「コロナ経済危機」が現実のものとなり、最悪の失業大乱が懸念される中、国会は「全国民対象の雇用セーフティネット」構築に向けた第一歩を踏み出した。11日、国会環境労働委員会が国民就業支援制度を導入するとともに、芸術家に雇用保険を適用する法案を可決したことは、10日に文在寅(ムン・ジェイン)大統領が言及した「全国民雇用保険時代」に向けた「基礎」となると評価できる。しかし、この日も環境労働委が特殊雇用(特雇)労働者の雇用保険加入を義務付けることを留保したことからも分かるように、「働くすべての人々」のための雇用セーフティネットを整えるのは茨の道だ。
■韓国型失業扶助、初導入は成果
「韓国型失業扶助」と呼ばれる国民就業支援制度が初めて導入されたのは意義深い成果だ。11日に国会環境労働委員会で可決された「求職者就業促進及び生活安定支援に関する法律案」は、中位所得50%以下で64歳以下の低所得求職者に月50万ウォン(約4万3800円)、最大300万ウォン(約26万3000円)の求職促進手当を支給することを内容とする。特に18~34歳の「青年」は中位所得120%以下なら手当を受け取れるよう支給基準を緩和した。当初、政府は今年7月の施行を目標に法案を提出したが、与野党の議論が遅れ、施行は来年1月に延期された。経済社会労働委員会が可決した「国民就業支援制度推進方策」によると、年間の支援規模は40万人にのぼり、2022年からは50万人へと拡大される予定だ。
■雇用保険の恩恵、芸術家は5万人
この日、国会環境労働委員会で可決された「雇用保険及び労働災害補償保険の保険料徴収等に関する法律改正案」(雇用保険法改正案)は、2018年11月に共に民主党のハン・ジョンエ議員が発議した法案が基となっている。本来この法案は、保険設計士(保険外交員。個人事業主として保険会社と契約する労働形態)や運転代行運転士などの特雇労働者と芸術家への雇用保険適用の段階的拡大が主な内容だった。しかしこの日の環労委では、特雇労働者は除外され、芸術家のみが雇用保険の適用対象に追加される修正案を可決した。今後、雇用保険法の改正案が本会議で成立して施行されれば、大統領令によって、芸術活動を証明できる約5万3千人の芸術家(2018年現在)が恩恵を受けるとみられる。全方位的な雇用危機克服のため、第20代国会で事実上最後に開かれた環労委だったが、国会は実際には芸術家にのみ雇用保険の扉を「わずかに」開いたかたちだ。
実は、雇用保険法改正案の中心は芸術家ではなく、少なくとも166万人(韓国労働研究院、2019年現在)にのぼる特雇労働者の雇用セーフティネットの強化だった。昨年9月には国家人権委員会が国会議長に対する「常時雇用不安にさらされている特雇労働者を雇用保険適用対象に含める雇用保険法改正案を速やかに審議せよ」という意見を公開で表明するほど、特雇労働者の保護は社会的課題とみなされてきた。特雇労働者への雇用保険の適用をめぐる議論は2007年に本格化し、すでに13年も経つ長年の課題だが、第20代国会はまたしても「次期」に持ち越してしまった。
■野党と保険業界の反対で166万人の特雇労働者は「留保」
民主党は「野党との合意が可能な範囲を」優先的に処理し、第21代国会で議論を続ける方針だが、野党の反対を突破せねばならない課題は依然として残っている。未来統合党は「芸術家以上」は絶対にダメだという態度を堅持してきた。保険業界の影響力も無視できない。保険設計士は特雇労働者の約20%と最も高い比重を占めるが、保険設計士が雇用保険の加入対象となれば保険料の負担が増えるだけでなく、保険設計士の労働者性を認めなければならない状況になる可能性もある。統合党などの野党は経営者を代弁し、特雇労働者への雇用保険適用拡大論議をテーブルの上に載せることすら拒否してきた。統合党のイム・イジャ環労委幹事は会議直後、記者団に対し「雇用主の立場からは、労働基準法に関連する部分などを含め、更なる議論が必要だ」と説明した。
保険業界が反対しても、特雇労働者の雇用保険加入の義務化が不可能なわけではない。ハン・ジョンエ議員が発議した案は、特雇労働者を雇用保険の適用範囲に含めるものの、具体的な職種は大統領令で定める方式を採っている。段階的適用に向けた最善の方法だ。ただ、新たな雇用形態が登場するたびに、絶えず追加し続けなければならないという限界がある。政府はハン議員による議案を処理した後に、雇用保険の適用範囲を徐々に拡大しつつ、法案に「全面適用」を盛り込む計画を立てているが、第20代国会で特雇労働者問題が留保されたことで、これもまた遠ざかった。