新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による経済危機克服のための「政労使代表者会議」が、期待と懸念が相半ばする中、20日に初めて開かれた。早期に大妥結を実現すべきだという共通認識は形成されたが、労働側は解雇中止やセーフティネットの強化を、経営側は痛みの分担を通じた企業の生き残りを強調しており、今後の交渉過程では難航が予想される。
この日、初の政労使代表者会議は、チョン・セギュン首相の主宰の下、ソウルの首相公館で開かれた。チョン首相は「韓国の労働市場に押し寄せる影響がどの程度なのか予測しづらい大変な状況」だとし「政府の努力だけでは限界があるため、国民の雇用と職場を守るためには、政労使の3者は一体だという考えの下、力を合わせることが絶対的に必要だ」と述べた。この日の会議は午後2時20分に始まり、1時間20分にわたって行われた。労働側からは民主労総のキム・ミョンファン委員長と韓国労総のキム・ドンミョン委員長、経営側からは韓国経営者総協会(経総)のソン・ギョンシク会長と大韓商工会議所(大韓商議)のパク・ヨンマン会長、政府からはホン・ナムギ経済副首相兼企画財政部長官とイ・ジェガプ雇用労働部長官が出席した。
労働側は「不平等の解消」を掲げて機先を制しようとした。22年前の通貨危機当時、政労使委員会を通じて整理解雇法が導入され労働者の激しい反発を招いたので、労働者に不利な交渉を繰り返さないという意味とみられる。民主労総のキム・ミョンファン委員長は「競争と利潤中心の社会、不平等が深まる状況を続けるのか、それとも労働者、庶民、中小企業が経済の主役として尊重されつつ、成長と福祉が同時に作動する、共に豊かに生きる持続可能な韓国社会を作るのかを選択しなければならない」と主張した。韓国労総のキム・ドンミョン委員長も「経済危機を経るたびに不平等が深まった。危機による被害が韓国社会で最も弱い環であるプラットフォーム労働、フリーランス、特殊雇用労働者から始まっている」と指摘した。
一方、経営側は「痛みの分担」をキーワードとした。経総のソン・ギョンシク会長は「現在の最も重要な国家的課題は、企業の生き残りを通じた雇用維持。(労使は)賃金と雇用間の大妥協を通じて互いに協力し、痛みを分かち合うべき」と述べた。「雇用の保障」のためには、賃金凍結のような労働側の譲歩が必要ということを遠まわしに強調したわけだ。大韓商議のパク・ヨンマン会長も「今回の危機の克服において、一方の譲歩や犠牲ではなく、互いの協力と痛みの分担の方策を考えるべき。セーフティネットを通じて失業者たちを保護すべきで、企業の不渡りを防ぐ保護措置も政府が画期的なものを作ってくれれば、合意に至る可能性が高まる」と述べた。
雇用維持と賃上げ自粛の規模と程度は、労使双方が最も厳しく対立する争点になると予想される。労働側のある関係者は「労組指導部は、賃金凍結に合意すれば組職内で非難される覚悟をしなければならない状況であり、経営側は雇用維持を約束しつつ、それ以上の反対給付を最大限引き出そうとするだろう」との見通しを示した。
今回の会議の「スピード」も敏感なテーマだ。キム・ドンミョン委員長はこの日、「少なくとも来年度の最低賃金についての社会的議論が始まる前には決着をつけよう」と提案した。最低賃金委員会が来年度の最低賃金案を労働部長官に提出して、議論が始まる6月29日前までには合意しようという意味だ。労働側の別の関係者は「最低賃金を理由に経営側が労働者に不利な案を押しつける可能性があるという懸念が反映された発言」と述べた。
ただ、厳しい経済危機のため、労使ともに今回の交渉を決裂させるのは難しそうだ。経営側のある関係者は「今回の政労使対話は、経済危機を克服しようという趣旨であるだけに、労働側に劣らず経営側も対話に力を入れている。互いに無理な要求をして会議が平行線をたどってしまえば責任を取らなければならないため、むやみに賃金削減を要求するのには慎重にならざるを得ない」と述べた。
この日の会議では、公式な実務協議を行う機関の設立や運営などに合意した。議論の期限は特に決めず、早期に合意を引き出すことにしたと首相室は明らかにしている。議題選定などについての初の実務協議は22日に開かれる。首相室関係者は「COVID-19で引き起こされた経済と雇用の問題を中心に、解決策を論議する計画。危機の状況にあって雇用と職場を守るための政労使の役割、セーフティネットの拡充方策などを模索する」と説明した。