梨泰院(イテウォン)のクラブ発の集団感染が全国に広がる様相を見せている中、政府は10日、「生活の中の距離措置」を維持すると発表した。13日に予定されている登校開始(高校3年)時期の調整は、疫学調査の結果を1~2日見守り、現場の意見を取りまとめた後に決定することにした。しかし、登校延期を求める保護者の要求が高まるなど、市民の不安と混乱が拡大しつつある状況となっており、政府の速やかな、かつ細心の対応が必要という指摘が出ている。
中央災害安全対策本部のパク・ヌンフ第1次長はこの日の定例ブリーフィングで「防疫は韓国社会の安全と安寧に必須の活動だが、暮らしの問題は解決できない。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の長期化を考慮すれば、危険を甘受して日常に復帰しなければならない」とし、6日から施行中の生活の中の距離措置方針は変えないと明らかにした。そして「COVID-19が終息するまで日常生活と経済活動を中断し続ければ、韓国社会が負担しなければならない損失が大きすぎる。小商工人と社会的弱者層を中心に経済的な困難がさらに加わり、学生の教育に支障が生じ、保護者にかかる育児の負担もますます大きくなるだろう」と強調した。
13日の高校3年生を皮切りに、6月1日までに順次計画されている登校授業を延期するかどうかについては、結論が出ていない。パク第1次長は「梨泰院のクラブでの感染が子どもたちの登校日程に及ぼす影響を判断するには、まだ疫学調査の初期段階で限界がある。事態の拡散推移、学校現場の意見集約などを通じて早いうちに決定する予定」と述べた。インターネットの母親たちのコミュニティーには「クラブに行った20代の兄弟姉妹にうつされた子が登校するのではと心配」と、登校延期を要求する書き込みが相次ぐなど、子どもを学校に行かせる保護者の懸念が拡大している状況を考慮した措置とみられる。
感染症専門家の間では、予定通り登校すべきという意見(ソウル大学病院のホン・ユンチョル教授)から、入試日程まで時間が限られている高校3年生を除く残りの学年は登校を延期しようという意見(高麗大学九老(クロ)病院のキム・ウジュ教授)、13日の高校3年生の登校も延期すべきだという意見(嘉泉大学吉病院のオム・ジュンシク教授)まで、様々な意見が出ている。このような中、教育当局は、ソウル市教育庁が11日に予定されていた登校授業運営方策記者会見を取り消すなど、登校・始業延期を巡り苦心している。
COVID-19拡散の危険が残る中でも政府が生活の中の距離措置を維持するということに、専門家たちはおおむね同意しながらも、クラブのように感染拡大の危険が大きい場所には厳しく対応するなどの細心の準備が必要だと指摘する。生活防疫委員会の委員でもあるホン・ユンチョル教授(予防医学)は「『生活の中の距離措置』への転換以後はいつでもこうした事件が発生しうるが、問題は対応体系をきちんと整えて転換したかどうか。社会的距離措置(ソーシャル・ディスタンシング)に戻すなら、いつ、どんな条件で戻すのかまで決めてから生活の中の距離措置に切り替えるべきだったのに、そうしていなかった」と指摘した。キム・ウジュ教授(感染内科)も、「(生活の中の距離措置を実践できない)クラブのような危険の高い場所に対しては、(営業中断勧告を)最後に解除すべきだったのに、生活の中の距離措置への転換で、すべての場所が一度に解除されたのが問題だった」と指摘した。
これに対し、中央防疫対策本部のチョン・ウンギョン本部長は「密閉の程度、単位面積当たりの人数などの基準によって施設を類型別に分類し、危険度ごとの詳細な指針をもう少し補完する必要はあると判断する」と述べた。