・4南北共同声明、1992年の南北基本合意書第1章履行付属合意書および2004年の6・4合意書など、南北間合意により中止することにした行為だという事実を改めて強調した。同日、統一部は自由北韓運動連合を警察に告発し、法人許可取り消しに着手するなど、法的手続きを進めている。京畿道も北朝鮮へのビラまきを住民の生命と安全を脅かす行為と規定し、金浦（キムポ）や坡州（パジュ）、漣川（ヨンチョン）などの地区内の軍事境界線に近い地域を危険区域に指定し、北朝鮮へのビラ散布者の立ち入りを禁止することにした。