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[社説]過度な「政府債務への恐怖」助長、「危機克服」の足を引っ張る

登録:2020-05-12 01:34 修正:2020-05-12 08:49
ホン・ナムギ経済副首相兼企画財政部長官(右から2番目)が7日午前、ソウル世宗路にある政府ソウル庁舎で「第2回非常経済中央対策本部会議」を主宰している//ハンギョレ新聞社

 コロナ発の経済危機に対応するため、政府が財政投入を増やしていることから、政府債務の増加や財政健全性の低下を懸念する声が高まっている。政府債務に対し懸念を持つのは当然だが、だからといって政務債務比率を一定水準以下に抑えることを政策の最優先目標にするのは正しくない。今はむしろ、消極的な財政運営が経済全般をさらに悪化させることで財政状況もさらに悪化する恐れがあることを警戒しなければならない時だ。今は借金が増えたとしても、果敢な財政投入で今すぐに経済を立て直しておいてこそ、のちに借金を返すこともできるというのは常識だ。

 今年に入って2回にわたって編成した補正予算により、政府債務は819兆ウォン(約71兆8000億円)となり、国内総生産(GDP)の41.4%に達する。さらに20兆~30兆ウォン(約1兆7500億~2兆6300億円)と予想される第3次補正予算案が準備されている。韓国が基軸通貨国ではなく、少子高齢化の速度も特に速いという事実を知らないわけではない。しかし今は、コロナ発の経済ショックで国内外の経済が急激に萎縮しているという状況をさらに重視すべきだ。

 5月に入り10日までの輸出実績は69億ドルで、昨年同期より46%減少した。家計の消費、企業の投資・生産がいずれも萎縮した状況で、政府まで消極的な財政運営にとどまったとしたら、事態はさらに悪化せざるをえない。「緊急災害で政府債務が雪だるま式に」「過度な財政出動は韓国にとって最悪」「政府債務比率50%突破は時間の問題」といった具合に政府債務に対する恐怖感を助長し、これに押されて財政が本来の役割を果たせなければ、経済はさらに悪化せざるをえない。

 韓国の財政状態が他国に比べれば健全な方であることは知ってのとおりだ。コロナ禍が始まってから、主要諸国が莫大な規模の国債発行により景気対策に取り組んでいることを考慮すれば、韓国の相対的な財政健全性はさらに高まるだろう。

 昨年、文在寅(ムン・ジェイン)大統領主宰の国家財政戦略会議後に浮上した「40%がマジノ線」ような消耗的な論議を繰り返すのは望ましくない。金科玉条のように考えられている「政府債務比率40%ライン」に明確な根拠はない。また、今は超低金利のため、国債発行による負担も以前より大幅に減っている。

 大統領府、与党、政府は、今月中に大統領主宰で開かれる予定の国家財政戦略会議で、財政運営に対する積極的な態度を示してほしい。世界経済のマイナス成長の流れに対応し、セーフティネットを緻密にしていくためには、今は財政の役割をさらに強化すべき時である。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/944503.html韓国語原文入力:2020-05-11 18:39
訳D.K

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