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なぜ保守政党の大統領は立て続けに弾劾されるのか【コラム】

登録:2024-12-17 09:06 修正:2024-12-17 09:47
クォン・テホ|論説委員室長
尹錫悦大統領が7日、ソウル龍山大統領室のブリーフィングルームで、非常戒厳と関連して国民向け談話を発表し、謝罪をしている=大統領室提供//ハンギョレ新聞社

 与党「国民の力」のハン・ドンフン代表が辞任した。大統領が弾劾されたのだから、与党代表が責任を取って辞任するのは当然だ。ところが、今の流れはそうではない。代表は辞めるつもりがなかったのに、親尹(錫悦)派は弾劾の責任をハン代表にすべて押し付けて追い出したのだ。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が弾劾されたにもかかわらず、むしろ「親尹派」は勢いに乗っている。奇異極まりない。

 朴槿恵(パク・クネ)大統領は2016年、弾劾案の可決を受け、「私の不徳と不覚でこのように大きな国家的混乱をもたらし、国民の皆様に心よりおわび申し上げる」と述べた。一方、尹大統領は「所得主導成長(家計の賃金と所得の上昇が消費の拡大をもたらし、経済成長につながるという文在寅政権の経済政策)」を例に挙げ、前政権を批判したうえ、「この国の自由民主主義と法治は崩れていた。私は決してあきらめない」と語った。朴大統領は2017年3月、ソウル地検特別捜査本部の出頭通知を受け、指定された日に検察に出頭した。一方、尹大統領は検察の非常戒厳特別捜査本部が15日に出頭を通知したにもかかわらず、それに応じなかった。

 2016年12月9日の朴大統領弾劾訴追案可決当時、セヌリ党(国民の力の前身)の128議席のうち賛成票は63票(反対56票)と推定される。セヌリ党議員の49.2%が賛成票を投じた。ところが2024年、尹大統領の弾劾訴追案に対する「国民の力」の賛成票は12票(11.1%)、反対は85票(78.7%)だった。2016年には自由投票だったが、今回の党の方針は否決だった。2016年の朴槿恵の容疑は「国政壟断」だった一方、2024年の尹錫悦の容疑は「内乱」だ。比べ物にならない。にもかかわらず、どうしてこうなったのだろうか。

 歪曲された学習効果のためだ。2016年の弾劾を基点に、保守政党は少数政党として位置づけられた。ところが、原因と結果を混同している。「弾劾に賛成」したからではなく、真の保守政党として生まれ変わることができず、ますます過去と極右に回帰したからだ。国民の力の議員たちもこれを知らないわけではないだろう。しかし、自分の利害関係に執着するあまり、一般国民の意思からますます遠ざかっている。その結果、無能で時代錯誤的な人物がますます主流をなしている。さらに、目的論的な考え方に陥っている。2022年の大統領選挙で野党に対抗できるこれといった候補が見つからず、外部から大衆的人気を享受していた尹錫悦前検察総長を連れてきた。政治経験もなく、保守政党に対する理解もないうえ、十分検証されていない人物だったが、「とにかく選挙に勝ってから考えよう」という態度だった。国民の力は以前にもパン・ギムン前国連事務総長を迎え入れようとしたこともあり、「何が何でも勝つ」ことにこだわる場合が多かった。このようなやり方なら、政党はいらない。その都度、世論調査で1位の人物を迎え入れれば済むことだ。そのようにして「婿養子」として連れてきた尹錫悦は、保守政党を2度にわたって壊滅させた。1度目は(検事として)外部から、2度目は内部で。

16日午前、国民の力のハン・ドンフン代表がソウル汝矣島の国会で、党代表辞任の記者会見に先立ち、見送りに来たクォン・ソンドン院内代表が抱擁しようとするとそれを避けるようにして会見場に向かっている=キム・ギョンホ先任記者//ハンギョレ新聞社

 今の国民の力の姿を見る限り、今後も自力で革新に成功する可能性はないかもしれない。既得権を持っている慶尚道と江南(カンナム)に未来を託した少数政党を目指しているようだ。「BSE(米国産牛肉輸入問題)直前」の2008年の総選挙が韓国保守の頂点だった。2006年の地方選挙、2007年の大統領選挙、2008年の総選挙での圧勝など、連戦連勝だった。その後、保守は次第に縮小した。時代に合わせ、民主主義を纏(まと)い、法治と伝統を守護する保守政党へと進むよりは、戦利品をめぐる争いに夢中になっためだ。そして、次第に同類交配だけを行うようになった。

 2008年には、保守に分類される無所属と親朴(槿恵)連帯を含む汎ハンナラ党の149議席(選挙区選出)のうち、首都圏(ソウル・仁川・京畿)の当選者が55.0%(82席)、慶尚道が42.3%(63席)だった。2016年には汎セヌリ党の112席(選挙区選出)のうち、首都圏は33.0%(37席)に縮小し、慶尚道は46.4%(52席)だった。「真朴(槿恵)公認」のためだ。そして、2024年の総選挙の国民の力の議席(選挙区選出)は、首都圏21.1%(19議席)で、8年間でまた半分に減った。その代わり、慶尚道は65.6%(59席)で議席も比重も増えた。このような政党に未来はない。これから国民の力の指導部になるのは、慶尚道か慶尚道主流の追従勢力だけに限られるだろう。先の大統領選挙の「尹錫悦」のように、予想外にも大統領選挙で勝利する可能性が完全に消えたわけではない。しかし、総選挙では多数党にはなれない。だから、いくら政権を握っても、虚弱で無能な政権になるだろう。尹錫悦のような時代錯誤的な人が「内乱」まで起こすとは思わなかっただろう。国民の力は「よくよくの状況だから、そこまでしたのだろう」と最大野党「共に民主党」のせいにするが、この構造を断ち切らない限り「よくよく」の状況はこれからも続くだろう。

 疑問に思うのは、国民の力が保守政党の地位を維持し続けるのが妥当なのかという点だ。韓国ギャラップの世論調査(12月10~12日調査)によると、75%が「弾劾」に賛成している。保守色の回答者の中でも46%が弾劾を支持した。「国民の力」議員は11.1%だけが弾劾に賛成した。ならば、国民の力は極右政党ではないか。極右政党が全体議席の36%を占めることが、果たして民意に沿ったものだろうか。

//ハンギョレ新聞社
クォン・テホ|論説委員室長(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1173403.html韓国語原文入力:2024-12-16 21:09
訳H.J

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