日本軍「慰安婦」被害者のハルモニ(おばあさん)たちの死後に莫大な後援金で「ホテル式療養院」を建てるという法人理事らの計画(ハンギョレ5月19日付6面)が知られた「ナヌムの家」の職員らは、昨年3月からアン・シングォン所長とキム・ジョンスク前事務局長などの施設運営陣、法人理事らを相手に「ナヌムの家の運営正常化」を要求している。「慰安婦」被害者の女性たち6人が生活している京畿道広州市(クァンジュシ)のナヌムの家と歴史館などは、社会福祉法人「大韓仏教曹渓宗ナヌムの家」が運営を総括している。法人の定款によって、理事の3分の2は曹渓宗の僧侶で埋められている。
彼らは19日、「最近の正義記憶連帯の議論のように、この問題がそのまま『慰安婦』被害者運動の問題に直結され、運動自体を攻撃する手段になりかねないということが怖かった」としながらも、「しかし、私たちが口を閉ざしていればハルモニたちが引き続き被害を受けなければならないため、勇気を出した」と話した。彼らは、キム前事務局長を現金後援金横領、女性家族部支援事業の過程で発生した背任などの疑いで今年3月に水原地方検察庁に告発した。キム前事務局長の事務室からは封筒に入った現金の束が発見された。職員らはアン所長と理事の告発も検討している。
■施設後援金を法人口座に?
彼らから入手したナヌムの家の内部運営資料などを総合すると、これまで後援金は施設運営のための口座ではなく、法人口座(大韓仏教曹渓宗ナヌムの家)として集められるという奇異な構造だった。これは「社会福祉法人及び社会福祉施設財務会計規則」違反だ。先月、京畿道広州市庁はナヌムの家に対する指導点検で「法人と施設は必ず後援金専用口座を区分して使用・案内しなければならない」とし、「施設固有の後援金口座を設けて入所者の福利増進に使うように」と注意措置を下している。また、後援者に後援金収入・使用内訳などを通知しないなど、社会福祉事業法違反で過料300万ウォンを科した。しかし、この日もナヌムの家のホームページは「ハルモニたちの生活、福祉、証言活動のための後援」を依然として法人口座に案内している。ナヌムの家の後援金は昨年だけで26億ウォン(約2億3千万円)が入るなど、昨年12月基準で64億3千万ウォン(約5億6千万円)が法人口座に入っている。
昨年、ハルモニたちの生活施設の運営には4億2600万ウォン(約3700万円)が使われた。このうち3億743万ウォン(約2700万円)は国庫補助金で充て、後援金を募金する法人口座から施設に入ってきた金は決算基準で6400万ウォン(約560万円)だ。
■後援金で大僧正の本を購入し、後援米は曹渓宗の僧伽大学へ
法人口座に貯まった後援金がホテル式療養所を建てるのに使われることを懸念している職員らは、運営陣が「後援金を節約して使え」という法人理事らの機嫌をうかがって人権侵害まで起こったと主張している。
職員らは「ハルモニたちは病院費、看病費などをハルモニの個人通帳で解決しなければならず、転入金の形で入ってきた後援金は一銭も使われたことがない」と話した。ナヌムの家のキム・デウォル歴史館学芸室長は「昨年春、寝たきりのハルモニ3人が汗をたくさんかくので、個人のお金がないハルモニのために後援金で着替えの服を買おうと運営陣に提案したが断られた。認知症予防用の1700ウォンのカラーリングブック1冊すらも、後援金では買えなかった」と主張した。
昨年6月には、あるハルモニが寝ていたところベッドから落ち、右眉の上を切る事故もあった。彼は「当時、ハルモニの顔から血が流れていたため病院に連れて行かなければならないと言ったが、運営陣が黙殺した」とし、「ベッドも15年も使い、マットレスが傾いているので変えようと言ったが、その都度断られ、5回も要求して交換することができた」と主張した。同年、歯がなくて施設で提供する一般食を食べられないハルモニに職員らが個人のお金でチョングッチャン(大豆を発酵させた味噌の一種,または、それで作ったチゲ)などをご馳走すると、キム前事務局長が制止したという主張も出た。
「ナヌムの家」でこのような問題提起は今回が初めてではない。2011年にナヌムの家の歴史館研究員を務めた日本人の村山一平さんは、当時「ハルモニのための看護体制が不十分で、認知症防止や心理治療などハルモニたちが参加できる生活プログラムがない。後援者の声が伝わる運営をしなければならない」と問題を提起した。
このように節約された法人口座の後援金は、しばしばとんでもないところに使われたりもした。2016年の内部支出決議書や通帳の内訳などを見ると、「大僧正(法人代表理事・月珠僧侶)の本購入」の名目で100万ウォン(約8万7千円)が引き出された内訳が確認される。該当する支出決議書には、アン・シングォン所長の職印が押されている。ナヌムの家宛に国民が後援で送る米を曹渓宗宗立中央僧伽大学と同門会などに送ったという疑惑も提起された。職員たちの問題提起でこうした疑惑が公論化されると、同窓会側は18日、コメ代700万ウォン(約61万円)を法人口座に振り込んだという。
■運営陣「理事会が決定」、理事「運営陣を懲戒」
職員らの問題提起に対し、運営陣と法人理事会は積極的に釈明した。アン所長は「職員2、3人では後援金の管理が難しいため、法人が後援金を受けて転出金の形で施設に渡すと理事会で決めた」と説明した。後援米問題に関しては「賞味期限があまり残っていないため、古米を捨てるのがもったいないので早く消費できる僧伽大学に送った。これをナヌムの家の職員が問題視し、僧伽大学の同窓会に送った」と付け加えた。
ナヌムの家の理事であるファピョン僧侶は、法人と施設口座の分離がちゃんとなされていなかった点について「担当人員が少なく行政的に未熟な部分があった」と釈明した。後援金に比べ施設転出金の割合が少ないことについては「(施設運営陣が)予算が必要だと事業計画を立てれば承認するが、(そのような計画案が)理事会には上がってこなかった」と説明した。常任理事であるソンウ僧侶は「法理に合わない部分があれば是正し、アン所長やキム前事務局長などを懲戒する」と述べた。