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「一部メディアの『性的マイノリティ嫌悪』報道、防疫を妨害している」

登録:2020-05-11 04:17 修正:2020-05-11 07:38
本質とは関係のない性的マイノリティの嫌悪を助長する記事が相次ぐ 
専門家「性アイデンティティは無関係…疾病の潜伏化を助長」
政府がクラブなどの遊興施設を対象に1カ月の運営自制を勧告する行政命令を出した8日午後、ソウル梨泰院の飲食店と居酒屋などが密集した路地が比較的閑散としている//ハンギョレ新聞社

 ソウル龍山区(ヨンサング)梨泰院(イテウォン)のクラブから始まった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の集団感染が首都圏を中心に広がっているさなか、一部のメディアが性的マイノリティを前面に出して本質と無関係な人権侵害報道を継続して、眉をひそめさせている。専門家や政府はこのような態度が「防疫を妨害する態度」だとして批判した。

 7日の国民日報は、COVID-19感染判定を受けた龍仁(ヨンイン)の住人が梨泰院のクラブを訪れたことがあるとの内容を報道して「ゲイクラブに感染者が立ち寄った」とのタイトルを付けた。居住地域や勤務先の職場情報まで明記したこの記事が出た後、同様に「ゲイクラブ」を掲げた記事が相次ぎ、ネット上には該当する感染者の性アイデンティティを推定する書き込みなどが増えた。

 国民日報はこれに留まらず、9日にはある感染者がソウル江南区(カンナムグ)に位置するある睡眠部屋(サウナなどを備えた簡易宿泊施設)を訪れたことを報道して「男性同性愛者が訪れる代表的なゲイサウナで、匿名の男性と性行為をする空間」「暗い部屋での性行為が主な目的のため、社会的距離措置(ソーシャル・ディスタンシング)は事実上不可能」などの表現を用いた。

 感染者の訪問場所が「ゲイ」関連なのか否かは、防疫の本質とはかけ離れているだけに、これを前面に出した報道は性的マイノリティに全ての責任を集中させるようにして、むしろ防疫活動の妨げになるとの指摘が出ている。意向とは無関係な「アウティング」(当人の許可を得ずに、当人が隠している性的指向や性同一性などの秘密を暴露すること)による人権侵害とそれに続く嫌悪に対する憂慮により、検査に恐れをなすことがあり得るからだ。

 高麗大学九老(クロ)病院のキム・ウジュ教授(感染内科)は「性アイデンティティは、(今回の状況と)無関係であるにも関わらず、何度も浮き彫りにされている。意図的でも意図的でなくとも、誰かをスケープゴートにする方向に進むのは望ましいとは思えない」として「マスク未着用などの行為は非難しても、特定の集団をスケープゴートにするのは防疫の助けにならない」と語った。

 チョン・セギュン首相も同日午後、中央災害安全対策本部会議を主催した席で「特定のコミュニティに対する非難は、防疫の観点からは助けにならない」として「接触者が非難を恐れて診断検査を忌避するようになれば、その被害は私たちの社会全体が背負い込むことになる」と強調した。

 「行動する性的マイノリティ人権連帯」は7日、声明を出して「感染者の性的指向を公開して疾病と関係ない情報を調べるのに血眼になったメディアの態度は、マイノリティ嫌悪に疾病に対する烙印を加えること」と述べ、「これは疾病を潜伏化するだけで、予防と防疫のいかなる助けにもならない」と明らかにした。

ソン・ギョンファ、ソ・ヘミ記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/area/capital/944308.html韓国語原文入力:2020-05-11 02:30
訳M.S

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